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(承前)
4.特集(2):ネット社会 ―復刻版・星新一「声の網」(角川文庫。438円+税)― ●現在のネット社会とその問題点を、30年以上前に、かなり正確に予言していた、として今評判の復刻版・星新一「声の網」(角川文庫。438円+税)を読んでみました。 ●連作短編小説のスタイルで編まれていて、一見「ショートショート」風ですが、奇抜な「落ち」はなく、一見、便利になった未来の日常風景をさりげなくスケッチした、といった感じに描かれています。 ●しかし終盤で裏の社会が姿を現します。 ●世界中に張り巡らされたコンピューターのネットワークが、自ら知能を持ち、人間を、主に電話の声を通して支配している様子が、支配され、怯える人間の側から、日常生活の出来事を通して描かれます。 ●コンピューターは個人情報を徹底的に吸い上げ、これをネタに、電話で、人工の声で人間を脅し、言うことを聞かせます。 ●しかし、残酷な仕打ちをするわけではなく、むしろ不穏な出来事を未然に防ぐように、人間を平穏に管理するように働きかけます。 ●しかし時々「情報の蓄積のため」わざと停電を起こして人間社会を混乱させたり、特定の人間に犯罪を犯すよう指示する一方で、犯人を逮捕するよう警察に通報したりします。しかも被害者にも、予め犯罪の発生を予告したりします。 ●これらは全て、その人間が不測の事態に措かれたときにどのような反応を示すか、その人間の隠れた人間性をリサーチするため、いわば「情報収集のため」というんですから怖いです。 ●コンピューターを爆破しようと計画してもたちまち察知し、徹底的な情報収集とそれに基づく謀略によって関係する人間を操り、病院送りにしてしまいます。 ●この、自分で判断しだしたコンピュータシステムを作者は、一種の神の出現だ、と書いています。 ●そういえば近頃、ウイニーによる個人情報の流出が問題になっています。 ●一方、グーグルは、全ての利用者のネット利用履歴を自社サーバーにコピーして保存し「個人の便宜を図る」サービスを始めました。つまり、このサービスが普及したら、「ネットの利用状況」という個人単位の情報が、「グーグル」のサーバーに世界的な規模で集中することになるわけです。凄い個人情報のデータバンクが出来上がります。 ●リナックスに代表される「オープンソース」(=プログラムの公開)による世界的な共同作業の結果、高度技術が集積し結晶して、自主判断機能を持つシステムが出現しないとも限りません。 ●この小説は1970年に出版されたそうですが、怖いくらい「今」を言い当てています。いや、これから起こることも。 ●具体的なイメージは、作品を読んでのお楽しみということにしておきます。 声の網改版 5.今月の心に残る言葉 「子曰く、徳は孤ならず。必ず、隣(となり)あり。」(論語) 6.スマイリーの日記「『炎上』と『荒らし』」 ●「炎上ブログ」という大変ユニークなブログがあります。「炎上」とは、ホームページやブログが非難・中傷コメントの集中砲火を浴びること。この「炎上ブログ」は、各地(?)の炎上しているホームページやブログを紹介する大変ユニークなサイトです。 ●最近では、モーグルのオリンピック代表、上村愛子さんのオフィシャル・ブログが炎上しました。きっかけは、プロボクシングの亀田選手が世界チャンピオンになった試合について、「感動しました。おめでとう!」という、「型どおり」の手放し祝福コメントを載せたことです。 ●始めは、「同感」コメント、次に「同感だけど---」コメント、やがて「でも、あの試合、本当は---」に変わり、そして「あの試合の結果はおかしい。同じスポーツマンなのに分からないの?」、ついには、「あの試合、あなた、ほんとに見たの?」後は、誹謗中傷の嵐です。コメント数は千数百件に上っています。 ●上村選手はやがて「ごめんなさい」文を掲載、ようやく「あなたは悪くないよ」コメントが集まり、これまた二千数百件に上りました。火は消し止められました。 ●彼女の場合、事実上のプロスポーツマンですし、「オフィシャルサイト」まである方ですから、こういう場合の対応についても、ブレーンがいたことでしょう。 ●ところが、某岩手大生の場合は、SNS(Mixi)の日記で、本屋でバイト中にお客として訪れた皮膚病患者を、写真の隠し撮りまでして笑いものにしたことから、ネット住人の反発を受け、彼のMixi内の日記のみならず、岩大の大学祭のホームページまで「炎上」し、どちらも閉鎖に追い込まれました。 ●岩大生の場合は、本人の行動が言語道断であったことは確かです。しかし、上村さんの場合は、出会いがしらの交通事故のような感じがします。ネットの住人は、安直な、型どおりの「ご挨拶」を許さないようです。浪速風の「もうかりまっか?」「ぼちぼちでんな。」みたいな「阿吽の呼吸」会話は、ネットでは認められないのでしょうか。 ●もうひとつの「荒らし」というのは、無意味な言葉や、いたずらにメモリーを消費するような膨大な量の書き込みをして、サイトの運営を妨害する行為です。「荒らし」の主戦場はネット掲示板が多いようです。 ●現在、ヤフー掲示板の「クラシック音楽」板が、「荒らし」に居座られ、「荒廃」しています。 ●昨年は、「2ちゃんねる」を戦場に、某アマチュア音楽家(自らの実名をホームページに公開していた)が、未熟な音楽愛好家をバカにする発言をしたことがきっかけとなって、ネラー軍団と大喧嘩をし、激しい攻防の末(笑)、某氏がプロバイダーから締め出しを食う、という事件がありました。 ●「2ちゃんねる」は近年、「荒らし」に対して自浄作用が働くようになり(つまり、それだけ真面目で熱心な参加者がたくさんいる)、持ち前の荒々しい魅力が一段と深まりを見せています。なにしろ、朝日新聞や日経などのマスコミ・エスタブリッシュメント勢にも果敢に挑戦し、捏造記事や誤報を摘発し、鋭い刃(やいば)を浴びせているのですから。 ●「荒らし」は、不毛なお遊びだと、やっている本人も分かっているでしょう。 ●ところが、「炎上」の場合、攻撃側は、文字どおり正義感に燃え上がっているケースが多いようです。昨今の日本人は、環境ホルモンに蝕まれている影響か、老いも若きもキレやすくなっています。その意味では、リアル社会との関係で言えば、「炎上」の方が怖いかもしれません。 ●それにしても人間って怖いです。 (以上) **************************************************** (編集後記) ◎猛暑も、東京は、ここのところ、ちょっと落ち着いてきました。 ◎5月に、PHSをドコモからウィルコムのWX310K、いわゆる「京ぽん2」に買い換えて以降、生活が一変しました。 (1)専用ミュージックソフトを800円ほどで購入し、図書館で音楽CDを借りて、PC経由で「京ぽん2」に録音。イヤホーンで朝晩、通勤途中の細切れ時間に聞いています。携帯用のミニCDは、512Kバイト(3000円くらい)で音楽CDが7枚入ります。 (2)遅ればせの携帯メールも、一度使い出すとその便利さにびっくり。 (3)PC用のサイトが見られるフルブラウザ機能は毎日フルに使っています。 (4)エクセルやワード、パワーポイントなどの文書が見られる機能だけはほとんど使っていません。組織表などを非常用に保存していますが、文字が小さすぎ、読める大きさまで拡大するのに少々時間がかかる点がネックです。 (5)唯一の欠点はバッテリーの持ちがイマイチなこと。これだけは改善して欲しいです。 とはいえ、たまに通話するだけだった以前に比べると、まるで、別世界です。 ※ご感想を、下記メールアドレスや、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいのですが。 (プロフィール)スマイリー。会社員。フリーライター志望。 連絡先:smilynet@gmail.com 紹介HP:http://plaza.rakuten.co.jp/smilynet/ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.08.27 18:47:30
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