スマイリーの読書クラブ-第6号-
-----------------------------------------------スマイリーの読書クラブ-(ご紹介)1.隔週月曜日の朝発行です。2.読書好きの働き盛りの方々に、多彩な書籍の情報をお送りします。気に入っていただけたら、オンライン書店で、すぐに購入できます。3.コンテツンツは次のとおり。 (1)注目のビジネス本 (2)新聞・雑誌の読書コーナーから (3)特集:時代小説の楽しみ (4)図書館の蔵書から (5)今週の心に残る言葉 (6)スマイリーの日記4.登録・解除はこちらhttp://www.mag2.com/m/0000131354.htm ------------------------------------------------------**********************************************○●○ スマイリーの読書クラブ ●○●**********************************************-第六号(2004年6月28日発行)-0.始めに本好きの皆さん、こんにちは!スマイリーです。元気にお過ごしですか。今回も硬軟とりまぜてお役に立てそうなものをご紹介したいと思います。(目次)1.注目のビジネス本 ―川上則道「資本論の教室」(新日本出版)―2.新聞・雑誌の図書広告から ―加村一馬「洞窟オジさん」(小学館)他―3.特集:時代小説の楽しみ ―藤沢周平「秘太刀馬の骨」―4.図書館の蔵書から ―レーニン「帝国主義」―5.今週の心に残る言葉 6.スマイリーの日記(アマゾン) *************** 本誌 *******************************1.注目のビジネス本―川上則道「資本論の教室」(新日本出版)―●あの難解きわまるマルクスの「資本論」の分かりやすい解説書です。内容を丁寧に解きほぐし、かんでふくめるように説明しています。その読みやすさは驚くばかりです。●ページ数も200ページほどと大変手ごろです。入門には最適でしょう。私は三回精読しましたが、「資本論」がなんとなくわかったような気がしたから不思議です。●オリジナルからの引用と解説が中心というオーソドックスなスタイルですが、途中、新聞記事からの適切な引用もありますし、ケインズ経済学との対比などもあり、理解を助けてくれます。特に労働価値説の解説は巧妙です。●私は長らくマルクス経済学や社会主義思想に対するコンプレックスのようなものがありました。高名な思想であるにもかかわらず、私にはさっぱり理解できなかったからです。●この本をきっかけにマルクス主義関係の古典を岩波文庫で買い集めました。共産党宣言も学生時代以来久しぶりに読み返してみました。レーニンの帝国主義論も始めて読んでみました。いずれも、貧しい者、虐げられた者への温かい同情が背後に感じられます。それが時代を動かした原動力だと思われます。●マルクス経済学は、理論面では「循環論に陥っている」という致命的な欠陥が発見されたようですが、とはいえ、理論の背景にある「ウオームハート」(古典派経済学者マーシャルの言葉)には現在でも感動させられます。2.新聞雑誌の図書広告から(その一)-加村一馬「洞窟オジさん」(小学館)-●6月19日<土>の朝日新聞のbe on Saturdayで紹介されていた気になる本です。●著者、加村一馬氏(57歳)は昨年9月に茨城県つくば市の自動販売機から小銭を盗もうとして現行犯逮捕されました。●裁判の過程で、氏が、親の虐待から逃れるため13歳で家出して以来なんと43年間にもわたって野宿生活をしてきた、という驚くべき半生が明らかにされました。●20歳代までは、著書の題名どおり、山中の洞窟で蛇やねずみを食べながら暮らしていたそうです。●一方、山を降りた後は、一度は世を捨てた男の現代社会を巡る探検記となります。●前半は冒険小説、後半は現代社会探検記という、世にも珍しいルポです。<洞窟オジさん>(その二)-奈須きのこ「空(から)の境界」(講談社ノベル)-●6月18日<金>朝日新聞夕刊“ツウのひと声”で、藤本由香里(編集者・評論家)氏が紹介された今最もホットな注目の本です。●先行発売された約一万円の豪華本5,000部が3時間で予約完売。今月の上旬のノベルスは、売れ行きの出足が「バカの壁」や「世界の中心で愛をさけぶ」を超えている。小説では異例の出来事。とのこと。現在品切れ中とか。店頭では手に入らないかもしれません。●<ネット発表(不調)→コミック発売(不調)→ノベルゲーム発売(同人市場で大ヒット)→小説人気に火> という、手を変え、品を変えの販売戦略もユニークです。私はむしろそちらのほうに興味をそそられました。●主人公は、人であれ、ある種のシステムであれ、およそ生きているものならば、その死を「視(み)」て「殺す」ことができる「直死の魔眼」を持つ、まるでギリシャ神話に出てくるゴルゴンのような女、両儀式。世界はすべて空っぽの境界で仕切られていて、異常と正常を隔てる壁なんて社会にはない。●「まだ未熟なところも同人らしさもたしかに残っているが、ここには確実に『新しい時代』の始まりがある」と藤本氏は評しています。<空の境界>3・特集:時代小説の楽しみ ―藤沢周平「秘太刀馬の骨」(文芸春秋)―●またしても、私の大好きな藤沢周平さんを取り上げさせていただきます。