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メールマガジン「読書クラブ」

2006.08.27
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○●○ スマイリーの読書クラブ・新版 ●○●
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-スマイリーの読書クラブ-
1.ほぼ毎月一回発行です。
2.読書好きの方々に、多彩な書籍の情報をお送りします。
  気に入っていただけたら、オンライン書店で、すぐに購入できます。
3.コンテンツは次のとおり。
 (1)注目のビジネス書
 (2)「今月のおすすめ書」または「新聞・雑誌の読書コーナーから」
 (3)特集
 (4)図書館の蔵書から
 (5)今月の心に残る言葉
 (6)スマイリーの日記
4.登録・解除はこちら
http://www.mag2.com/m/0000131354.htm
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     -第6号(2006年8月28日発行)-

0.始めに
本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。
元気にお過ごしですか。
最近になって注目すべき著書が次々にでてきました。
今回は、前回に引き続き、Web2.0関係と、日本史関係、それに今回初めて、「ゴーマニズム宣言」で知られる小林よしのり氏を取り上げました。

(目次)
1.注目のビジネス書
―岡部敬史「ブログ進化論」(講談社新書。800円+税)―
2.今月のおすすめ
―磯田道史「殿様の通信簿」(朝日新聞社。1300円+税)―
3.特集:東京裁判
―小林よしのり「いわゆるA級戦犯」(幻冬社。1400円+税)―
4.図書館の蔵書から
―復刻版・星新一「声の網」(角川文庫。438円+税)―
5.今月の心に残る言葉 
6.スマイリーの日記「『炎上』と『荒らし』」


************************** 本誌 *******************************

1.注目のビジネス書

―岡部敬史「ブログ進化論」(講談社新書。800円+税)―

●私自身、今もいろんなブログサービスを試している段階ですので、事例の豊富なこの本は大変興味深かったです。
●章立ては、「序章 なぜブログは流行ったのか?」「第一章 日記としてのブログ」、「第二章 メディアとしてのブログ」、「第三章 ビジネスとしてのブログ」となっており、一般に言われている視点は網羅されています。
●「はじめに」で、ブログが、死を目前にした、体が動かない重病の方の生きがいになっていたケースや、孤独な老人がブログをはじめることによって「誰かと繋がっている」と信じられ、生きがいとなったケースが紹介されます。
●「序章」では次のような事例が紹介されています。自分の食事メニューの写真を、簡単なコメントだけつけて載せていた方が、ある日、ブログを更新しなくなります。そして、新潟大地震で被災されたことがわかります。5日後、待望の更新がなされます。そこには「暗闇の中ストロボで撮影された菓子パンと袋のままのウインナーだけが映し出されていた----」
なんというドラマチックな展開でしょう。
●「第一章 日記としてのブログ」では「炎上」という現象がとりあげられています。これについては、最後の「スマイリーの日記」で別の角度からとりあげます。
●「第二章 メディアとしてのブログ」で、著書は、ブログが、アメリカのように既存メディアの批判勢力になることを期待しています。
●もっとも、私自身は少々違う見方をしています。「既存メディアの批判勢力」たりえそうなネットメディアは、むしろネット掲示板、それも「2ちゃんねる」くらい、と今のところ私は見ています。日本では、ブログは、「枕草子」や「徒然草」のような伝統的な日記や随筆、あるいは私小説のようなの道を歩むのではないか、という気がしています。
●「第三章 ビジネスとしてのブログ」では、いくつか実例が紹介されますが、企業でのビジネス利用はまだ始まったばかりのようです。現在のビジネス利用の主流はなんといってもアフィリエイト。ホームページやブログによる販売代行です。ネット・ブローカーと言いますか。しかしこれも売上規模がビジネスレベルにあるケースは1%くらいのようです。ビジネス利用はまだまだこれからです。
●この本の大きな魅力は、なんといっても豊富な実例の紹介にあります。ブログ活用の際のヒントになるでしょう。
ブログ進化論

2.今月のおすすめ

―磯田道史「殿様の通信簿」(朝日新聞社。1300円+税)―

●サイモン・スクリーチという英国人の江戸美術研究者がいます。30歳そこそこの若さで国際的に注目され、「アンファン・テリブル(恐るべき子ども)」と呼ばれた、文科系では珍しい早熟の研究者です。現在はもう50歳くらいになっているでしょうか。
●同じ江戸時代を扱う早熟の日本史学者が、日本でも現れました。茨城大学助教授の磯田道史氏です。1970年生まれという若さです。33歳のとき「武士の家計簿」を書いてベストセラーになりました。その後「近世大名家臣団の社会構造」で博士号を取得し、博士論文は東京大学出版会から出版されているそうです。
●私は「武士の家計簿」を読んで以降、氏のエッセーなどを、できるだけ読むようにしてきました。どの文章も実に深みのある、啓発される内容でした。
「この人は日本史学会の『アンファン・テリブル』だな」と感じました。
●その磯田氏が先月(7月)「殿様の通信簿」(朝日新聞社。1365円)を上梓しました。この著書も期待にたがわず、面白くて考えさせられる見事な内容です。
●この本は、「土介(どかい)寇(こう)しゅう記」という、元禄時代に書かれた古文書を元に書かれています。この古文書は、江戸幕府の隠密たちが集めた各地の大名の諸事情を、幕府の高官がまとめた、驚くべき文書です。
●例えば、忠臣蔵で有名な播州赤穂藩主、浅野内匠頭は、悲劇の主君として、ドラマでは美化して描かれています。しかし、「土介寇しゅう記」の評価は散々です。
●24歳時点での浅野内匠頭は、政治向きは家老以下にまかせ切りで、「昼夜女色にふけり」、美女を献上した家臣が取り立てられる、ということが横行。また、短慮で、領民への憐れみが薄く、家臣への非道の仕打ちもある。「このままでは、藩を潰すことになるだろう」とはっきり書いているそうです。討ち入りの10数年前の段階ですから、見通しの正確さは驚くばかりです。
●松の廊下の一件では、時の将軍綱吉が「浅野だけを一方的に断罪した」として後世、不評です。しかしこの文書の内容から判断するに、将軍綱吉が浅慮だったというより、どうも、浅野内匠頭の「不出来」ぶりを幕府はとっくに承知で、幕府全体が遥か前から赤穂藩の取り潰しの機会を狙っていて、「あのバカがとうとうやったか」という認識だったのではないか。そんな気がしてきました。
●大石内蔵助についても、主君の乱行をまったく諌めようとしない「不忠者」であると断罪しています。
●松の廊下の事件は、幕府にとっては、起きるべくして起きた、以外でもなんでもない「想定内の」事件だったのではないでしょうか。
●幕府にとっての誤算は、当然ながら事情を知らない世論が、赤穂藩にいたく同情したことだったのではないか。
●大石内蔵助もまた凡庸な男だったようです。大石家の先祖は武勇で知られていたことが、この本で紹介されていますが、先祖の武勇が無言の圧力となったであろうことは容易に想像がつき、あだ討ちせよ、という強い世論に背中を押されて、幕府の露骨なお膳立てのもと、あだ討ちに踏み切らざるを得なかったのではないか。そんな気がしてきました。
●ところで、他の大名に目を転じてみると、多くの大名家に共通して見られる傾向は、江戸時代始め頃までは、各大名とも戦国の殺伐とした気風を残していましたが、3代目くらいになると、政治向きを家臣団に任せ、自身は女色にふけったり酒宴や能楽など享楽おぼれる大名が非常に多くなることです。人間は、幼少からしたい放題にさせておくとこういうことになる、という良い見本です。
●後書きで、著者は興味深い知見を述べています。
「殿様の暮らしぶりを見ていて思うのは、ひとつには、ぜいたくが可能になってきた段階で、人間はどのようになってゆくのか、ということである。(中略)現代日本の我々と同じように飢えを知らず、やわらかく、上手い食事に箸をつけた最初の日本人であった。」そして「頭蓋骨まで未来化しており、現代の若者たちと顔まで似かよっていた。形質人類学者によれば(略)アゴが退化し、虫歯も多かったという。」
●当時の「大名たち」は、現代のわれわれの分身のようなのです。
●また、こうも述べています。
「殿様を見ていると、この国に存在した『組織』についても、考えさせられることが多い。」「いま、この国で起きていることには、日本人が持ってきた『習性』というものが、やはり深く関わってきている。例えば、今日、問題になっている『官僚国家の日本』というものも、批判するのはたやすいが、その背後には、たいへんな官僚国家のもとをつくってしまった江戸時代の日本というものが、しっかりと、横たわっている。」
●江戸時代260年をかけて築き上げられた「官僚社会」は、突き崩すにも200~300年かかるということでしょうか。
●こういう視点が、アンファン・テリブルたる磯田氏の真骨頂です。まことに傾聴に値する指摘だと思います。
殿様の通信簿

