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カテゴリ:夢幻の桃花~三生三世枕上書~全56話
三生三世枕上书 Eternal Love of Dream 第52話「帝君の誓い」 白鳳九(ハクホウキュウ)は″兵蔵(ヘイゾウ)の礼″で思いがけず玄(ゲン)魔君・聶初寅(ジョウショイン)と手合わせすることになった。 しかし力の差は歴然、善戦したものの鳳九は負けを喫してしまう。 「鳳九殿下を買いかぶっていたようだ、神族の剣術はこの程度だとは…ふっ」 「魔君は私より8万歳も長く生きてる、だいたい私の3倍ね それでも鳳九と魔君が同輩とおっしゃるなら、この鳳九、潔く負けを認めましょう」 「(; ̄▽ ̄)辛辣な言葉だが勝ったのは私だ、ならば私の望みを聞いて…」 「ちょっと待った!」 その時、連宋(レンソウ)が立ち上がった。 何を隠そう″兵蔵の礼″における挑戦とは新帝夫婦への挑戦、聶初寅は確かに新帝には勝てたが、その夫とまだ戦っていないという。 聶初寅は白鳳九に夫がいるなど聞いたことがないと鼻で笑ったが、ならばその夫と手合わせをすると了承した。 するといつの間にか上座から姿を消した東華帝君がやって来る。 「…剣も用意したし、始めても良いか?」 白鳳九の夫として現れたのは東華帝君だった。 驚いた神仙たちは一斉に立ち上がって拝礼すると、東華帝君は軽く手を振って礼を免ずる。 「負けて当然だった、恥じることはない」 東華帝君は自分の手巾で白鳳九の汗を拭ってから下がるよう命じた。 すると聶初寅はこの挑戦が同輩の間に限られると指摘し、帝君とは年の差もあり、世代が違うと断る。 しかし東華帝君は鳳九の夫なので世代は同じだと聶初寅の理屈を逆手に取った。 「確かそなたと鳳九は同輩なのであろう?ならば私とて同輩にあたる 武術に傾倒しているそうだな?実は私もそうだ、縁があるのぉ〜」 東華帝君はせめてもの情けに3手ほど譲ったが、聶初寅はあっけなく東華帝君に敗れて引き上げて行った。 その頃、魔界では赤(セキ)魔君・喣暘(クヨウ)が配下から結界に赤い光が走って妙な気配を感じだと報告を受けていた。 何でも聶初寅が結界を守っていた時、魔兵たちが卒倒し、その間の記憶を失ってしまったという。 確かに多くの魔兵が一斉に倒れるとは奇妙だった。 実は聶初寅は何かと理由をつけては他の魔君と一緒に行動せず、魔将の話では過去に何度も禁忌の地へやって来ては1人で中に入っていたという。 喣暘は聶初寅を警戒し、結界を守る当番は聶初寅と燕池悟(エンチゴ)を組ませることにした。 連宋は東華帝君を心配した。 いくら聶初寅が卑劣とは言え、仙術も使わずに剣まで折る必要はなかっただろう。 「阿蘭若(アランジャク)の夢での傷がまだ癒えていない、無理はいけません」 「良いのだ、少し休めば治る…先に帰るが良い、私は小白と帰る」 「鳳九が関われば一歩も譲らぬとは…太晨(タイシン)宮に鎮座する尊神の面影がどこにもない」 「成玉(セイギョク)が関わればそなたも同じであろう?」 煦暘は聶初寅を警戒する一方、燕池悟への信頼を深めていた。 実は緲落(ビョウラク)から血涙(ケツルイ)を守るため九天に相談へ行った時、天君は結界を守るため10万の大軍を出すと約束している。 喣暘はその時の約束を思い出しながら、燕池悟に全てが終わったら姫蘅(キコウ)を迎えに行って欲しいと頼んだ。 「その時にこの兄を許してくれたらいいが…聶初寅は何か企んでいる 緲落に操られている可能性もある、もし本当に緲落に籠絡されたのなら…」 「喣暘!…いや、哥哥(兄さん)、俺に何でも命じてくれ!」 「ふっ、小燕、危急存亡の秋(トキ)に魔族で最も信頼できる者がお前だとはな…」 聶初寅が寝殿に戻ると、密かに妙義淵から放たれた緲落の化身が待っていた。 