或る幸せなゲェマーの手記

2006/02/11(土)12:50

陰陽師 龍笛ノ巻

φ(。。) 本。(7)

本棚もクローゼットも既に本で溢れてしまって久しい。 収納的にも金銭的にも、近年はハードカバーを買わないようになってきた。 持ち歩けるし(まぁどちらかといえば家で読むことの方が多いが)安いし便利な文庫本だが好きな作家の新刊が出てから文庫落ちするのを待つのは結構つらいものがある。それでも待つけど。 で、待ってたあの本が文庫化されてる!よっしゃ!と買って帰ったはいいけど読むの忘れてたとか、ちょっとその気分じゃないから放置してたとか、自分でも「待ってたんちゃうんかい」とツッコミを入れたくなる行動をしたりもする。 夢枕獏の陰陽師シリーズもその口で、とりあえず文庫が出たらすぐに買うのだが、読むのはすぐだったり放置したりするので古本で探してもよいのではとも考えられる。私は古本屋愛好家だし。 が、妙な主義がある。 「それだけの価値があると思った本(作家)に対しては、印税を払いたい」のだ。 だから陰陽師は古本で探さない。 前置きが長くなったが、陰陽師シリーズは短編集で、非常に読みやすい。 博雅が誰かから相談事をされ、酒を持って晴明のところへ行き庭を眺めながら二人は酒を飲む。いきなりその相談事を話すことはせず、庭の植物を見、季節の移ろいや人間のはかなさについて語り出す博雅を喋らせておいて、頃合いを見て「で、そろそろ、どうだ?」と彼が何かを相談に来たことをお見通しの晴明。 毎度繰り返されるこのパターンが飽きるどころか心地よくすらある。 そこから始まる怪事件とそれを見事に収拾をはかる晴明。 今回の龍笛ノ巻には、「むしめづる姫」という話が収録されている。 この姫君の話は平安時代に記された『堤中納言物語』に出てくる話で、確か宮崎駿氏が、この虫めづる姫君がナウシカのモデルであるとどこかで語っていたと記憶している。 原文をちゃんと読んだことはないが、平安時代、「女はこうあるべき」という固定観念に囚われず、周りにも流されず生きたこの姫君のエピソードはもともと大好きな話だった。 この姫君を夢枕氏はうまく使って陰陽師の出番が来るように持って行っている。 非常に楽しんで読んだ一編である。 『堤中納言物語』、ちゃんと読んでみようかなという気になった。

続きを読む

総合記事ランキング

もっと見る