3・特集(1):東京裁判

―小林よしのり「いわゆるA級戦犯」(幻冬社。1400円+税)―

●久しぶりに寝食を忘れて読みふけりました。
●秀逸な劇画と、簡潔な文章による人物評伝の二段構成で、「いわゆるA級戦犯」の一人ひとりを描き出してゆきます。
●著者の指摘通り、私も、A級戦犯になった人たちがどういう人で、何の罪で犯罪者に仕立て上げられたかを知りませんでした。
●描かれた人たちの中には、どうにも好きになれない人物もいることは確かですが、しかし、少なくとも、「いかなる意味でも、犯罪者ではなかった。」という著者の主張は納得できます。
●「東京裁判は、ある意味で、原爆よりも日本人にダメージを与えた」という著者の鋭い指摘も納得できます。なにしろ、未だに、日本人自身の中に「A級戦犯を靖国神社から分祀せよ」などと主張する人間がいるのですから。そういう人たちも、この本を読めば考えが少しは変わるかもしれません。
●また、著者はこうも言います。戦争中は、国民自身が、頭に血を上らせて、さんざん打倒欧米を叫び、軍を煽り立てておきながら、敗戦後は、そして特に東京裁判後は、態度を一変させ、「日本を敗戦に導いたドジなヤツ」として、あれだけ日本のために命がけで働いた軍人や政府要人を犯罪者扱いしだした、一般庶民の醜い変節の様を見よ、と。
●この国民性は、今も変わっていません。昨今の、堀江貴文氏や福井日銀総裁にたいする、マスコミの、ヒステリックで底の浅い批判を見れば明らかです。
●今では、インターネットのお陰で、マスコミの論調は、イコール、民意ではないかもしれませんが、当時は、マスコミ、イコール民意だったでしょう。
●もちろん、「この本は判断が情緒的過ぎる」、「見方が一方的だ」という意見もあるでしょう。しかし、それをいうなら、もはや、著者以上の情熱と努力をもって、この本の内容を、自分自身で検証するしかないでしょう。
●この本は、我々の盲点を突き、我々に深い反省を迫る見事な著作だと思います。(以上)
いわゆるA級戦犯
(続く)






Last updated  2006.08.27 18:57:00
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(承前)
4.特集(2):ネット社会
―復刻版・星新一「声の網」(角川文庫。438円+税)―

●現在のネット社会とその問題点を、30年以上前に、かなり正確に予言していた、として今評判の復刻版・星新一「声の網」(角川文庫。438円+税)を読んでみました。
●連作短編小説のスタイルで編まれていて、一見「ショートショート」風ですが、奇抜な「落ち」はなく、一見、便利になった未来の日常風景をさりげなくスケッチした、といった感じに描かれています。
●しかし終盤で裏の社会が姿を現します。
●世界中に張り巡らされたコンピューターのネットワークが、自ら知能を持ち、人間を、主に電話の声を通して支配している様子が、支配され、怯える人間の側から、日常生活の出来事を通して描かれます。
●コンピューターは個人情報を徹底的に吸い上げ、これをネタに、電話で、人工の声で人間を脅し、言うことを聞かせます。
●しかし、残酷な仕打ちをするわけではなく、むしろ不穏な出来事を未然に防ぐように、人間を平穏に管理するように働きかけます。
●しかし時々「情報の蓄積のため」わざと停電を起こして人間社会を混乱させたり、特定の人間に犯罪を犯すよう指示する一方で、犯人を逮捕するよう警察に通報したりします。しかも被害者にも、予め犯罪の発生を予告したりします。
●これらは全て、その人間が不測の事態に措かれたときにどのような反応を示すか、その人間の隠れた人間性をリサーチするため、いわば「情報収集のため」というんですから怖いです。
●コンピューターを爆破しようと計画してもたちまち察知し、徹底的な情報収集とそれに基づく謀略によって関係する人間を操り、病院送りにしてしまいます。
●この、自分で判断しだしたコンピュータシステムを作者は、一種の神の出現だ、と書いています。
●そういえば近頃、ウイニーによる個人情報の流出が問題になっています。
●一方、グーグルは、全ての利用者のネット利用履歴を自社サーバーにコピーして保存し「個人の便宜を図る」サービスを始めました。つまり、このサービスが普及したら、「ネットの利用状況」という個人単位の情報が、「グーグル」のサーバーに世界的な規模で集中することになるわけです。凄い個人情報のデータバンクが出来上がります。
●リナックスに代表される「オープンソース」(=プログラムの公開)による世界的な共同作業の結果、高度技術が集積し結晶して、自主判断機能を持つシステムが出現しないとも限りません。
●この小説は1970年に出版されたそうですが、怖いくらい「今」を言い当てています。いや、これから起こることも。
●具体的なイメージは、作品を読んでのお楽しみということにしておきます。
声の網改版

5.今月の心に残る言葉

「子曰く、徳は孤ならず。必ず、隣(となり)あり。」(論語)

6.スマイリーの日記「『炎上』と『荒らし』」

●「炎上ブログ」という大変ユニークなブログがあります。「炎上」とは、ホームページやブログが非難・中傷コメントの集中砲火を浴びること。この「炎上ブログ」は、各地(?)の炎上しているホームページやブログを紹介する大変ユニークなサイトです。
●最近では、モーグルのオリンピック代表、上村愛子さんのオフィシャル・ブログが炎上しました。きっかけは、プロボクシングの亀田選手が世界チャンピオンになった試合について、「感動しました。おめでとう!」という、「型どおり」の手放し祝福コメントを載せたことです。
●始めは、「同感」コメント、次に「同感だけど---」コメント、やがて「でも、あの試合、本当は---」に変わり、そして「あの試合の結果はおかしい。同じスポーツマンなのに分からないの?」、ついには、「あの試合、あなた、ほんとに見たの?」後は、誹謗中傷の嵐です。コメント数は千数百件に上っています。
●上村選手はやがて「ごめんなさい」文を掲載、ようやく「あなたは悪くないよ」コメントが集まり、これまた二千数百件に上りました。火は消し止められました。
●彼女の場合、事実上のプロスポーツマンですし、「オフィシャルサイト」まである方ですから、こういう場合の対応についても、ブレーンがいたことでしょう。
●ところが、某岩手大生の場合は、SNS(Mixi)の日記で、本屋でバイト中にお客として訪れた皮膚病患者を、写真の隠し撮りまでして笑いものにしたことから、ネット住人の反発を受け、彼のMixi内の日記のみならず、岩大の大学祭のホームページまで「炎上」し、どちらも閉鎖に追い込まれました。
●岩大生の場合は、本人の行動が言語道断であったことは確かです。しかし、上村さんの場合は、出会いがしらの交通事故のような感じがします。ネットの住人は、安直な、型どおりの「ご挨拶」を許さないようです。浪速風の「もうかりまっか?」「ぼちぼちでんな。」みたいな「阿吽の呼吸」会話は、ネットでは認められないのでしょうか。
●もうひとつの「荒らし」というのは、無意味な言葉や、いたずらにメモリーを消費するような膨大な量の書き込みをして、サイトの運営を妨害する行為です。「荒らし」の主戦場はネット掲示板が多いようです。
●現在、ヤフー掲示板の「クラシック音楽」板が、「荒らし」に居座られ、「荒廃」しています。
●昨年は、「2ちゃんねる」を戦場に、某アマチュア音楽家(自らの実名をホームページに公開していた)が、未熟な音楽愛好家をバカにする発言をしたことがきっかけとなって、ネラー軍団と大喧嘩をし、激しい攻防の末(笑)、某氏がプロバイダーから締め出しを食う、という事件がありました。
●「2ちゃんねる」は近年、「荒らし」に対して自浄作用が働くようになり(つまり、それだけ真面目で熱心な参加者がたくさんいる)、持ち前の荒々しい魅力が一段と深まりを見せています。なにしろ、朝日新聞や日経などのマスコミ・エスタブリッシュメント勢にも果敢に挑戦し、捏造記事や誤報を摘発し、鋭い刃(やいば)を浴びせているのですから。
●「荒らし」は、不毛なお遊びだと、やっている本人も分かっているでしょう。
●ところが、「炎上」の場合、攻撃側は、文字どおり正義感に燃え上がっているケースが多いようです。昨今の日本人は、環境ホルモンに蝕まれている影響か、老いも若きもキレやすくなっています。その意味では、リアル社会との関係で言えば、「炎上」の方が怖いかもしれません。
●それにしても人間って怖いです。
(以上)

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(編集後記)
◎猛暑も、東京は、ここのところ、ちょっと落ち着いてきました。
◎5月に、PHSをドコモからウィルコムのWX310K、いわゆる「京ぽん2」に買い換えて以降、生活が一変しました。
(1)専用ミュージックソフトを800円ほどで購入し、図書館で音楽CDを借りて、PC経由で「京ぽん2」に録音。イヤホーンで朝晩、通勤途中の細切れ時間に聞いています。携帯用のミニCDは、512Kバイト(3000円くらい)で音楽CDが7枚入ります。
(2)遅ればせの携帯メールも、一度使い出すとその便利さにびっくり。
(3)PC用のサイトが見られるフルブラウザ機能は毎日フルに使っています。
(4)エクセルやワード、パワーポイントなどの文書が見られる機能だけはほとんど使っていません。組織表などを非常用に保存していますが、文字が小さすぎ、読める大きさまで拡大するのに少々時間がかかる点がネックです。
(5)唯一の欠点はバッテリーの持ちがイマイチなこと。これだけは改善して欲しいです。
とはいえ、たまに通話するだけだった以前に比べると、まるで、別世界です。

※ご感想を、下記メールアドレスや、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいのですが。

(プロフィール)スマイリー。会社員。フリーライター志望。
連絡先:smilynet@gmail.com
紹介HP:http://plaza.rakuten.co.jp/smilynet/






Last updated  2006.08.27 18:47:30
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2006.05.08
5.今月の心に残る言葉

「美しい、すてきな国に日本はなった。本当に本当に、うれしかった」
 (<朝日新聞2006/5/5(金)>63年ぶりにウクライナから帰国した旧日本兵 上野石乃助さん(83歳)の談話)

