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カテゴリ:山河令 全36話
※原作はBL作品ですが当ブログでは非対応です
山河令 Word of Honor 第9話「高山流水」 岳陽(ガクヨウ)派を訪ねた周絮(ジョウシュー)と温客行(ウェンコーシン)。 そこへちょうど方不知(ファンブージー)の遺体が運び込まれて来た。 高崇(ガオチョン)は遺体に残っていた毒針を発見したが、この暗器の使い手が誰か分からない。 しかし周絮は知っていた。 これは天窗(テンソウ)独自の暗器・雨打芭蕉針(ウダバショウシン)、さすが韓英(ハンイン)、仕事が速い。 …つまり方不知が盗んだ老温(ラオウェン)の琉璃甲(ルリコウ)は天窗に渡ったのか… 周絮と温客行はここでひとまずおいとまし、英雄大会での再会を約束して帰って行った。 顧湘(グーシアン)が酒楼で清風(セイフウ)剣派・曹蔚寧(ツァオウェイニン)と食事していると、流しに成り済ました侍女・紅露(ホンルー)が現れた。 「あ!この前、私が助けた流しの娘かも?!話して来る!」 顧湘は嘘をついて席を離れ、紅露の元へ向かった。 「連れがいて間が悪いわ、まず情報収集を…私が任務を果たしたら曲を頼むから主人の居所を教えて」 「了解」 その夜、温客行は周絮の部屋に押しかけ、給仕に豪勢な料理を運ばせた。 「どれも美味そうだろう?」 しかし周絮は匂いが分からず、ついに五感が衰え始めたことに気づく。 何やら思い詰めた様子の周絮、温客行はまた張成嶺(ジャンチョンリン)のことだろうと思った。 「成嶺を一度、救ったからと言って一生、守るつもりか?…一生の絆など存在せぬ」 温客行はふと幼い頃を思い出した。 「大切な人から犬をもらった その時、母から″犬が仕える主はただ1人、飼うなら一生を請け負え″と言われたよ 8歳の子供に一生なんて分かるはずないだろう?二つ返事で承諾したさ それから…結局、私は犬を裏切った」 その時、周絮が老温の腕に手を置いた。 「ままならぬ世だ…だが悔いは残すな」 周絮が初めて見せた親密な行動、すると突然、その手で思い切り温客行の腕を叩いた。 「何するんだ?」 「犬のたとえは低俗すぎると思わぬのか!」 温客行は思わず吹き出し、その夜は楽しい酒になった。 子の刻、周絮は激しい耳鳴りに襲われた。 いつものように気を集中して発作が治まるのを待つ周絮、すると温客行の部屋から簫の音が聞こえて来る。 周絮はそのお陰で内力が高まり、気がつくと熟睡していた。 「まだ寝ているのか?!外は明るいぞ!起きろ!」 翌朝、温客行は周絮を叩き起こし、強引に悦樊(エツハン)楼へ連れ出した。 悦樊楼は風光明媚な湖畔にあり、岳陽城で最も美しい場所と称賛されていた。 高楼から絶景を楽しむ周絮と温客行、すると周絮が船にいる″安吉(アンキツ)四賢″を見つける。 「何者だ?」 「江湖には珍しく清廉潔白で4人とも音楽に秀でるが、その背景は大いに異なる しかし意気投合して知音となり、江湖を退いて安吉の美しい竹林に隠居したんだ 俗世を離れて十数年になるかな…」 四賢のうち2人は同門で夫婦、もう1人は書生で琴の演奏に長けていた。 剣舞を披露するのは大盗賊として名を馳せた賀一凡(ホーイーファン)、悪に染まったが心は清らかで3人に感化を受けて立ち直り、山林に隠居したという。 「高山流水(※)の故事さながらだな」 「高山流水か…知音は得難い」 温客行はしみじみそう言った。 「″知己に遭えば山河も重からず″」 周絮はその一節に残り短い自分の人生を重ねた。 安吉四賢のように知己と江湖をさすらい、無為に余生を送れたらどんなに幸せだろうか。 …執念は捨てよう、このままでも一生を無駄にするよりマシだ… 武芸の基礎がない張成嶺はまだ幼い岳陽派の弟子たちの稽古に参加した。 しかし指導する祝邀之(ジューヤオジー)から目の敵にされてしまう。 孤独に苛まれながら居所へ戻る成嶺、すると思いがけず中庭で顧湘と出くわした。 「湘姐姐!ゥッ…師父にもみんなにももう会えないと思ってた…」 「ふふ、2人はあなたを守るため私を送り込んだのよ?」 その夜、温客行が酒を持って周絮の部屋に現れた。 「何だ、また飲むのか?」 「どうせ子の刻は眠れないのだろう?」 周絮は子の刻のことを揶揄され気まずかったが、温客行はそれ以上、何も言わなかった。 「知っているか?今夜の月は美しいぞ?月を肴に酌み交わそうではないか」 そこで2人は屋根の上で飲み始めたが、やがて静寂を破って剣戟(ケンゲキ)の音が聞こえて来る。 「興ざめだな…」 周絮は通りで戦う2人を見下ろして顔をしかめたが、温客行は嬉しそうに笑った。 「やっと面白い芝居が始まった…さあ、見物に行こう!」 人けのない大街に毒蝎(ドクサソリ)の四大刺客・魅曲秦松(ミキョクシンショウ)の魔音が響いた。 また裏道では鬼谷十大悪鬼・無常鬼(ムジョウキ)が配下の黒無常・白無常と一緒に暗躍している。 