今回は、氏にしては珍しくミステリータッチで書かれた円熟期の傑作「秘太刀馬の骨」です。円熟しきった芳醇な香りのするすばらしい作品です。●この作品は、「馬の骨」と呼ばれる秘太刀を捜し求め、ついに発見する、という神話的な内容が縦糸になっていますが、同時に、この作品には、いくつかのサイドストーリーがあって、それらが平行して展開し、お互いに、巧みに絡み合っています。藤沢作品お決まりの藩主家の相続に絡む派閥争い、主人公の妻の「気鬱の病」との闘病・克服、若い侍のいびつな恋などです。●藤沢作品の際立った魅力は、さりげないが天才的な冴えをみせる文章表現です。たとえば、主人公浅沼半十郎が家老の家に呼ばれたとき、家老のめかけの若くて美しい娘が茶をもって部屋に入ってきますが、その場面を氏はこう表現します。「『よし、入れ』と帯刀(たてわき<家老の名>)が言うと、半十郎の背後の障子がひらき、夥しい日の光と一緒に女が入ってきた。」光り輝くような美女の登場を彷彿とさせます。●また、家老の命を受け、半十郎の助けを借りて、秘太刀探しを実際に行う家老の甥は、腕が立つ若々しい美剣士だが、癖のある嫌な奴として造形されています。家老が半十郎に紹介するため、彼を部屋に招き入れた場面を、作家はこう描写しています。「---廊下にご免という声がして部屋に人が入ってきた。 『や、お待たせしました』 座るとすぐに、その男は歯切れのいい江戸弁でそう言った。びっくりするような美男子で、まだ二十過ぎの男だった。だがその帯刀の甥は、明るい声と表情とは裏腹な、値ぶみするような目で半十郎を見ていた。」いかにも、何事かが始まる、というただならぬ雰囲気を、さりげなく演出します。●この作品は、この他に、会話に山形弁を巧みに取り込んで、作品世界の臨場感を迫真のレベルに引き上げています。●半十郎は、幼い長男を失って以来「気鬱の病」に取り付かれた妻と、茨のような夫婦生活を続けていましたが、その妻は、ひとつのきっかけから立ち直ります。そのきっかけとなったエピソードを、使用人の老人が涙ながらに語る感動的な場面で物語は終わります。充分に伏線が張られた、いつもながら見事な幕切れです。4.図書館の蔵書から ―レーニン「帝国主義」―●マルクス・エンゲルスの「共産党宣言」と並び称される、レーニンの古典的労作です。●きっと難解な本だろうと、おっかなびっくりで読みはじめたのですが、実際に読んでみると、統計が多く、計数的に説明されていて、意外にすんなり理解できました。●印象的なのは、この本で取り上げられている1900年前後の時代の、「独占資本」と呼ばれる当時の大企業の業績の凄まじさです。世界的な大企業の純利益率が4割だったりします。確かに尋常な経営をしていたのではこんな業績にはならないでしょう。レーニンが使う「搾取」や「収奪」といった用語が、説得力を持って迫ってきます。●この本を読んでいると、当時の時代状況がよくわかりますが、同時に、当時の状況は現代では次第に分かりにくくなっているな、という印象も受けました。当時の「経営」には、現代の麻薬取引のような胡散臭さがあるように思います。●今年の4月3日の日経に、現在のロシアで第二の鉄鋼会社「シビルスターリ」の昨年前半の決算結果がでていましたが、利益率が24%もありました。どんな経営をしているのだろうと私は首を傾げてしまいました。「第二のロシア革命」なんていう血生臭いことにならなければいいのですが。5.今週の心に残る言葉 - 歴史は繰り返す。(出典不明)-6.スマイリーの日記 -前回ご紹介の関岡英之「拒否できない日本」に思う-●まったく驚かざるを得ない内容でした。日本はアメリカの属国なの?と聞きたくなります。しかも腹が立つのは、マスコミがこういうことをまったく報道しないことです。この本が出た現在も一向に話題にならないのはどうしたことでしょう。●在日アメリカ大使館のホームページから問題の二つの資料をプリントして読んでみました。金融問題は解決済みとして、あっさりした表現になっています。「いっそうの徹底を望む」なんてかかれています。今の日本の金融界は、この先どうなってゆくのでしょうか。●一方、司法制度については詳細で具体的です。今、アメリカが一番力を入れている問題であることが良く分かります。この問題はこれからが本番です。何しろ、かの国の弁護士に仕事を作ってやることが目的です。日本は、アメリカのような、血で血を洗う訴訟社会になるのでしょうか。●そのうえ、こういった課題に、日本政府が手を抜かずにしっかり取り組んでいるかどうかを確認する会議まであるのです。もし日本が手を抜いたら、安保条約破棄をちらつかせるのでしょうか。強力な軍隊を持たない国は悲しからずや、です。●私が見たのは内政関係、特に経済問題だけですが、軍事や外交も同じスタンスで押し付けられているであろうことは容易に想像がつきます。●国会議員や官僚どもは国を売っていることを自覚しているのでしょうか。私は今度の参院選では自民党候補には絶対投票しないつもりです。ささやかな一票ですが、「アメリカはノー」、「自民党もノー」、「亡国官僚どももノー」と選挙で意思表示してやりたいと思っています。(以上)****************************************************(編集後記)今回は如何でしたか。なお、ご感想を、紹介ホームページの掲示板にお寄せくださるとうれしいです。スマイリー。会社員。連絡先:smilynet@hotmail.com