6.スマイリーの日記「初めての『村上春樹』体験」
-村上春樹「海辺のカフカ」(新潮社。上下各1600円+税)-

●私はこの高名な作家の作品を、これまで一度も読んだことがありませんでした。数年前「ノルウェーの森」を一度読みかけましたが、書き出しのところでたちまち退屈して、読むのを止めてしまいました。
●最近、氏が外国の文学賞を受けたことから、急に「ノーベル文学賞候補?!」という記事がマスコミに出始めました。私が何か読んでみようと本気で思い立ったのも、それがきっかけですから、われながらミーハーです。
●私が選んだのは四年ほど前に出た「海辺のカフカ」。どうせ読むなら出来るだけ新しい、作家にとってホットな作品がいいと考えました。ゴールデンウィーク中でしたので、上下二巻、約800ページを三日ほどで読み通しました。だいぶん飛ばし読みしましたが。
●第一章は17ページほどでしたが、主人公田村カフカ少年の内面描写ばかり。退屈だったので、ほとんど飛ばしました。このまま読むのを止めようかと思いましたが、第二章に入って「米国防省の極秘文書」なる報告書が出てきて物語がにわかにドラマチックな展開になり、描写もリアルでミステリアスになって急に面白くなってきました。それで、そのまま読み進むことにしました。
●以後、カフカ少年の内面描写を中心とする退屈な章と、「極秘文書」の延長線上で展開する、奇妙だが物語性の強い面白い章とが交互に現われる複線構造になります。そして最後にその複線が一本に収斂します。
●複線の前者は、母親に「捨てられた」、15歳の孤独で知的な田村カフカ少年の精神の成長物語。後者は、死の世界と生の世界という二つの異界の架け橋をめぐるファンタジーです。そして、この二本の線にまたがって展開されるのは、なんと、父を殺し、母と姉の両方と交わる息子の流離譚、というソフォクレスの「オイディプス王」を下敷きにしたギリシャ悲劇の世界です。
●「カフカ」というのはチェコ語でカラスのことだそうです。そのせいか、主人公田村カフカ少年の前に、姿の見えない、少年の分身と思われる「カラスと呼ばれる少年」が登場し、田村少年と、時には哲学的な、時には心理学的な、時には人生論的な対話を重ねます。この場面が私にはまったく退屈でした。村上春樹ワールドに魅入られたファンには、逆にこういう場面が魅力的なのかもしれませんが。
●それにしても、村上春樹さんの文体はバタ臭いですね。まるっきり米国あたりの翻訳小説を読んでいる感じです。というより、描写といい、台詞回しといい、まるでアメリカ映画を見ているような感じです。
●また、頻りにメタファー(隠喩)ということばがでてきますが、なんだか違和感がありました。世の中の現象はすべて何か精神的なものの比喩になっている、というのが村上春樹さんの思想のようです。象徴主義者ですかねえ? でも、何だかアニミズムみたいな陳腐さも感じます。
●結論を言いますと、主人公の内面描写や、主人公と、彼の世話を焼く「青年」(?)との対話の部分は、いたずらに衒学的で、私にはちっとも面白くなかった。しかし、ファンタジーの部分はなかなか面白かった。独創的なイメージとはいえないけれど、細部をリアルに描くことに寄ってファンタジーにリアリティを持たせる村上春樹ワールドの魅力はわかりました。
●カフカ少年たちが交わす思弁には、ミラン・クンデラの「存在の耐えられない軽さ」の文体ほどの説得力はなかったし、一方、ファンタジーの方も、村上龍さんほど漫画的ではないけれど、かといって、「死の世界と生の世界の入り口」なんて「三途の川」そのもので、これを陳腐といわずして何を陳腐というのでしょう。
●三途の川を一度渡って帰ってきた少年の話は、江戸時代から民間伝承が無数にあります。そんな古臭い御伽噺にギリシャ悲劇を繋いでストーリーを作り、古今東西の古典や流行物を一杯引用する衒学的な文体でくるんでなんだか高尚なものに見せかけるなんて、結構古い手を使いますね。わが国でも芥川や鴎外などが使った伝統的な手法です。しかも手際はあまり上手くない。芥川の王朝物には、格調高い完璧な文章の背後に、ひっそりと「笑い」が隠れていましたが、この作品の背後には、さて、なにが潜んでいるでしょう。
●というのが率直な感想です。だから、当メルマガでも「敢えてお薦めはしない」という意味で、当欄でとりあげることにしました。でも、猫と話の出来る頭の弱いおじさんと、若くて気のいいトラックの運転手との珍道中という後半の設定は魅力的でした。村上春樹さん、小理屈はこねるのはやめて物語作りに徹してみたらいかがですか。
●次は「ねじ巻き鳥クロニクル」を読んでみようと思います。面白くないところは飛ばしながら。
(以上)

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(編集後記)
◎道端の躑躅(つつじ)が美しい季節になってきましたね。公園の木々も輝くような黄緑色に彩られています。いよいよ新緑の季節です。
◎ここ数年持っていたドコモのPHSを、今週、ウィルコムのWX310K、いわゆる「京ぽん2」に買い換えました。
通常の通話、メール、携帯用サイトの他、フルブラウザと言って普通のPC用のサイトも見られます。その上、エクセルやワード、パワーポイントなどの文書もみられます。
事実上、通話だけだった前のPHSと比べると、まるで、自動車から戦車に乗り換えたような感じです。ワクワクしています。
さあ、仕事に、私生活に、フル活用するぞ!

※ご感想を、下記メールアドレスや、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいです。

(プロフィール)スマイリー。会社員。フリーライター志望。
連絡先:smilynet@gmail.com
紹介HP:http://plaza.rakuten.co.jp/smilynet/






Last updated  2006.05.08 23:21:56
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3・特集:時代小説―江戸時代編―

―平岩弓枝「小判商人―御宿かわせみ―」(文芸春秋。1300円<税込>)―

●昨年(平成17年)4月に出た待望のシリーズ新作集です。
●平岩さんは文壇きっての時代小説の巨匠です。今度の連作短編集も7編すべて粒よりです。人情の勘所をしっかりとつかんでいます。私など、恥ずかしながらこの一冊を読み終える間に何度涙を流したことか。
●今回は離れ離れになっていた母と息子との再会を軸にしたお話が多いです。
と言うとベタベタの「お涙頂戴もの」を連想されると思いますが、そこはそれ、平岩さんの円熟の筆にかかると「現実とはこんなものだろう」と思わせるようなカラッとした仕上がりになります。
しかも、それにもかかわらず、というか、それゆえに、というか、思わずほろりとさせられます。安心して泣けるというか。
物語が、あまり不幸すぎたり悲惨すぎたりすると、読者はかえって泣けないものだと思います。そのへんのさじ加減が絶妙です。
●例えば「明石玉のかんざし」を見てみましょう。
ある日上方から出府してきた若い職人夫婦が「かわせみ」に宿を取ります。やがて夫のほうは、江戸の老舗の鼈甲細工屋の跡取り息子と判ります。「ガキの時分にぐれて」、行方不明になっていましたが、その後西のほうへ放浪した末、「明石玉」という廉価品の細工物職人として立ち直っていました。この度、妻を伴って出府した息子は、母を訪ね、わびようとします。

一方、母親の方は息子の出奔後、亭主に死なれ、その上親戚から出来の悪い放蕩者を養子として押し付けられていたことが、やがてわかります。

息子が江戸に戻ってきたことを知った母親は、息子の泊まっている「かわせみ」に籠を飛ばし、息せき切って駆けつけ、息子を抱きしめて感涙に咽びます。

ところが、息子が店に戻る話になると、母親は途端に「明石玉というような偽物に、一度でも手を染めた者を跡取りにしては、店の暖簾に傷が付く。お前を店に入れるわけには行かない」ときっぱり言い放ちます。
しかも母親はその時、息子の嫁が頭にさしている、息子が作った「安物の」明石玉の櫛を、「息子の嫁が偽者を頭にさしているのは世間体が悪い」と言って取り上げ、代わりに自分が頭にさしている高価な鼈甲細工の櫛を嫁に渡して去って行きます。

息子夫婦は、諦めがつき、翌日さばさばして西に戻ります。

その数ヵ月後、あの母親が切り盛りする老舗の鼈甲細工屋が突然倒産したことを「かわせみ」の衆は知ります。また、倒産した鼈甲細工屋の女主人であるくだんの母親は、息子が作った明石玉の櫛を懐に、尼寺に入ったという噂を同時に耳にします。

やがて「かわせみ」の衆は、鼈甲屋のぼろぼろの内情を熟知していた母親が、息子に苦労をかけまいと、あの日、一芝居打ったのだ、ということに思い至ったのでした。
●一度の場面しか出てこない鼈甲屋のこのおかみですが、母親の愛情に溢れながらも、気丈に振舞ってみせる姿がとても印象的です。(以上)