緲落は″兵蔵の礼″に乗り込んだ聶初寅に何か朗報があるのかと聞く。 しかし狐族を魔界に引き入れて魔尊に捧げるつもりが、聶初寅は東華帝君に負けて魔族の面目を潰してしまったと報告した。 「東華と戦っただと?東華の仙力に衰えはなかったか?」 「東華の仙力は絶大で、私は4手で敗れました」 緲落は驚いた。 阿蘭若の夢で傷を負わせた上、自分の封印を強化するために修為も失ったはず、なぜこんなに早く回復したのだろうか。 焦った緲落は今日から200名の魔族を捧げるよう要求し、喣暘から魔君たちを遠ざけろと命じた。 「喣暘が単独の時を狙い、私が始末する」 東華帝君が白鳳九の夫として聶初寅の挑戦を受けたことで、2人の仲は公然の事実となった。 そのお陰で鳳九は家族へ切り出すきっかけが必要なくなり、東華帝君と家族の会食は和やかに進む。 すると白奕(ハクエキ)がなぜ鳳九を帝后に選んだのか聞いた。 「一目惚れじゃ」 東華帝君の答えに鳳九と精衛(セイエイ)は思わず目が点になった。 |ω・`).oO(帝君ったらますますホラ吹きになったわ〜 「青丘では婿への条件が厳しいと聞く 私が条件に合うのか小白もずっと案じ続け、長く悩んでいたのじゃ、ゆえに挨拶が遅くなった ああ~私は名家の出身でもなく、今は何の実権もない だがこたびの一件で、すでに誰もが私を青丘の婿だと思っている 条件が合わずとも、目をつぶってもらうしかないのじゃ」 そこで東華帝君は占いで5月6日が吉日だと話し、この日に祝宴を行うと決めた。 あと10日しかないが、全て青丘のしきたりで構わないという。 また祝宴の場所は生まれ育った碧海蒼霊(ヘキカイソウレイ)が良いと話した。 碧海蒼霊と言えば父神が東華帝君に与えた聖地、白夫人は鳳九のために聖地を開いてくれると聞いて感激する。 しかし鳳九はなぜか父の様子がおかしいことに気づいていた。 折顔(セツガン)が白奕に頼まれて東華帝君に会いに来た。 実は魔族との大戦で白奕は東華帝君の配下、東華帝君の命には何でも従って来たが、掌中の珠である白鳳九の事とあっては黙っていられない。 「白奕はこの婚姻に納得していません…理由はあなたとの格の違いではない、その~ あなたが鳳九を苦しめたからです」 白奕は鳳九が東華帝君に尽くして来たことを全て知っていた。 父親として心を痛め、割り切れない思いなのだという。 とは言え鳳九が望む婚姻であり、世に知れ渡ったからには反対もできなかった。 「でも問いたいそうです、娘にどんな未来を与えるおつもりかと…」 「…私に約束を求める気持ちは分かる、もちろん応じる、だが私の応じる約束は未来の話ではない この世は刻々と移り変わる、一寸先のことは私とて分からぬ 私に未来の約束を求められても、しかと答えられぬ 安泰な暮らしを与えられるかは分からぬ、だが小白には自由を与える 小白は快活だ、思うままに生きて欲しい、私が夫でいる限りは決して何も強制しない 何事も小白が好きに決めれば良い…」 白奕は白鳳九の縁談に同意した。 鳳九は東華帝君が父をどうやって説得したのか気になって仕方がない。 「私の故郷の碧海蒼霊で祝宴を行うと話した… 景色が美しく、そなたも身体を癒せる、ついでに子狐も産めば良い」 「またごまかして!」 その頃、天宮では成玉元君が東華帝君の武勇伝を披露していた。 「…その時、帝君は聶初寅の剣を断ち割り、分厚い鉄剣が真っ二つになった そして蒼何(ソウカ)剣の切っ先は聶初寅の胸元に〜 一瞬にして変幻自在の剣さばきで敵を追い詰めた!…」 そんな成玉の様子を見ていた連宋は嬉しそうだったが、司命星君(シメイセイクン)は眉をひそめた。 東華帝君が思いがけず鳳九を娶ることになり、これまで手が届かない存在だと諦めていた同輩の仙女たちは色めき立っているという。 すると司命星君が心配した通り、太晨宮では早速、知鶴(チカク)が騒ぎを起こしていた。 「義兄に会わせて!」 