感情は正しさから遠く
私はもうあの人を恨むことに疲れてしまった。彼の謝罪は自分の非を理解したからではない。彼は老いて私の非難に耐えられなくなっただけだ。老いさらばえたあの人の姿は私の感情的な部分に同情や憐憫に似た気分を起こさせる。それでも私が彼を赦すのは正しいことではない。だってあの子はもう還ってこない。彼が何も知らずに壊した物事を、何も知らないまま理解するだけの能力が無いという一点のみにおいて赦すなどということは私にはできない。彼には罰を受ける資格が無い。ゆえに赦されることもない。この断絶を埋める力の無い私にも罪はある。私の孤独は無力な私への罰でもある。肋骨の一つを失ったままで私は永遠に理解という根の繋がらぬ浮き草だ。