4.図書館の蔵書から
―松本清張「文豪」(文春文庫。562円+税)―

●この作品集には長編「行者神髄」、短編「葉花星宿」、中篇「正太夫の舌」の力作三篇が収められています。いずれもかなり特異な実名小説です。一見、まるで女性誌のゴシップ記事のようで、大変面白いです。但し、文献調査は徹底しており、資料の読み込みと洞察は深く、さすが「日本の黒い霧」の作者が書いただけのことはあります。
●この作品集は、初出は1974年10月だそうですから、出版されてからすでに30年が経過していますが、清張氏にこんな作品集があるなんて、寡聞にして私は知りませんでした。登場人物がすべて実在の人物なのに、実に忌憚のない書き方をしています。読んでいて、登場人物の子孫の方々の名誉問題が気になってくるほどです。
●力作長編「行者神髄」は、文芸評論「小説神髄」や言文一致小説「当世書生気質」で知られる明治の文学界の大御所坪内逍遥の、小説の形をとった評伝です。小説の形をとったのは、作者の遠慮のない解釈を表現するにはそのほうが都合がよいと、作者が考えたからでしょう。
●坪内は若い頃、若気の至りで岡場所の女、つまり、あまり上等ならざる売春婦を落籍(ひか)せ、妻に迎えます。しかも実際に一緒に暮らすようになると、無教養な上によくヒステリーを起こします。この妻の存在が、坪内の終生の悔恨の種になっていたに違いない、というのが作者の仮説です。この仮説を、いろいろな文献の記述から検証しつつ、記述にもとづいて想像の羽を伸ばし、坪内の、時々の心象風景を洞察してゆきます。事実上の評伝でありながら、まるでミステリーを読んでいるような面白さがあります。
●また、坪内は評論で言文一致の文体を主張し、実践にも手を染めました。しかし、実践では挫折します。当人が書き残した文献によれば、二葉亭四迷の出現によって、実践の筆を折る決心をしたことになっています。だが作者は、真の原因は若い二葉亭四迷の出現ではなく、同年輩のライバル山田美妙に小説作品の評判で完敗したことであると主張します。坪内は、そのため山田に敵意を持ち、後に、山田の妾を養ったり花柳界に入り浸る私生活を、坪内が自分のことを棚に上げて激しく攻撃します。これが結局、山田美妙の作家生命を奪うことになります。
●短編「葉花星宿」は、明治の文壇の大御所で「金色夜叉」の作者として知られる「尾崎紅葉」が主人公です。これに、紅葉の弟子で、師匠より才能に恵まれた「困った弟子」泉鏡花を配して、師匠と弟子の葛藤の様子と両者の心象風景を描く物語です。
●この作品の見所は、師匠である尾崎紅葉の「大物振り」(=威張りぶり?)と、才能があり、やがて師匠より高い原稿料を取るようになる泉鏡花の、尾崎に対する陰湿な面従腹背ぶりです。
●中篇「正太夫の舌」は夭折した斎藤緑雨の一代記です。才気煥発で歯に衣着せぬ文芸評論で世評を得る一方、作家たちからはにらまれます。ところが、本人の人柄はいたって誠実で、実直。飾り気がなく、しかも大変な勉強家です。従って、彼の素顔を知っている友人たちは皆、「憎めない」と口を揃えるエピソードを紹介します。ただ、本人は貧乏だったこともあって、友人との交際を極力避けていました。そして、評論では一見リベラルに見えながら、実は紅葉などと通ずる江戸風の文学趣味にとらわれていた面を、彼の才能の限界として指摘します。
●三作の中では「正太夫の舌」が、もっとも「どろどろした情念の要素」が少ない地味な仕上がりになっています。
●三作いずれも、人間臭い情念の葛藤を描いた、迫力ある小説です。







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○●○ スマイリーの読書クラブ・新版 ●○●
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-スマイリーの読書クラブ-
1.ほぼ毎月一回発行です。
2.読書好きの方々に、多彩な書籍の情報をお送りします。
3.コンテンツは次のとおり。
 (1)注目のビジネス書
 (2)「今月のおすすめ書」または「新聞・雑誌の読書コーナーから」
 (3)特集
 (4)図書館の蔵書から
 (5)今月の心に残る言葉
 (6)スマイリーの日記
4.登録・解除はこちら
http://www.mag2.com/m/0000131354.htm
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     -第6号(2006年5月8日発行)-

0.始めに
本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。
元気にお過ごしですか。
今回はWeb関係と時代物、それに今回初めて村上春樹さんを取り上げました。

(目次)
1.注目のビジネス書
―梅田望夫「ウェブ進化論」(ちくま新書。740円+税)―
2.今月のおすすめ
―小川浩、後藤康成「Web2.0BOOK」(インプレス。1800円+税)―
3.特集:時代小説―江戸時代編―
―平岩弓枝「小判商人―御宿かわせみ―」(文芸春秋。1300円<税込>)―
4.図書館の蔵書から
―松本清張「文豪」(文春文庫。562円+税)―
5.今月の心に残る言葉 
6.スマイリーの日記「初めての『村上春樹』体験」
-村上春樹「海辺のカフカ」(新潮社。上下各1600円+税)-

************************** 本誌 *******************************

1.注目のビジネス書

―梅田望夫「ウェブ進化論」(ちくま新書。740円+税)―

●久しぶりに寝食を忘れて読みふけりました。この本は、今後のインターネット社会がどう変わっていくかを、IT産業の現場から展望する、一般向けの分かりやすい啓蒙書です。書き方にメリハリが利いていて、大変興味深く読めます。
●著者、梅田望夫氏(1960年生まれ)は、シリコンバレーで長く働いてきたIT業界のコンサルタントです。
●この本で氏は、IT業界の過去10年の歩みを振り返り、意味づけ、その延長線上に氏の考えるIT業界の未来を描いて見せます。実に刺激的でワクワクするような論考です。
●例えば、次の10年の三大潮流として「チープ革命」、「インターネット」、「オープンソース」(=ある機能のプログラムを無償で公開すること)があると氏は言います。
●まず「チープ革命」について、氏はこう述べます。
「『次の十年』は、ITに関する『必要十分』な機能のすべてを、誰もがほとんどコストを意識することなく手に入れる時代になる。」
具体例として、次の四つのトレンドをあげます。
(1)「ムーアの法則」によって下落し続けるハードウェア価格
※ムーアの法則=「あらゆるIT関連製品のコストは、年率30~40%で下落する」
(2)リナックスに代表されるオープンソース・ソフトウェア登場によるソフトウェアの無料化
(3)ブロードバンド普及による回線コストの大幅下落
(4)検索エンジンのような無償サービスの充実
●次に「インターネット」について、氏はこう指摘します。
「インターネットの真の意味は、不特定多数無限大の人々とのつながりを持つためのコストがほぼゼロになったということである。」
●次いで「オープンソース」。これについては、具体例として、先のリナックスのほか、ネット上で誰でも書き込める百科事典「ウィキペディア」を上げ、その意義を論じています。
●これら三つのトレンドについて論じた後、議論はさらに具体的になります。氏は、次の三つのキーワードで、新時代の到来を予想します。
●(その一)「ロングテール」:アマゾンは、従来、商売としては効率が悪いとされてきた多品種少量本、つまり「あまり量の捌けない、売れない本」のことですが、この種の本で売上を大きく伸ばしているらしいのです。
ITの世界では、この現象に着目して「『塵も積もれば山となる』効果」が期待できる、としたのが「ロングテール」問題です。よく取り上げられる「売上の8割は、品揃えの2割からあがる」など「2割・8割」現象の指摘で知られる「パレートの法則」に修正を迫る画期的な議論です。
 ※「ロングテール」とは、書籍の売上高を書籍一品ごとにグラフ化すると、恐竜の姿ような、左肩上がりの極端な双曲線を描き、売上が小部数の大部分の本は、長~い恐竜の尻尾のようなグラフになることからイメージされた言葉です。
●(その二)「総表現社会」:ブログの普及に代表される「総表現社会」というキーワードについては、「総表現社会=チープ革命×検索エンジン×自動秩序形成システム」という計算式で説明しています。
つまり、誰かが何かを書いても、これまでは誰も気づいてくれなかったが、「検索エンジン」の大幅な技術的向上と、現在はまだ十分な形のものはないが、今後ブレークスルーが期待される「自動秩序形成システム」の出現によって、今後は「誰かが何かを書けば、書いたものは、必ずどこかの誰かの目に触れるようになる、と氏は指摘します。
その影響として、メディアの世界は大きな変化を余儀なくされるだろう、但し、著作権料問題の解決などのために時間はかかるかもしれない、と氏は推測しています
●なお、この項では氏は、ブログの急激な普及に触れて、非常に興味深い指摘をしています。
ブログの数は、アメリカで2、000万件、日本でも500万件に達したそうです。これは、今まで社会的発言をしなかった、かっての「物言わぬ」膨大な数の普通の人間が、ブログという表現手段を得て、発言しだしたことだと指摘します。
このうち質の高いブログが、1000件に1件でもあれば、高レベルのブログが、現在の日本でさえ5千件もあることになります。これは何を意味するのか。氏は4項目の指摘をします。
1).いままで、本を書いたりメディアに登場したりしていた人というのは、いかにごく一部の、少数の人たちにすぎなかったかということ。
2).しかも、その人たちも、格別に選ばれた人、というよりは「たまたまそういう役回りになった」という側面が強いこと。
3).そういう世界に、ある程度の教養や見識を持った、従来の「サイレント・マジョリティー」の一部が参入してきて、発言しだしたということ。
4).かっては、ピラミッドのてっぺんの、ごく一部の人たちの意見で動いていた世論が、発言者の層がピラミッドのもう少し下の方まで下がってきたことによって、その動きが少し変わってきていること。そして、マスコミによる世論の誘導が不発に終わる例が表れ始めているということ。
「世論の変化」の具体例として著者自身の次のような経験を紹介します。
郵政民営化の是非が問われた昨年の衆議院選挙において、事前に小泉圧勝を予想した人はほとんどいませんでした。しかし、著者は、選挙のだいぶ前からこのテーマでブログをじっくり調べてみた結果、小泉支持のブログが非常に多いことに驚きました。そして、小泉圧勝を予想した、と「後出しじゃんけん」に見えるのを気にしながらも、はっきり述べています。
つまり、ブログを分析すれば、近未来が予測できるというのです。
●(その三)「不特定多数無限大への信頼と自動秩序形成」:さらに、今後を占うキーワードとして、「不特定多数無限大への信頼」と「自動秩序形成」をあげています。
著者はグーグルという会社に着目し、世界中の情報を自社検索エンジンに登録する、という壮大な目標を同社が掲げていることを紹介しています。
もし、世界政府なるものがあれば、その政府がきっと作るはずのシステムをグーグルは構築しつつあるのだ、とグーグル自らが宣言していますが、その背景にある思想を著者は「不特定多数無限大への信頼」としています。
そして、現在のIT世界、もしくはインターネット世界に足りないものは、検索エンジンから、さらにもう一歩踏み出した、混沌とした情報の海を整理し有意味な体系を作り上げる「自動秩序形成」システムである、と主張しています。
●この他にも、この本には刺激的な指摘がいくつもちりばめられています。読んでいるだけで、発想の転換がおこり、固定観念が見直されるような気がしてきます。
●ところで、私はメーカー系列の企業に勤務していますが、その私にとってこの本の内容は、仕事にどういう風に生かせるでしょうか。それを考えてみると、意外に難しいことに思い至ります。この本の内容は現在のところ、Webビジネスの世界に特有の事項ばかりに見えるかもしれません。長期的な展望にたって、気長に構えることが必要かもしれません。
●とはいえ、近年まれに見る活字成果だと思います。私の個人的な狭い興味の範囲内の感想で大変恐縮ですが、「武士の家計簿」(新潮新書)、「拒否できない日本」(文春新書)、「西洋音楽史」(中公新書)に続く大きな成果でしょう。