「公主、なぜ勝手に戻ったのですか?!帝君なら鳳九殿下と碧海蒼霊へ行かれました」 勝手に修行先から戻った知鶴は有無を言わせず太晨宮を追い出されてしまう。 その様子を姫蘅が見ていた。 思えばあの時、婚儀から逃げなければ自分が碧海蒼霊を見られたかもしれない。 姫蘅はやるせない思いを抱えながら、再発した秋水(シュスイ)の毒のせいで咳き込んだ。 東華帝君と白鳳九は美しい碧海蒼霊で2人だけの時間を過ごしていた。 「本当にきれいね~!美しいところなのに、なぜ住まないの?」 「私だけで住まうには広すぎる…」 「私が一緒よ?」 鳳九は思わず東華帝君の手を握りしめた。 すると鳳九は未来の2人の住まいを語り始める。 しかし東華帝君は″住まい″と聞いてふと複雑な顔になった。 「だって定住しなくても、ここも私たちの家よ?…何か間違えた?」 「私たちの家か…」 東華帝君は何とも鳳九が愛おしくなり、狐狸を撫でるように頰に触れた。 「誰より優しいのぉ」 「そうよ!ふふふ」 魔界では血涙を守っている結界にまたしても異変が現れた。 報告を受けた煦暘はすぐ禁忌の地に駆けつけ、独りで奮闘していた燕池悟に加勢する。 暗躍していた聶初寅は2人の力に対抗できず、そこで断念した。 「私の行動が知られたようです…煦暘は命も顧みず結界を守っています 守りは堅固ですし、燕池悟も来れば勝てません あなたが化身を使い煦暘を殺すには最後の機会です、さもないと東華帝君が来ます」 すると緲落は自分に考えがあると言った。 煦暘は聶初寅が緲落の手先だと断定した。 結界の中で異変が頻発するのは魔君の誰かが結界を動かしているとしか考えられず、しかも魔君が2人も失踪している。 そこに聶初寅がわざとらしく寝過ごしてしまったと言いながらやって来た。 煦暘は燕池悟に失踪した2人を探して来ると伝え、聶初寅に魔君としていかに責を果たすべきか教えてやれと嫌みを言う。 「私を疑っているようだな?ならば宮殿を調べてみるが良い」 「いいだろう、お前の侍衛を2名借りて宮殿を見に行く、それで疑いも晴れよう」 すると燕池悟が玄鉞(ゲンエツ)を呼んだ。 「俺の玄鉄(ゲンテツ)剣を持ち、煦暘の共をしろ、煦暘に無礼を働く妖魔がいれば斬り殺せ これは東華に対抗すべく7千の邪霊を吸わせた剣だ 今の魔界でこの剣より邪悪な妖魔がいるか見ものだな、聶初寅と残りの子分はここに残っていろ」 しかしそこへ太晨宮から使者が来たと知らせが届いた。 煦暘たちがひとまず赤広(セキコウ)殿に戻ると、東華帝君の側近・重霖(チョウリン)が待っていた。 実は碧海蒼霊で祝宴を行うため、赤魔君と燕魔君に招待状を持って来たという。 …東華帝君が碧海蒼霊を開くというのか?!… 聶初寅は驚いたが、煦暘はそこで重霖を見送るという口実で外へ出て行ってしまう。 「仙官、実は魔族の中に緲落の手先がいる…いつ結託し、どう接触をしているかは分からぬ 祝宴が終わったら来て欲しいと帝君に伝えてくれ、血涙を帝君に渡し、後顧の憂いを断ちたい …妹の姫蘅だが、九天にいるのだな?」 「はい、梵音谷の者と一緒に九天へ来ました」 「妹をよろしく頼む…」 一方、白鳳九は碧海蒼霊で東華帝君と穏やかな時間を過ごしていた。 すると東華帝君が重霖の鳥を見つけ、伝言を聞いて帰す。 「何と言ってたの?」 「重霖は…祝宴の招待状を配り終えた、準備があるゆえここに長居はできぬ」 「今日だけなのね〜」 鳳九は残念がったが、残りの時間を満喫することにした。 つづく (  ̄꒳ ̄)姫蘅と知鶴…最後にやらかすのはどっちだ?! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021.01.27 09:47:49
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