らくがんの休日

２０１３年１２月　KADOKAWA　アスキー・メディアワークスより

神様にだって願いはある！だから御用人は今日も行く！

神様達の御用を聞いて回る人間------御用人。
ある日突然、狐神からその役目を命じられたフリーターの良彦は、
古事記やら民話やらに登場する神々に振り回されることになり・・・!?
特殊能力もない、不思議な力を放つ道具も持ってない、ごく普通の"人間"が。
秘めたる願いを持った神様達にできること。
それは果たして助っ人なのかパシリなのか。
モフモフの狐神・黄金とともに、良彦の神様クエストが今幕を開ける！
（裏表紙 紹介文より）


主人公は京都に住む20代半ばのフリーターの良彦。
ある日突然、神から御用人に選ばれる。
御用人というのは、指定された神様の元へ出向き、その神様の願いを叶える、
つまり神様の御用聞きをする役目を負う人のこと。
良彦の亡くなった祖父が御用人で、その関係など諸事情から選ばれたらしい。

最初に依頼してきたのは、近くの大主神社の末社に祀られている
方位神である黄金(こがね)。
黄金は狐の姿をしているが、実は平安時代からいる神様仲間では有名な神様。
黄金の願いは「人間が昔のように神を敬い、神祭りを行うようになること」という
壮大なものだったが、手違いでおいしいパフェを食べることにすり替わってしまい、
パフェを食べて終わりとされてしまう。
納得できない黄金は、本来の願いをかなえるまで良彦から離れないと宣言、
他の神々の御用聞きに同行。
２人で神々の御用を聞き届けに行く、という話。


読んでいて、アニメの「夏目友人帳」を思い出しました。
神と妖怪という方向性は違うものの、他の人には見えない存在が見えてしまう主人公、
人の一生などほんの一瞬と言うほど永く生きる孤独な存在、
にゃんこ先生こと斑にたいする黄金。
人々の信仰心が薄れてお参りされなくなったため力の弱まった神々を見ると、
そう言えば、夏目でもお参りしていた最後の老婆が亡くなって消えてしまった神の
話があったなあと思い出しました。
夏目と違って良彦は特別な力なんて持っていないので、心ひとつ、優しさひとつで
神の願いに向かっていく。
でも関わり合いから生まれるハートフルな心の交流とかも似てる感じです。
楽しかったです。


摂社(せっしゃ)・末社(まっしゃ)とは
　神社の境内にある小さな社。
　本社に附属する神社で、現在では特に両者を区分する規定はなく、
　本社の管理下にある小規模神社の呼称として用いられる。

方位神とは
　陰陽道の神様で、方位神のいる方位に対して事を起こすと、吉凶の作用がもたらされる
　と考えられている。
　平安時代には、自分が行こうとする方角が凶方位である場合、
　一旦他の方角へ行ってから目的地へ向かう方違え(かたたがえ)が盛んに行われた。
　現在では、凶方位を犯すことによる災厄を避けるため、多くの寺院・神社で
　「方位除け（方除け・八方除け）」の祈祷・祈願が行われる。

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以下、粗筋と感想になります。ネタバレに注意。

















エピソードは３つ。

最初の神様は奈良の葛城に神社のある一言主。
かつては強い力を持ち、威風堂々とした男神であったのが、信仰心の弱まりと共に
体が小さくなり、今ではやせっぽちの中学生男子のような姿。
ある事件をきっかけに引きこもり、本堂の中に持ち込んだＰＣでオンラインゲームや
ネットサーフィンに耽る日々。
それを心配した眷属である神木・大銀杏に宿るお杏が、一言主を何とかしてやって
と依頼してきたのです。
「僕なんかどうせ誰にも頼られてなんかないもん」と拗ねている一言主。
解決の手立てなど何も浮かばない良彦は、ふと一言主が遊んでいるゲームを見て、
「あ、ここってクリアした？オレできなくてさー」
「ＰＣもう一台あるから今やる？手伝うよ」と意気投合。
遊び始める２人を見て「そんなことしている場合か」と怒り出す黄金を後目に、
「一言主さまが誰かと一緒に何かをなさるのを見るのは久しぶり」と涙ぐむお杏さんは
お母さんみたいでした。
最終的に一言主は自信を取り戻し、神としての役割を果たすようになります。
良彦とはメル友＆ゲーム友達になって、その後もオンラインで交流が続くのが笑った。
可愛い話でした。

２番目は竜神・橋姫の話。
遠い過去に人間に恋をしたが、想いを伝えられず、その人もとっくに亡くなっている
という神の運命が少し切ない話。

３番目は年神様の話。
ある家に行きたいが、お正月飾りがないため訪問できないでいる年神からの依頼。
黄金が留守で、良彦はその依頼に取りかかれずにいたのですが、
大晦日なのに両親が留守で寂しい思いをしている子供の手助けをしたら
その依頼も知らずにクリアしてしまったという話。
良彦の人柄の良さがにじむ話でよかったです。

最初、良彦のキャラクターがイマイチ好きになれなくて、話の設定はいいのになあと
思いながら読んでいました。
子供の頃から野球以外の取り柄がなく、野球推薦で大学へ行き、
その後は強い社会人野球チームを持つ企業に就職。
しかし、入社後まもなく接触プレーで膝を手術。
同時期に、経営悪化のため野球部は廃部。
膝の怪我のため、外回りの営業も倉庫内の立ち仕事もできず、社内で居場所がなく
肩身が狭い思いをしている。
そんな時に、可愛がってくれていた同居の祖父が病死。
落胆した良彦は会社を辞め、家に引きこもっていたが、最近ようやくフリーターとして
バイトしながら職を探すようになった、という状況でした。
不運な中で頑張っているのに、何が気に入らなかったんだろう、私。
あまりものを考えていない様子かな？
エピソードが進むにつれて、じわじわと良さが出てきて読みやすくなりました。

また続きを読もうかなと思います。