第十一話『BAD DREAMS』N「Eが爆弾仕掛けて逃げたって?」Y「あぁ、そうだ」 K「何人も社員が犠牲になったというのも?」 Y「本当だ」 S「僕は地下に潜ってたから気付かなくって。社長に呼び出されてびっくりしたよ」 K「犠牲者の同定は済んだのですか?」 Y「とりあえずは、な。亡骸は家族に承諾を戴いて、密葬するつもりだ」 N「バラバラになった息子の体なんて親は見たくねぇよな」 S「・・・ちょっと見たかったな~、なんて」 Y「ん?なんか言ったか?」 S「ん?うんう。何も言ってないよっ」 N「で、Eの足取りは掴めたのか?」 Y「いや、まだだ。だが、お前達に伝えておかなきゃいけないことがある。Eは、悪夢病に感染していたんだ」 K「そんな馬鹿な。感染者は昏倒して目覚めないはずですよ?」 Y「だが、感染は確かなんだ。国研のIがチーフだったスタッフに調査を依頼してな。お前達の毛髪もチェックしたんだ」 S「黙って取ったってことだよね?なんか陰湿だなぁ」 K「それは仕方無いでしょう。でも、だとするとタイミング的には、バれたのが判って、逃走した、と?」 Y「その線が強いと俺も見ている」 N「感染したとするならあれだよな。あの時の戦闘で傷を負って」 K「ですね。だとすると、Nを襲った何者かの元へ向かった?」 Y「妥当だな。彼に発信器を取り付ける暇も無かった」 S「でもさ、でもさ。その部屋に入られて毛髪を取られたってことに気付いたってことは、常人の域を超えちゃってない?僕なんか、入られたことさえ気付かなかったもん。Nは気付いた?」 N「いや、全然。だって、ここの特殊工作班でも動いたんだろう?プロの犯行だよ。素人に見抜けるわけ無い」 K「私は気付いてましたけどね」 Y「・・・まぁ、とりあえず、Eの捜索をお前達にして貰うかどうかの判断をしたいんだ。社員が動いてはいるが、お前達はどうしたい?」 S「そりゃあ、見つけ出して、戻ってきて貰いたいよ?無愛想なやつだけど、僕はなかなか好きだったし」 N「感染が原因の操り人形になってるなら、救うべきだよな。ただ、それだけじゃないような気もするんだ。Iの失踪とも重なって、何かありそうな気がする」 K「ですね」 Y「とりあえず、悪夢達の大掛かりな蛮行は現在収まっているから、Eの手掛かりを探すのをお前達にもやって貰いたい。特にKには追跡に力を入れて貰って、他の二人は小物達の一掃を頼もうか」 N「あぁ、わかった。K、頼んだぞ」 K「はい。出来る限りのことはやってみましょう」 S「さて。ちょっと眠ろうかな。昨日もラボで朝を迎えちゃったし」 Y「とりあえず解散で良いかな。じゃあ、Kは俺と一緒にEの部屋に来てくれ」 K「わかりました」 Nは、机に置いておいた銃を拾い上げ、銃口を指で舐めながらエレベーターへと乗り込んだ。 Eの部屋のあるフロアで二人を降ろし、社員寮のあるフロアでSを降ろし、Nは一人でロビーに降り立った。 悪夢病が蔓延り始めて晴天というものが無くなった空は、今にも雨が降り出しそうだった。 N「雨が降るってことも誰かが見た悪夢なのかね」 Nは煙草に火を点け、煙と同じ色をした空を見上げた。 煙草を2本吸うと、ロビーの灰皿にそれを捨てると、駐車場へと降りていき、車のエンジンを掛け、車内が暖まるまでにまた煙草を吸った。 ねぇ、煙草吸ったら暖かくなるの? ふと、Iの言葉が過ぎった。 N「・・・煙草なんか吸ったって、暖かくなんてならないんだよ」 そう呟くと、ハンドルに手を掛け、アクセルをゆっくり踏み込んだ。 -第十二話に続く- |