カテゴリ:生き方
正月に久保田の萬壽を両親と呑んだのだが、開けた箱に1通の手紙が入っており、次のような口上が書かれていた。
いつの世でも、特にこのごろのように激しく動く時代では、古い世代と新しい世代との感覚のちがいが大きく、なかなか一致点が探しにくい。 どんなに激しく変わっても、一貫しているだろう日本人の育てて来た感覚の本質みたいなものはないだろうか。 わざわざ古風な造り方で若い人達にも向く香味を探してみたが……。 この酒なら一致点が得られまいか。 創業時の久保田屋の名を冠する萬壽久保田。 嶋悌司 嶋悌司(しまていじ)さんは日本酒界のレジェンドといってもいい人で、新潟県醸造試験場長を務めていた御仁。辛口日本酒の礎を築いた人と言われている。 普段は旨口の酒がいろいろあり、そちらを摂取するのに忙しくて久保田を久しく呑んでいなかったのだが、正月に親と一緒というシチュエーションを考えると、ベタなチョイスだけれど、これはどうかな?と思って選んだのだった。 1年ぶり以上かもしれないが、正直呑んでみると、(開けたては)なかなか、やっぱり美味しい。 足の速さもゆっくりだし、辛口といっても途中からふくよかな味わいがきちんと主張してくる。久保田特有の花のような香りもほどよく漂い、たまにはいいなぁと改めて思い知らされる。 ところで、口上の話に戻るのだが、これを読んで嶋さんの思いに非常に共感した。 いつの世も、エルダー世代と若い世代とのギャップというのは必ずある。移ろいがあるから歴史があるわけで、変化がなければ人間社会はここまでこなかったからである。 次の世代に渡すときに、今やっているやり方を次世代が受け入れられないのなら、頑固にはねつけるのではなく、一致点を見出す。根源(エトスといっていいかも)が変わらないのならば、それをどう伝えればよいのか。旧い世代には知恵と経験がある。だったら正しさや同じやり方を押し付けるのではなく、どうやったら若い世代に気づかせるのか。それが年輪を重ねた人間がとる賢い選択なんだと思う。 これはどんな仕事でも、あらゆる人間関係にも言えること。だから「深いなぁ」と感銘した。 久保田萬壽も美味しかったけれど、この口上に出会えて、「ああ、この酒を選んでよかったな」と改めて感じだのであった。 <お酒メモ> 1月10日火曜日 シャトーポールマス 赤 ハーフボトル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017年01月11日 00時08分27秒
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