2.今月のおすすめ

―小川浩、後藤康成「Web2.0BOOK」(インプレス。1800円+税)―

●先の「ウェブ進化論」は一般向けの良くできた啓蒙書でした。もっとも、Web事業に携わっている方にとっては、もしかしたら、もう知っていることばかりかもしれません。Web事業に携わっている方や、Webに造詣の深い方には、こちらの本の方が役に立つかもしれません。
●本作りのスタイルは上記の本とは全く違っていて、まるで学習参考書のようです。小さな活字でたくさんの情報がびっしりと、しかしながら整然と整理されて詰まっています。
●私のような門外漢にはチンプンカンプンの専門用語や業界用語が一杯出てきますが、ありがたいことに、各ページの端っこに、見やすい形で簡潔な用語説明がついています。しかも、私のような、かなり低レベルの読者にも理解できるように、かなり初歩的な用語までとりあげて解説しています。この本は、かなり親切な、手のかかった仕事だと思います。
●たとえば「ロングテール」問題についても、簡潔で要領のいい図がついていて、実務家のノウハウを感じます。
●「ウェブ進化論」より、もう少し広範囲で高度な踏み込んだ内容になっており、私なんかには「レベルが高くて、読みこなすのにちょっと骨が折れるかなあ」という感じですが、Web2.0の世界の細かい情報を知りたい方には最適な教材ではないかと思います。(以上)







Last updated  2006.05.08 23:17:42
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2006.02.12
5.今月の心に残る言葉

「人間は時には誤謬を犯しながらも足を伸ばして、躓きながらも前進する。」
 (スタインベック「怒りの葡萄」)

6.スマイリーの日記「検索エンジンの楽しみ」
-安藤進「GOOGLEに聞け!英語の疑問を瞬時に解決」(丸善。1400円+税)-

●私は昔から「検索エンジン」に興味を持っています。最近のgoogleやyahoo!に比べると昔の検索エンジンは精度が悪く、「なぜ、こんなサイトが上位にヒットするのだろう?」と首をかしげることが頻繁にありました。
●そこへ行くと最近のgoogleやyahoo!は、そのヒット精度はすばらしいものがあります。
●以前から、一度じっくり「検索エンジン」の使い方の勉強をしてみたいものだと思っていた矢先にこの本と出合いました。
●この本自体は、薄くて読みやすい本ですので、すぐ読めてしまいますが、検索についてポイントとなる事項が述べられていますので、これらの事項については、私は大きめのポストイットに書き出して手帳に貼り付けています。
●たとえばgoogleやgooは「形態素解析」方式。これに対して、「Nグラム方式」の検索エンジンというものがあるそうでして、こちらの例として「AAA!Cafe」という検索エンジンが紹介されています。こちらは「部分文字列」が検索可能とか。同じキーワードを違うタイプのエンジンで検索してみるのも面白いかも。
●googleは、キーワードを読み込む際、記号を無視することを知りました。また基本的な検索方法として、「AND指定」「フレーズ指定」「ワイルドカード」「半角のマイナス記号で除外検索」「大文字のORで訳語選択」などがあることを確認しました。
●その他、電卓機能や単位の換算機能があることも知りました。
●検索エンジンの世界は、独特の知的なゲームのような雰囲気がありますね。(以上)
Googleに聞け!英語の疑問を瞬時に解決
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(編集後記)
◎寒さ厳しい日が続きますね。コートとマフラーが手放せません。先週は数年ぶりに風邪で寝込んでしまいました。
◎「トリノ五輪」が始まりましたね。紀子様の御懐妊というおめでたもあり、ようやく明るい話題がでてきました。ここのところ、いやな話題ばかりでしたから。いやな話題はもううんざりです。

※ご感想を、下記メールアドレスや、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいのですが。

(プロフィール)スマイリー。会社員。フリーライター志望。
連絡先:smilynet@hotmail.com
紹介HP:http://plaza.rakuten.co.jp/smilynet/






Last updated  2006.02.12 19:28:16
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○●○ スマイリーの読書クラブ・新版 ●○●
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1.ほぼ毎月一回発行です。
2.読書好きの方々に、多彩な書籍の情報をお送りします。
  気に入っていただけたら、オンライン書店で、すぐに購入できます。
3.コンテンツは次のとおり。
 (1)注目のビジネス書
 (2)「今月のおすすめ書」または「新聞・雑誌の読書コーナーから」
 (3)特集
 (4)図書館の蔵書から
 (5)今月の心に残る言葉
 (6)スマイリーの日記
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     -第5号(2006年2月13日発行)-

0.始めに
本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。
元気にお過ごしですか。
近頃発行サイクルがすっかりいい加減になってしまいました。申し訳ありません。

(目次)
1.注目のビジネス書
―萩野浩一朗「3秒でお客をつかむホームページの作り方」(翔泳社。1400円+税)―
2.今月のおすすめ
―岡田暁生「西洋音楽史」(中公新書。780円+税)―
3.特集:時代小説―平安時代編―
―高橋克彦「弓削是雄全集―鬼―」(講談社。4935円<税込>)―
4.図書館の蔵書から
―大前研一「日本の真実」(小学館。1400円+税)―
5.今月の心に残る言葉 
6.スマイリーの日記「検索エンジンの楽しみ」
-安藤進「GOOGLEに聞け!英語の疑問を瞬時に解決」(丸善。1400円+税)-

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1.注目のビジネス書

―萩野浩一朗「3秒でお客をつかむホームページの作り方」(翔泳社。1400円+税)―

●この本は、30代のプロのコピーライターが、素人向けに書いたキャッチコピーのガイドです。実に印象的な、示唆に富んだ本です。全編これ格言集。論より証拠。具体的に内容を見てゆきましょう。
●「第一章 お客がつかめるホームページ」から。「アクセスアップはお金をかければ簡単にできるが、それだけでは売れない。人の心をつかむホームページにする」、「『つかみ』を意識して、できているホームページはとても少ない」、「写真は見た目のインパクトはあるが、つかみ力は文字より弱い。つかめないページは『無意味なイメージ写真』が目立っている。」、「つかめないページは文字が読みづらい。文字が小さい、カッコつけた英文、変わったレイアウトなど。デザインに凝りすぎない。」など、独特の世界が展開されます。キーワードは「つかみ」です。
●また、こうも言います。「キャッチフレーズは心をつかむためのもの。売るためには、キャッチフレーズで売るな。」そして、こう解説します。「『セブンイレブンいい気分』はキャッチフレーズではない。つかんだ後に聞かされるスローガン。押さえコピー。企業が言いたい結論である。」、「人の心をつかみ、広告内容へ誘導するのが、キャッチフレーズの役割である。」そうか、キャッチフレーズとスローガンは役割が違うのか。
●「第二章 3秒でお客をつかむホームページの考え方」では、「いきなり売ってはいけない。まず来た人のココロをキャッチフレーズでつかめ。大きな字などで。」、「『一番売れるもの』と『一番売りたいもの』は違う。『一番売れるもの』を一番目立つ場所に出す。」、「トップページにはいろんな『つかみ』を用意し、何度もお客をつかむ仕掛けをつくる。(こぼれ玉を何度も拾う)パチンコ台のように。」、「お客はみんなクリックしたがっている。クリックして欲しいところをわかりやすくアピールする。次にリズム良くクリックさせる。文字量は100字以内に。」と、次第に実践的なってきます。「お客はみんなクリックしたがっている。」とはまた重要な指摘です。
●「第三章 3秒でお客をつかむホームページの作り方」では、さらに突っ込んで、「買う理由を教えて、動機付けをしてあげる。」、「現代人は自分でものを買うストーリーを構築できなくなっている。」、「買う理由とは『お客』と『商品』を結び付ける線。『誰が買うか』『なぜ買うか』を考えよう。」、「モノとお客のつながりを考えよう。キャッチフレーズを100個(!)くらい書いてみる。例えば、『30代女性』というより、『紅茶の楽しさを知らないけれど、それを知ったら楽しくなりそうな人』と考えてみる。」と、より実践的なってきます。
●こういう論法で議論を展開し、一気に最終章の具体的なアドバイスへ入ってゆきます。ヒントに満ちた、実にためになる一冊です。
3秒でお客をつかむ、ホームページの作り方

2.今月のおすすめ

―岡田暁生「西洋音楽史」(中公新書。780円+税)―

●はっきりいって、クラシック音楽に興味のない人には、内容が少々重すぎるかもしれません。音楽史と西洋史ががっぷり四つに組んで、どちらも一歩も後ろに引かない感じです。しかし、クラシック音楽と西洋史の両方に興味のある方には、なんとも芳醇な知の世界が展開されていると感じるでしょう。
●筆者は京都大学の助教授。噂によると学会で一番良い仕事をするのは助教授クラスだそうですが、本書を読むと納得です。
●朝日新聞の読書特集で、阪大教授の鷲田清一氏(哲学)が本書の書評を要領よくまとめておられますので、内容を少々お借りします。
●「クラシックは世界最強の民族音楽」、「『水平』進行から『立体』構築への変化」、「ドイツやウィーンでなく、ベネチアやフランドルとパリの音楽史における重要な位置」、「クラシックの創生期とポピュラー音楽の登場時に英国が占めた共通のポジション」、「バッハの方法と同時代の潮流の大きなずれ」、「交響曲と弦楽四重奏曲との対比が近代市民生活における公私の区別に対応していること」、「ベートーベンが社会主義や進化論と共有していた時間の概念」、「ベートーベンの技法と『勤労の美徳』の結びつき」、「器楽曲の出現と抽象美術との基本的な類似」、「音楽の限界を前にしてストラビンスキーとシェーンベルクがたどった反対ベクトル」等々。
●どうです?知的刺激に満ちた論考でしょう。(以上)
西洋音楽史

