2021/06/10(木)19:43
天舞紀~トキメキ☆恋空書院~#23 あらすじ
天舞纪 Dance of the Sky Empire
第23話
兄と一緒に沙国へ帰ることにした雲杉(ウンサン)。
しかし愛する蕭鳳鳴(ショウホウメイ)のことを放っておけず、途中で馬車を降りてしまう。
御風穆(ギョフウボク)は危険だと反対したが、雲杉は何もできなくても鳳鳴のそばにいたいと訴えた。
「相手が蘇猶憐(ソユウレン)なら兄上もそうしていたはずよ?」
「…確かにそうだ、気をつけるんだぞ」
擎天城(ケイテンジョウ)では第二皇子・龍嶶児(リュウビジ)と鄭百年(テイハクネン)が刑場へ連行された。
嶶児は覚悟して頭を寝かせると、ついに執行人が刀を振り下ろす。
しかし李玄が仙術で刀を吹き飛ばし、霊力で一瞬のうちに執行台までたどり着いた。
「遅いぞ」
「待たせたな」
すると辺令誠(ヘンレイセイ)と封常青(ホウジョウセイ)が加勢、兵士らを足止めし、李玄たちが脱出したところで門を閉めた。
↓惚れてまうやろ〜な嶶児
第二皇子と李玄が逃げたと聞いた皇太子は激怒、配下たちを罰していた。
そこへ強引に雲杉が乗り込んで来る。
「大事な用があるんです!」
雲杉はいきなり鳳鳴が龍皇(リュウコウ)に乗っ取られていると訴えたが、皇太子はけんもほろろで取り付く島もない。
追い出された雲杉は仕方なく引き下がると、偶然、回廊で鳳鳴と出くわした。
龍皇の心魔は雲杉を自分の寝殿に引っ張って行った。
「鳳鳴の身体から離れなさい!さもなくば…さもなくば…あなたの正体を明かす!」
「それだけか?…なるほど愚鈍な男と無鉄砲な女、お似合いだな」
すると心魔は雲杉の首をつかみ締め上げた。
しかし鳳鳴の本人格が邪魔し、心魔は激しい頭痛に襲われてしまう。
たまりかねた心魔は雲杉を手放すと、衛兵に見張りを任せて出て行った。
皇太子は鳳鳴を親衛隊の隊長に任命、精鋭部隊を作って欲しいと頼んだ。
「そうだ、雲杉公主が私を訪ねて来てな
何でもそなたの身体があの龍皇に乗っ取られていると騒いでいたぞ?」
驚いた鳳鳴は信じたのかと確認したが、皇太子は嘘に決まっていると笑う。
「よく仕えてくれたら、私が玉座に就いた暁にはそなたにも見返りを…」
「必ずや力を尽くしましょう、太子殿下が天下を統べる日まで」
すると皇太子は第二皇子たちの件を鳳鳴に一任した。
その頃、李玄たちはすでに城外へ脱出していた。
すると嶶児は百年と共に沙国へ向かうという。
聞いたところ沙国にも聖石があり、蘇猶憐の手に渡るのを阻止するつもりだ。
「お前も自分の生い立ちを知りたいだろう?聖石がその助けになるかも…」
「なぜそう言えるんだ?」
「史料に書いてあった」
「もういいんだ、過去を知ったところで俺の父親は戻って来ない」
嶶児は無理強いするつもりはないとあきらめ、恩人に感謝して出発することにした。
しかし李玄はどちらにしても居場所がないと気づき、一緒に行くと決める。
令誠はもちろん常青と一緒に沙国へ行くと言ったが、李玄に止められた。
「ついてくるな、お前たちのためだ」
分別のある常青は令誠を諦めさせ、今の少爺ならひとりでも十分、戦えると安心させる。
「戻って来たらまた会おう」
こうして李玄たちも一路、沙国を目指した。
風穆たちは什葉(ジュウヨウ)城へ入った。
沙国も以前は華やかな街だったが、今はすっかり寂れている。
実は10年前に人族が昆吾族に勝利した時、天啓(テンケイ)国が沙国の併合を企んだ。
当時の沙国国王が交渉して併合は免れたものの、その代わり沙国は国境の警備を解いて天啓の兵士の出入りを認めるという不平等な取り決めを飲んでしまう。
猶憐は沙国の民たちも昆吾のように天啓の兵士に迫害されている現状を目の当たりにし、胸が痛んだ。
