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カテゴリ:読んだ本
2014年03月 講談社より
連続殺人事件が起きる。 現場に証拠が多数残っていたのに、犯人をなかなか絞り込めない。 1ヶ月が経過し、士気が下がり始める捜査のてこ入れに、新たに2人の捜査員が 追加される。 1人はプロファイラーの盛崎。 もう1人は経済学者の伏見真守だった。 学者に何ができると周囲は呆れるが、伏見はマイペースで捜査に向かう、 という話。 伏見が言うには、自分が解決できる事件は全体の3割だ、と。 事件の7割は衝動的で偶発的に起きるもので、それらの犯人解決には プロファイル捜査がとても役に立つ。 しかし、3割は己の利益を追求した計算された事件で、この場合に 経済学の立場から人間の行動を分析する自分が犯人を見付けられる、とのこと。 伏見は学会などでその持論を展開した結果、プロファイリングを馬鹿にしたように 受け取られて、プロファイラー達からは反感を買っています。 もちろん盛崎もその1人。 そして捜査を指揮する刑事一課長の阿久津は、声も態度も大きく、強面で 部下を怒鳴り散らして叱咤するタイプ。 わけのわからない捜査員が加わってきた事が気に入りません。 そんな中で、伏見と組む相手として女性刑事の木下麻耶が選ばれます。 周囲の反感を受けながら、2人で捜査解決にあたっていく様子が描かれます。 久しぶりにちゃんとした推理小説という感じで、楽しく読めました。 伏見が飄々とした感じでいい味を出していました。
以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。 主人公は伏見なんですが、ヒロイン役の麻耶の視点で物語が進みます。 麻耶にあまり共感ができなくて困りました。 あまり賢い子ではないんですよね。 伏見が組む相手を選んだ時に、その理由として 「若くて柔軟性があり、それでいて、物事を深く考えていなそうだから」 と言った通りです。 それ以上にひっかかったのが性格。 麻耶は気が弱く、相手に強く出られると言い返すことができない性格。 父親が刑事だったから、という理由で刑事になりましたが、自他共に向いていないと 感じています。 読んでいてもそう見えます。 伏見が容疑者と見なしている黒川弁護士の捜査の時、黒川弁護士の威圧的な態度に 怯えてしまいます。 課長の阿久津も苦手な相手で、警察署に行くにもつらい気分。 時々カウンセリングを受けて、精神的な安定を保っている状態です。 阿久津は確かに皮肉も多いし、常に怒鳴っていて私も好きなタイプではありませんが、 ちょっといいところがあったりしました。 麻耶に「おまえはもう刑事やめろ。向いてない」と言い放った時に、 麻耶はそれでも踏みとどまろうとしているのにとショックを受けるばかりなんですが、 「警察をやめろって言ってるんじゃねえ。でも刑事は向いてない」とも 言っているんです。 麻耶は気付きませんでしたけど。 黒川弁護士が政治家などに手を回して、自分の周辺の捜査をやめさせようとした時も、 それを伝えた阿久津に、麻耶が「じゃあ、捜査はやめた方が・・・」と言うと、 「寝言ほざいてんじゃねえぞ馬鹿野郎っ!そんなことでどうすんだ! お前は遊びで犯人を追っているのか!」と圧力に負けない姿勢を示したところも よかったです。 この時は、麻耶も叱咤激励されている、とわかったのでまあよしって感じ。 最終的には、黒川の双子の息子達が母を殺されて傷付いているのではないかと 心配して様子を見に行った麻耶が、偶然から双子が犯人だったと判明して 事件が解決。 刑事としての活躍で解決したというより、ただの知り合いが優しい気持ちから 事件を解決したみたいで、刑事もののヒロインとしては物足りなかったです。 これからの成長を窺わせる最後なんですが、もう少ししっかりしている方が好き。 伏見と盛崎が最初、仲が悪い。 伏見がプロファイリングが役に立たないと言っている、と盛崎が思っているから なんですが、ちゃんと伝えられていないだけでそうではない。 7割がプロファイリングで解決できる、残り3割が経済学で解決できる、 だから両者は協力すべきだ、というのが伏見の考えです。 途中で、麻耶がそれを言ったために、盛崎の態度が少し変わります。 ちょっと良かったです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016.11.14 12:54:01
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