3・特集:時代小説―平安時代編―

―高橋克彦「弓削是雄全集―鬼―」(講談社。4935円<税込>)―

●私は「陰陽師」ものが好きで、いろんな作家の作品に目を通していますが、作家としての力量と典雅な雰囲気作りという点では、高橋克彦さんと夢枕獏さんが双璧でしょう。
●この本は高橋氏がいろんな出版社から出した「陰陽師・弓削是雄」シリーズを講談社の努力で一本にまとめたものです。私の場合、過去に読んだお話も含まれていましたが、ともかく一度読み出すと、この大部の本が途中で止められなくなり、寝不足をきたしてしまいました。
●主人公、弓削是雄がまったく欲のない人物として造形されている点がこのシリーズの大きな魅力となっています。その是雄を慕う髑髏鬼、盗賊の首領の美女、土蜘蛛族の少年などが奇妙な仲間を形作って、悪鬼に対抗してゆきます。
●当時の朝廷の主が「物狂い」であったり「関白太政大臣」が自分のことしか考えない鬼より恐ろしい人物であったりと、風刺もたっぷりきいています。
●ただ時々、近代的な、あるいは西洋的なイメージが混じるのはご愛嬌です。死んでゆく可愛い幼女の霊が、背中に羽が生えていたり、皆にキスをしたり。最も感動的な場面であっただけに、私は少々がっかりしました。
●(以上)


4.図書館の蔵書から
―大前研一「日本の真実」(小学館。1400円+税)―

●図書館で偶然手に取り、ぱらぱら開いていたら、いきなりこんな箇所に出くわしました。ちなみにこの本は2004年7月に出版されたものです。
●「日本のマスコミは、ものの見方が偏狭で極端だ。一例は、卓抜した起業家、優れた経営者に関する報道の論調であるリクルートの江副浩正さん、ダイエーの中内功さん、イトーヨーカドーの伊藤雅敏さん、ユニクロの柳井正さん、日本マクドナルドの故・藤田田さんらが成功している時は持ち上げるだけ持ち上げておきながら、失脚したり業績が悪化したりしたら、その途端に手のひらを返して『落ちた偶像』に仕立て上げ、悪いことばかり書き立てる」。
●ちょうどライブドアの堀江貴文氏が叩かれはじめた矢先のことでした。私は、「時代の寵児」が一挙に「落ちた偶像」に仕立て上げられる過程を目の当たりにしながら、マスコミの臆面もない豹変と、集中豪雨的な一方的な報道に、首をひねっていたところでした。大前氏によれば、これはマスコミ得意の『死の方程式』(?)なんですね。
●これはじっくり読まねばと、図書館から借り出して、腰をすえて読み出すと、どれもこれも思い当たることばかり。いわく、「政・官・財・マスコミ・学界の癒着」「本当の改革は何もやっていない小泉首相」「取り残された港と空港」「小選挙区の弊害」「消費税16%になぜ反対しない?」「道路の制限速度の不思議」「日本ほど消費者金融が栄えている国はない」「新聞の発表記事を鵜呑みにしてはいけない」「屈折する日本人の『愛国心』」「教育を憲法で再定義せよ」「なんでもかんでも超法規」等々。
●筆者の歯切れのいい文章と明確な主張には蒙をひらかれる思いです。
日本の真実







Last updated  2006.02.12 19:26:55
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2005.12.02
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 (2)「今月のおすすめ書」または「新聞・雑誌の読書コーナーから」
 (3)特集
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     -第4号(2005年11月28日発行)-

0.始めに
本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。
元気にお過ごしですか。
半年間も発行できなくてごめんなさい。勤務先で担当の業務が変わり、引き継ぎと、新しい仕事に慣れるのに忙殺されて、手がつきませんでした。深くお詫びします。
今月からまた張り切ってご案内いたします。

(目次)
1.注目のビジネス書
―渡辺仁「企業バカ」(光文社。1000円)―
2.今月のおすすめ
―夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(徳間書店。1890円)―
3.特集
―ジョンストン「紫禁城の黄昏」完訳版(上、下二巻)(中山理訳。祥伝社。2100円)―
4.図書館の蔵書から
―隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上下)(新潮文庫。540円)―
5.今月の心に残る言葉 
6.スマイリーの日記-老いも若きも「活字離れ」って本当?-

************************** 本誌 *******************************

1.注目のビジネス書

-渡辺仁「企業バカ」(光文社。1000円)-

●この本は、ひとりの経済ジャーナリストが、自分自身の実際の起業と破綻の経験を軸に、起業というものがいかにリスクの大きなものであるかを、生々しくリポートした貴重な資料です。自身の起業の破綻にともなって、奥さんと離婚の危機に陥ったことまで、包み隠さず述べているのは、さすがプロのジャーナリストです。

●はじめに著者のプロフィールを紹介しておきましょう。以下はアマゾンからの引用です。「渡辺仁[わたなべ・じん]---1951年、長崎県生まれ。経済ジャーナリスト。東洋大学経済学部中退後、専門紙記者などを経てフリーライターとして独立。ビジネス誌、経営誌にベンチャー企業・ニュービジネスの動向を中心に幅広く取材執筆する。2002年4月、ベンチャー支援雑誌『Incubation』を創刊、編集長を務める。」

●次に、著書から、テーマに関わる重要な箇所を少々引用してみましょう。
「私が推計したところでは、実際に起業で成功できたのは、1500人に1人であった。つまり、ほとんどが失敗している。」
「第2のホリエモンになれるなんて、ただの夢物語にすぎないのだ。この現実を思い知らないと、あなたは即座に地獄行きになるだろう。」
「実を言うと、私もその1人だった。だから、その後、私は起業現場を徹底して取材し、起業家 が必ずはまるワナ、失敗する条件を探り続けた。本書は、その総まとめである。」

●こうして著者は「見込み違い/裏切り/貸し渋り/資金繰り地獄/身ぐるみ剥がされる個人保証/連鎖倒産/ベンチャー支援のワナ/バクリ屋の儲け話/フランチャイズ詐欺/大企業のベンチャー潰し/下請けの悲哀……など、起業家の前に立ちふさがるワナ」を徹底的に取材し、具体例を示してゆきます。この事例が実に面白い。そしてこう結論づけます、「世の中は、そんなに甘くないのだ。」と。起業を志す方には一読の価値があるでしょう。

●成功者の代表例として、ライブドアの堀江貴文氏の名前があげられていますが、想えば、ニッポン放送株の買占めで彼の名が全国津々浦々に知れ渡る1年ほど前、雑誌で、堀江氏について、友人がこう評していたのが思い出されます。「彼は、上に『超』の字がつくほどの、非常に用心深い、慎重な男だ。」。なるほど。「想定の範囲内です。」が口癖なのは、むべなるかな、です。

●命がけでことを起こすほどの大胆さと、「超」の字がつくほどの用心深さを兼ね備えた青年。誰でも真似のできることではありません。本書が紹介する幾多のリスクを、彼はすべて乗り越えてきました。堀江氏は一種の天才というべきでしょう。
起業バカ(2)

2.今月のおすすめ

―夢枕獏「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」(徳間書店。1890円)―

●とうとう読み終わってしまいました。もっとゆっくり楽しみたかったのに、土日に読んだせいか、後半の三巻は各巻一日で読了。あんなに分厚いのに。読むのを途中でやめられなかったのです。これぞノンストップノベル。さすが完成までに17年もかけただけのことはあります。

●主人公空海のほか、書で有名な橘逸勢(たちばなのはやなり)、同じく唐に渡って、なんと科挙に合格し唐の高官となった阿倍仲麻呂といった日本人に加え、有名な玄宗皇帝や楊貴妃、空海の師匠の恵果、恵果の師匠の不空、詩人李白や白楽天等々の多数の「有名人」が登場する華麗な絵巻物です。

●また、登場人物の人種・国籍も、日本人と中国人の他に、アラビア人やインド人、チベット人と国際色豊かです。

●物語の設定もすごい!玄宗皇帝の若き日の気まぐれから、妻を死に至らせたアラビア人の道士が玄宗皇帝を深く恨んで、なんと百年かけて唐を密かに滅ぼそうと画策する、というのですから。この陰謀を空海は見事な智謀で終結させ、唐王朝を救います。

●このストーリーを縦糸に、物語の最後では、あの楊貴妃が、実は安禄山の乱の後もひそかに生き延びていた、という隠し玉が炸裂します。

●一方、空海について多少の予備知識がある方には、作者がこの作品を書くにあたって最初に考えた(と思われる)「戦略」が見えてくるかもしれません。

●というのは、空海は、自身が書き残した文章によれば、密教の聖地、長安の青龍寺を訪れると、師匠となる恵果和尚が最初から大歓迎し、他の大勢の弟子を差し置いて、わずか一年で空海に密教の奥義を伝えた、というのです。そのお陰で空海は20年の中国滞在予定を、わずか2~3年で切り上げて帰国しました。

●このエピソードがその後の日本における「空海大天才伝説」に繋がります。しかしながら、かなり不自然な、奇怪なエピソードではあります。

●獏さんは、空海のこの謎めいたエピソードに説得力を持たせるためには、空海が唐についてから青龍寺を訪れるまでの間に、彼の天才振りを唐の人々に見せつける必要がある、と考えたようですナ。