↓これから収穫です
風穆たちが酒楼でひと休みしていると、天啓の兵士たちが我が物顔でやって来た。
すると高貴な風穆が目に付き、兵士が難癖を付けて来る。
しかしそこへ沙国の将軍・賀雄飛(ガユウヒ)が配下と共に駆けつけ、王子に無礼を働いた天啓の兵士たちを捕らえた。
「王子殿下!遅くなりました」
店主や客たちはその人こそ沙国王子だと知り、一斉にひざまずいて助けを求めた。
天啓の兵士たちは金を奪って人を殴り、まるでただの強盗だという。
もはや我慢の限界、風穆は決断し、賀将軍に兵を集めて警備を固めろと命じた。
「天啓の兵士を国境内に入れるな!…沙国を侵犯する者は殺せっ!」
風穆は先代国王が結んだ天啓との取り決めを一方的に破棄した。
当然、天啓も黙ってはいないはず、しかし今の天啓に沙国をかまっている余裕はないだろう。
龍皇の脅威に加え、帝位継承の争いも激化、しかも蕭鳳鳴がさらに混乱を生み出したのだ。
「早く聖石を猶憐に渡し、龍皇を覚醒させねばならない、そうすれば我が沙国は完全に救われる」
話を聞いた疤頭(バトウ)は王子が全て計算済みだったと気づき、安堵のため息を漏らした。
一方、李玄たちは川辺で一夜を過ごすことになった。
李玄はひとり離れて土笛を吹いていたが、そこへ嶶児がやって来る。
「考え事か?」
「ふっ…俺のせいでお前の命まで脅かされた」
「確かに、こうなるとは思わなかった」
「残念だったな、後悔してももう遅い」
「知っていたとしてもお前を助けた…私たちは仲間だろう?」
李玄と嶶児は思わず失笑したが、そんな二人の姿を百年は複雑そうに見ていた。
李玄が眠りにつくと、嶶児は百年に薬を渡すよう命じた。
皇帝から見放された今、もはや女であることを隠す必要はない。
「もう疲れたんだ…百年、薬を渡せ」
第二皇子の命では百年も拒むことができず、しぶしぶ薬を差し出した。
「李玄のためなのでは?」
「なんだと!お前に何が分かると言うんだ?!」
「…配下がお詫びを」
嶶児は李玄の隣で眠ることにした。
ふと横を向いて李玄の寝顔を見つめてしまう嶶児、すると急に李玄が手を伸ばし、嶶児の指に触れる。
嶶児は驚いて手を引っ込めたが、今度は自分から手を伸ばして李玄の指に触れた。
翌朝、李玄が目を覚ますと嶶児と百年の姿がなかった。
馬が繋いであるなら遠くへは行っていないはず、そこで山に入って探してみると、偶然、水浴びをしている女子を発見する。
李玄は目のやり場に困ったが、はたと龍嶶児だと気づいた。
「あの背中…本物の女にしか見えないな~」
妙に感心する李玄、その時、嶶児がちょうど腕を上げ、赤い蝶のあざがあらわになる。
…あの印は…
それは氷血(ヒョウケツ)の聖域で天書(テンショ)仙人が号泣しながら見ていた悲運な赤子の腕にあったあざと同じだった。
…まさかあの赤子だったのか、いや待て、龍嶶児は男だぞ?…
すると大蛇が背後から嶶児に近づいて行くのが見える。
李玄は咄嗟に飛び出して仙術で蛇を吹き飛ばしたが、真上から見下ろした嶶児の身体は確かに女子だった。
↓うっそ〜ん…バッシャーン!
李玄は嶶児の正体を知り、驚いてそのまま川に落ちた。
衣を乾かしながら何と切り出して良いか分からない李玄、すると嶶児は聞きたいことがあるなら遠慮なく言えという。
「なぜ女なのに男のふりを?」
「18年前のことだ、ある占い師が天啓の皇帝に進言した、″公主が生まれれば災いをもたらす″と…」
あの日、謝貴妃は自分が出産したのが娘だと聞いて動揺した。
そこで娘を嬷嬷(モーモー)に託し、宮中から脱出して謝府に逃げ込むよう命じる。
その夜は激しい雨となった。
公主を預かった男は人けのない大街で追っ手に囲まれたが、ぎりぎりのところで公主を守り切る。
つづく