周絮と温客行は廃家で相討ちとなった2人を発見、中庭に降り立った。 死んでいたのは独眼侠の蒋徹(ジアンチョー)と狂風刀の李衡(リーホン)、すると李衡の手に琉璃甲がある。 周絮は驚いた。 温客行の琉璃甲は韓英が手に入れたはず、なぜ李衡の手に渡ったのか。 同じ頃、韓英も困惑していた。 方不知から2つの琉璃甲を手に入れたが、なぜ2つとも同じ形なのか。 周絮は琉璃甲を見せびらかしてわざと災いをもたらした温客行を非難した。 しかし当の本人は悪びれる様子もなく、凡人たちの自業自得だと笑う。 「お前は奇人を装っているとばかり…まさか本当に正気を失っていたとは…」 周絮は何とも哀れな目で温客行を目で見ると、独りで宿へ戻ってしまう。 翌朝、温客行は気を取り直して阿絮に朝食を差し入れることにした。 しかし部屋はもぬけの殻、どうやら本気で怒らせてしまったのだろうか。 一方、五湖盟の掌門たちも昨夜、琉璃甲の奪い合いで岳陽城内に多くの血が流れたと知った。 回収されたのは偽物の琉璃甲3個、高崇(ガオチョン)は英雄大会を目前に五湖盟の面目が丸潰れだと嘆く。 そんな騒ぎの中、行方知れずになっていた大弟子・鄧寛(ドンクワン)が満身創痍で岳陽派に戻って来た。 高小怜(ガオシャオリエン)は昏睡状態に陥った大師兄のそばを離れず、悲しみに暮れる。 「早く目を覚まして…あなたが姿を消した後、父は白髪が増えたのよ…ゥッ…」 地下牢では生首事件で捕まえた男2人が拷問にかけられていた。 それでも2人は白状せず、どこか感情がないように見える。 すると今度は仁義(ジンギ)坊で事件が勃発した。 琉璃甲が偽物だと知らず殺気立つ武林、清廉潔白と言われる安吉四賢も例外なく渦中に巻き込まれた。 琉璃甲を持っていた四賢は各門派に追われ、仁義坊へ逃げ込むも袋の鼠になってしまう。 すると深手を負った裴(ペイ)長兄が夫人に琉璃甲を託し、高崇に渡すよう頼んで息絶えた。 その頃、前庭では琉璃甲を巡って丐幇(カイホウ)や華山(カザン)派が言い争いになっていた。 すると急に封暁峰(フォンシャオフォン)というならず者が口を挟む。 「琉璃甲を持っていたのは傲崍子(アオライズー)だ 周知の通り傲崍子は鬼谷に殺され、琉璃甲は安吉四″愚″に渡った!鬼谷の犬め!」 封暁峰は鉄玉を放ったが、賀一凡は見事に刀で弾き飛ばした。 しかし刀に当たった1つが砕け、仕込まれていた毒で両目を潰されてしまう。 桃紅(タオホン)は卑怯にも毒弾を使ったならず者に激怒、恥知らずと罵った。 「丐幇、華山、崆峒(コウドウ)には大義名分がある、武庫に独自の奥義書が入っているからね! お前はどこの馬の骨とも知れず、名前も聞いたことがない、失せな!消えるんだ!」 「何を?!高山奴(ガオシャンヌー)、始末しちまえ!」 その時、高崇率いる岳陽派が駆けつけた。 岳陽派がなだれ込んだ隙に封暁峰たちは逃げ出した。 すると毒のせいで錯乱した賀一凡が誤って裴夫人に一撃を与え、外へ吹き飛ばしてしまう。 裴夫人はそのまま絶命、そこへ賀一凡が飛び出し、暴れ始めた。 咄嗟に桃紅と緑柳(リューリゥ)夫婦が賀一凡を止めることに成功したが、そのままとどめを刺してしまう。 独り残された杜(ドゥー)二兄が剣を片手に琴を抱えて出てきた。 「15年、隠居して悩みなど忘れていた 15年に及ぶ友情がこんな物のために跡形もなく消えてしまうとは… 高盟主、我ら4人は山林で人生を終えるつもりだった 昔のよしみで下山し、英雄大会に赴いたが、まさか想像だにしなかった お前と友情を結んだばかりに岳陽城で絶命する羽目になろうとは…」 その様子を外から温客行が見ていた。 「裴大哥はお前のために琉璃甲を奪った…そんな価値があったと?!」 高崇は必ずや正義を回復してみせると訴えたが、杜二兄は琴を投げ捨て、自害してしまう。 …我が知音は世を去った、琴など無用!… 長老・黄鶴(ホアンホー)は焦って四賢の死に丐幇は関わっていないと釈明した。 怒りのやり場がない高崇は偽物の琉璃甲を取り出し、そんなに欲しいなら持っていけと投げ捨てる。 「1個では足りぬか?…もう1個やろう!ふんっ!」 すると高崇は7月15日の英雄大会で琉璃甲について全てを説明すると宣言、丐幇との諍いは大会後に決着をつけると言って引き上げた。 黄鶴は琉璃甲を拾って確かめたが、ようやく偽物に振り回されていたと知る。 一方、一部始終を見ていた温客行は四賢の壮絶な結末を目の当たりにし、呆然と立ちすくんでいた。 つづく ※高山流水(コウザンリュウスイ) 琴の名手であった伯牙が琴を奏でると親友の鍾子期がそれを感じとったという故事から、絶妙の演奏、または知己(知音)のこと お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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