●どうもそのヘンから、前述のような壮大なスケールの物語を構想し、しかもわずか数ヶ月の間の出来事の中に凝縮する、という力技をやらかしたようです。大変な力量です。

●作者自身も、後記で「ど傑作」と自画自賛しておられることですし、ぜひ一度お読みになってみてください。楽しいこと請け合いです。(以上)
沙門空海唐の国にて鬼と宴す(巻ノ1)

●(蛇足1)空海について手っ取り早く知るなら司馬遼太郎さんの傑作「空海の風景」がおすすめです。小説とエッセーの中間のような滋味深い作品です。
空海の風景(上巻)改版

●(蛇足2)また、辻原 登「翔べ麒麟」は、中国での阿倍仲麻呂の活躍を正面から扱った、多分始めての小説ではないかと思います。新聞連載時は評判になったようです。もっとも、スマイリーの感想では、小説としての完成度がイマイチで、あまりおすすめできません。人物描写が、登場人物に血が通うところまでいってないような気がします。
翔べ麒麟(上)
(続く)






Last updated  2005.12.02 23:10:56
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(承前)
3・特集:歴史の目撃者
-ジョンストン「紫禁城の黄昏」完訳版(上、下二巻)(中山理訳。祥伝社。2100円)-

●R.F.ジョンストン「紫禁城の黄昏」は、映画「ラストエンペラー」のネタ本です。1930年代始めに出版された、名著の誉れ高い有名な本です。

●岩波文庫に古い翻訳が入っていますが、こちらは上智大の渡部昇一さんが「悪質な捏造だ」と厳しく批判している、いわく付きの訳稿です。

●旧訳は、前半を中心に、全体の約三分の一をカットした抄訳版ですが、この前半にこそ戦前の日本の中国政策を客観的に評価した重要な記述が、中国通のイギリス人の立場から詳しく述べられている、と渡部氏は指摘しています。

●この名著の待望のノーカット版の訳稿が今年の三月に出版されました。不覚にも私はそのことを、つい最近知りました。訳者は中山理さんという、渡部氏の弟子筋にあたる英語学者です。文章は良くこなれた読みやすいものです。

●上巻の前半では、早くも次のような記述が出てきています。「もし日本が、1904年から1905年にかけての日露戦争で、ロシア軍と戦い、これを打ち破らなかったならば、遼東半島のみならず、満州全土も、そしてその名前までも、今日のロシアの一部となっていたことは、まったく疑う余地のない事実である。」しかも、当時の日本は、満州の地をロシアから奪い取った後、清国に返しているのです。

●ロシアという国は、ロシア革命の前も後も、まったくどうしようもないヤクザ国家でした。だから、日本の日露戦争勝利は、ロシアを始めとする欧米諸国に虐げられてきたアジアや南米、東欧、アフリカ諸国に大きな勇気を与えた訳です。このことは大いに誇ってよいことです。この本は、後の、欺瞞に満ちた「東京裁判」史観に大幅な修正をせまる貴重な歴史資料です。

●最後にアマゾンの紹介文を引用させていただきます。
「「東京裁判」と「岩波文庫」が封殺した歴史の真実!」
「清朝最後の皇帝・溥儀(ふぎ)のイギリス人家庭教師による歴史の証言。映画「ラストエンペラー」の原作にして、戦前のシナと満洲、そして日本との関係を知る第一級資料、待望の完全訳。上巻では、原著全26章のうち、第一章から第十四章までを収録。うち第一章から第十章までの邦訳は、岩波文庫版未収録。」
「(監修者<渡辺昇一さん>のことば)近代化を唱える康有為(こうゆうい)の運動が失敗に終わり、西太后(せいたいこう)が実権を掌握すると改革派の光緒帝(こうちょてい)を幽閉し、反動政策を推し進める。だが、ついに革命を誘発し清朝は滅亡。即位して間もない少年皇帝・溥儀は、曖昧な条件の下、そのまま紫禁城に住み続けることになった。 そんな中「帝師」の要請を受けた著者は、日々皇帝に接し、唯一の外国人として紫禁城の内側をつぶさに見聞する機会を得る。清朝最後の皇帝・溥儀(ふぎ)の家庭教師として、皇帝の人となり、紫禁城の内幕、満洲問題と日本との関係を、内側からつぶさに観察したイギリス人による貴重この上ない歴史の証言。原著は1934年刊行。「『紫禁城の黄昏』が、極東軍事裁判に証拠書類として採用されていたら、あのような裁判は成立しなかったであろう。こういうだけで、本書の価値を知るには十分である。もちろん、何が何でも日本を悪者に仕立て上げたかった東京裁判所は、本書を証拠資料として採用せず、却下した」。」(以上)
完訳紫禁城の黄昏(上)

4.図書館の蔵書から
-隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上下)(新潮文庫。540円)-

●私は時代小説マニアですが、ここニ年ほど時代小説から遠ざかっていました。最近はこれといった作品に出会わなかったからですが、このほど久しぶりに見つけました。隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」(上下)(新潮文庫)です。

●近頃の私は、幕末の佐賀藩の家老、山本常朝が語りおろした「葉隠」という書物に興味を持っていました。先月、ある図書館で古い岩波文庫本を見つけたことがきっかけです。

●読みづらい文語文を辛抱して読み始めると、随所にドキッとするようなフレーズがでてきます。

●これはじっくり腰を据えて読む必要があると感じ、書店で岩波文庫(上中下)三巻を注文して、先ごろ読み始めたところでした。

●そこに、先日、別の図書館でこの小説を見つけました。題名から、これが「葉隠」を小説化したものであることはあきらかでした。さっそく借り出して読んでみました。

●読み始めてすぐに「これは掘り出し物だ」と感じました。

●「葉隠」で描かれた内容を下敷きに、才能豊かなベテラン作家が練達の筆で書き上げたみごとな小説です。読みながら、何度も感動し、目頭を拭いました。こんな経験は、まったく久しぶりでした。

●隆さんはシナリオライターから小説に転じ、すぐに直木賞を受賞するほどの豊かな才能で、大いに期待を集めましたが、60歳代で急逝しました。小説家としての活動はわずか5年間でした。読み応えのある氏の新作小説がもう現れないのかと思うと、惜しんでも余りあります。

●実はこの作品は、作者の急逝で未完に終わりました。完成しておれば、現在の文庫本で二冊の分量は、倍くらいにはなっていたようです。実に残念です。続きが読みたい!

●というわけで、この作品は未完ではありますが、皆さんに自信を持ってお薦めできます。おそらく深い感動を与えてくれることでしょう。

●最後にアマゾンの紹介文を引用さあえていただきます。
「常住坐臥、死と隣合せに生きる葉隠武士たち。佐賀鍋島藩の斎藤杢之助は、「死人」として生きる典型的な「葉隠」武士である。「死人」ゆえに奔放苛烈な「いくさ人」であり、島原の乱では、莫逆の友、中野求波と敵陣一番乗りを果たす。だが、鍋島藩を天領としたい老中松平信綱は、彼らの武功を抜駆けとみなし、鍋島藩弾圧を策す。杢之助ら葉隠武士三人衆の己の威信を賭けた闘いが始まった。」
死ぬことと見つけたり(上巻)

5.今月の心に残る言葉

「地球の上にいる限り、わしらはみんな巡礼さ----わしは聞いたんだが、わしらのこの地球さえ、空をまわって歩く巡礼だというじゃないか。」 (ゴーリキー「どん底」)
どん底改版

6.スマイリーの日記
-老いも若きも「活字離れ」って本当?-

●ずいぶん前から、若者の「活字離れ」が問題になっていましたが、先ごろ、中高年層の活字離れが顕著になっている、と報道されました。つまり、老いも若きも「活字離れ」というわけです。

●おそらく、出版社や新聞各社などの伝統的な活字業界の内部資料では、売上減少が顕著になっているのでしょう。

●経理屋の私には、売上減少というものがどれだけ恐ろしいことか良く分かります。固定費が回収できなくなり、リストラを迫られることになるからです。人から恨まれるリストラなんて、誰も好き好んでやる人はいません。

●ところで、一方で、インターネットやケータイなどの通信系の無料の活字情報の方は隆盛を極めています。

●今はまだ、高齢者層にはネットはあまり普及していませんね。私の母などはローマ字も読めませんので、ネットを利用するのは、なかなか困難です。

●しかし、いずれ高齢者層の世代替りとともに、ほとんど全ての日本人がネットを活用するようになるでしょう。これは時間の問題です。

●つまり活字媒体は、今後ますます無料化が進むということです。有料の場合でも「月額○○円で使い放題」というサービスになるでしょう。その結果、有料・個別取引が原則の現在の紙媒体業界は当然苦しくなります。

●今、叫ばれている「活字離れ」の正体は、「『有料・個別取引・紙』媒体離れ」ではないか。活字業界に構造変化が起きつつあるのではないか。

●過去三十年くらいは、情報やサービスの有料化が時代のトレンドだと言われ続けてきました。特許権や著作権の問題も、その文脈で論議されてきました。

●しかし、時代は再び、情報やサービスの無料化に立ち戻りつつあるような気がします。

●今後は、紙媒体業界は、民放テレビのように、広告が一杯載っている、無料または思い切った廉価の新聞・書籍の時代になるのではないでしょうか。

●中身の濃い啓蒙書や学術書は、高価・小部数で出版される。軽い読み物はコマーシャルが一杯載っている100円本ばかりになる。こんな時代がやってくるかも。

●そうなると、他方では、紙媒体向けの「『読ませる』『見せる』広告」が大きく進歩し、新しいビジネスになることでしょう。テレビコマーシャルが劇的に進歩したように。番組自体よりも、CMの方が見ごたえがある場合が、しばしばあるでしょ。

●もしかしたら、商業広告業界に新しい分野が誕生するかも。「書籍内広告」。

●そういう時代に、執筆者は何を書けば、文筆で食べてゆけるのでしょうか。個人が単独で、文筆で食ってゆくのは難しい時代になるような気がします。

●むしろ自分で会社を作って、ホームページやブログ、メルマガを発行して有料情報サービスを提供する「ネット組織経営者」化する人が増えるかも。米国では、ちょっとした新聞並みのアクセス数を誇るブロガーが少なくないそうですから。(以上)

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(編集後記)
◎長い間、当メルマガを発行できませんでした。ごめんなさい。

◎寒い日が続きますね。マフラーが手放せません。コートはもう少し辛抱しようと思っています。でも、この寒さでは、あまり自身はないな。

◎フィギュアスケートの新星、浅田真央ちゃんはすばらしいですね。私はすっかりファンになりました。彼女の演技を見ていると「楽チン」「余裕」「優美」という感じがします。他の選手が必死こいているのと好対照です。真央ちゃん、がんばれ!

※ご感想を、下記メールアドレスや、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいのですが。

(プロフィール)スマイリー。会社員。フリーライター志望。
連絡先:smilynet@hotmail.com
紹介HP:http://plaza.rakuten.co.jp/smilynet/






Last updated  2005.12.02 23:11:18
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2005.05.03
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○●○ スマイリーの読書クラブ・新版 ●○●
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-スマイリーの読書クラブ-
1.毎月第一月曜日の朝発行です。
2.読書好きの働き盛りの方々に、多彩な書籍の情報をお送りします。
  気に入っていただけたら、オンライン書店で、すぐに購入できます。
3.コンテツンツは次のとおり。
 (1)注目のビジネス書
 (2)「今月のおすすめ書」または「新聞・雑誌の読書コーナーから」
 (3)特集:
 (4)図書館の蔵書から
 (5)今月の心に残る言葉
 (6)スマイリーの日記
4.登録・解除はこちら
http://www.mag2.com/m/0000131354.htm
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     -第3号(2005年5月2日発行)-

0.始めに
本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。
元気にお過ごしですか。
先月は発行できなくてごめんなさい、今月からまた張り切ってご案内いたします。

(目次)
1.今月のおすすめ書
―平岩弓枝「はやぶさ新八御用旅『日光例幣使道の殺人』」(講談社。1500円+税)―
2.注目のビジネス本
―市田美加「兼業・週末企業から始めて『1年で1億2000万円ネットショップをつくる』」(ダイヤモンド社。1400円+税)―
3.図書館の蔵書から(1)
―斎藤美奈子「趣味は読書」(平凡社。1429円+税)―
4.図書館の蔵書から(2)
―橘玲「得する生活」(幻冬舎。1500円+税)―
5.今月の心に残る言葉 
6.スマイリーの日記

************************** 本誌 *******************************

1.今月おすすめ

-平岩弓枝「はやぶさ新八御用旅『日光例幣使道の殺人』」(講談社。1500円+税)-

●私にとっては待望久しい一巻です。今回も期待にたがわぬ面白さで、一晩で読んでしまいました。
●平岩さんの時代小説のなかでは「御宿かわせみ」シリーズと「はやぶさ新八」シリーズが私のひいきです。特に「はやぶさ新八」シリーズは、タイトルだけみると町人物のような感じですが、実は私好みの武家物捕り物帳です。
●今回は、お公家さんが日光へ公式出張する途中に起こった謎の失踪事件と殺人事件に取り組みます。最近のこのシリーズは東海道に中仙道と長旅ものが続いています。物語については「読んでからのお楽しみ」と言うことにしておきます。
●ただこのシリーズで、私が唯一気になって仕方がないのは、主人公の主君、根岸肥前守鎮衛(やすもり)を描くときの作者の文体です。作家と作品のスタンスと言いましょうか。例えば、「---が余程お気に召したのか---」「お召しかえもなさらず---」「独り言のようにおっしゃった」「お召しかえを始められた」等々。この敬語は何なのでしょう。随分不自然です。高貴な身分の滋野井公敬に対してはちっとも敬語を使っていないんですから。
●主人公の視点で描写されている場面が多いことは確かですが、主人公、隼新八郎の独白体で作品が描かれているわけではありません。作者がなにも、登場人物にすぎない「主君」に敬語を使う必要はないわけです。この点だけが私には、読みながら小骨として引っかかっていました。
●小説作りと言うのは孤独な作業でしょうし、平岩さんぐらいの大御所になったら、周囲の人も気軽に「ここ、おかしいんじゃない?」なんて言えないんでしょうね。でも作品自体はとっても面白くて満足しました。

2.注目のビジネス本

―市田美加「兼業・週末企業から始めて『1年で1億2000万円ネットショップをつくる』」(ダイヤモンド社。1400円+税)―

●「週末企業」に「ネットショップ」。近頃の私の憧れのキーワードがふたつもタイトルに並んでおり、その上表紙の帯に載っていた明るくチャーミングな著者の近影にひかれて、読んでみました
●著者は始め、勤めの傍ら自分でお店を開き、主にネットを通して商売を広げて成功し、ついに独立を果たした女性実業家です。現在は同じように起業を目指す人に、コンサルティングも行っています。
●成功者の実体験談というのは、まことに示唆に富んでいます。この本でも重要な指摘が随所に出てきます。
●例えば、
(1)通販の主役は財布を握る30代~40代の女性であり、女性誌の分析から始めるべき
(2)送料設定が売り上げを大きく左右する
(3)提案型ショップを目指し、その商品のメリットはなにかを訴える
(4)「また買いたい」というお客様の心は買えないから、細やかなサービスが大切
などです。なるほどなるほど。また、女性ならではと思われる、お客様を喜ばせ、信頼を勝ち取る細やかな気配りの事例がいくつもでてきます。
●これらの内容の是非については、自分で事業を行った経験のない私には判断できませんが、こういった指摘は、私のようなサラリーマンにも仕事をする上で参考になります。
●この本を読んでいて感じるのは、同じような仕事をしても、この方のように自分の事業として行うのと、人に雇われてサラリーマンとして取り組むのとでは、仕事に取り組む姿勢が相当に違うな、ということです。お客様の信頼を勝ち取ることにかけての貪欲さ、真剣さが違います。
●例えば、情報収集にかける意気込みと覚悟の厳しさ、一方逆に、苦手な仕事は、お金を払って、得意な人にあっさり頼んでしまう割りきり。こういったことは、同じようにお金を使っても、消費とは異なる、投資になっています。
●一代で大企業を作り上げた大経営者の事跡はもちろんのこと、こういった「お隣の成功者」からも、実践的な智恵が大いに学べるな、というのが実感です。

兼業・週末起業から始めて1年で1億2000万円ネットショップをつくる! オンリーワンを目指す人の...

3・図書館の蔵書から(1)
-斎藤美奈子「趣味は読書」(平凡社。1429円+税)-

●近頃の私は、図書館や書店で著者欄に「斎藤美奈子」とある本を見かけると、書名や目次の確認もろくにしないで、即座に借りたり買ったりしてしまいます。数年前に買った「
文章読本さん江」(小林秀雄賞受賞)の強烈な読後感のせいでしょう。あの本は、文章が分かりやすくて、分析の論理が鋭くて、とても勉強になり、その上、何度も死ぬほど笑い転げて呼吸困難になりかけた本です。
●今回のこの本のタイトルは、著者が「私の趣味は読書です」といっているわけではありません。なにしろ著者は文芸評論家ですからね。この本は、世の「私の趣味は読書です」とやや誇らしげに言う人向けに、この手の人たちが読むのを避けたがる傾向にあるその時々のベストセラー本を彼らに代わって読み、これらの本の長所・欠点を教えて上げましょうという、かなり屈折した趣旨の一種の実用書(?)です。
●想定読者に、私はどうも、かなりぴったり当てはまるようです。お前のオツムの程度なんてこちらは全部お見通しだよと、著者にすっかり見透かされている感じです。なにしろこの本で取り上げられているベストセラー41冊を、私はただの一冊も読んでいないんですから。アハハ。
●と言うわけで、個々の本に対する著者の批評の妥当性については、私は語ることができません。ただひたすら、著者の鋭い分析内容と抱腹絶倒の文章の芸を楽しみました。
●栄えある血祭り第一号(?)になるはずだった五木寛之「大河の一滴」だけは妙に採点が甘かったですな。「大河の一滴」は「古老が語る良い説教集」だそうです。
●二冊目からは俄かに調子がでてきます。大野晋「日本語練習帳」は「インテリゲンチャなじっちゃんのボケ防止のクイズ本」、柴木のり子「倚りかからず」は、これを真に受けて無知な年寄りが「学ばないぞ」と開き直ったら、周囲は迷惑し、本人はボケるぞ。
●この調子で、ともかく面白いです。しかも、あいまいなナアナアのムードの流されず、しっかりとした「生活感覚」、言い換えれば「良識」で内容を分析しています。
●特に印象的だったのは、私も本のタイトルなら知っているB.シュリンク「朗読者」の評です。この作品は、文盲を恥じて、敢えて無実の罪を被った女性を、彼を慕う若いインテリ男性の立場から描いたものです。新聞などの書評で、幾人もの著名人が絶賛した作品だそうですが、これを斎藤さんは、インテリ男性に都合のいい身勝手なお話、とばっさり。絶賛していた書評者たちはインテリの男性ばかりで、そりゃ、あんたたちには楽しいだろうさ、と啖呵をきっています。
●皆さん、「斎藤美奈子」の名をお忘れなく。
(続く)






Last updated  2005.05.15 18:41:18
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