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カテゴリ:斛珠夫人~真珠の涙~全48話
斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse 第10話「それぞれの転機」 皇帝を怒らせた淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)はその夜から南宮に軟禁された。 荒れ果てた屋敷を見た侍女・碧紫(ヘキシ)と碧紅(ヘキコウ)は幽霊の住処のようだと怯えたが、緹蘭はこの静けさがむしろ心地よいという。 「愈安(ユアン)宮のように身をすくませて過ごすことも、陛下に会うこともない…桃源郷よ」 緹蘭は確かに王宮で育ったが、決して贅沢な生活ではなかった。 一方、正式に世襲を認められた方鑑明(ホウカンメイ)は清海(セイカイ)公の爵位を取り戻した。 霽風(セイフウ)館も昭明宮へ移ることになり片付けが終わったが、療養中だった方海市(ホウカイシ)の部屋だけ着手できずにいる。 陳哨子(チンショウシ)は小公子が回復したので片付けさせるか尋ねたが、鑑明は必要ないと言った。 「私に考えがある…」 海市は師匠が自分だけ置いて行くつもりだと気づいていた。 すると鑑明は海市がもう大人になり、男だらけの昭明宮に移るのは何かと不都合になるという。 「不都合とは何ですか?!…私は一生、師父や師兄のそばにいます!」 しかし鑑明はいずれ海市も任務から外れて女子に戻る日がくると諭した。 「話は終わりだ、下がれ…」 綾錦司(リョウキンシ)では典衣・鞠七七(キクシツシツ)が刺繍に没頭していた。 何日も寝ていない叔母を心配して付き添う鞠柘榴(キクシャリュウ)、するとついに刺繍が完成する。 一方、朝議を終えた旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は鑑明を連れて書斎に向かっていた。 「荷を運び入れたのになぜ越して来ない?」 「やはり分不相応ですし、不都合も多々生じます」 しかし褚仲旭は堂々と越して来いという。 すると回廊で鞠七七と柘榴が待っていた。 鞠七七は清海公が朝廷に復帰した祝いとして皇帝に刺繍を献上し下がった。 顔色ひとつ変えない鑑明だったが、褚仲旭は七七が綿の花の刺繍を贈って来た理由を知っている。 実は方家の故郷・流觴(リュウショウ)では嫁入り道具の中に花嫁が刺繍した綿の花の枕掛けを用意する風習があった。 綿の花には花嫁が夫と共に風雨に耐え、生涯、愛を貫くという意味がある。 「そうでしたか?」 「アイヤー、七七は朕とお前に訴えているのだろう?…腹をくくれ」 「…他にお話がなければ失礼します」 海市がひとり霽風館で不貞腐れていると方卓英(ホウタクエイ)が帰って来た。 「海市!殿選で3位だって?!明日の参内で殿中郎に封じられるな 今後は街を歩くと大変だぞ?美女たちが放っておかない、憧れの的だからな」 それにしても蘇鳴(ソメイ)も卑怯なことをする。 師匠に刺客を送り、武挙で海市に毒を使うとは…。 海市は師匠が無事ならそれでいいと話し、卓英が持ち帰った母の差し入れに喜んだ。 しかしふと自分だけ皇宮に引っ越せないことを思い出し、意気消沈してしまう。 「なんだって?!だめだ!お前がいなきゃつまらん!」 「哥!掟を忘れたのか?師父の言葉は絶対だ」 「いつも逆らってたくせに~」 「でも師父は恩人だし、それに…迷惑をかけてばかりだったから…」 その夜、卓英は師匠に越州での引き継ぎが終わったと報告した。 「師父…あえて海市を連れて行かぬのですか?」 鑑明は黙っていたが、卓英はせめて海市が傷つかないよう説明してやって欲しいと訴える。 しかし鑑明は決して自分の本心を明かせなかった。 …男ばかりの中では不都合が生じる …不都合って何ですか?!私は一生、師父や師兄のそばにいたい! 鞠柘榴は綾錦司の中庭でひとり、目隠しをしながら刺繍を修練していた。 そこで卓英は屋根からそっと飛び降りたが、柘榴はわずかな足音も聞き逃さず、″風神様″が来たと気づく。 しかし何事もなかったかのように刺繍を続けた。 卓英はそっと柘榴に近づき、海市の母にもらった真珠の腕輪を布に乗せる。 すると腕輪は布を滑り落ち、柘榴の手元へ届いた。 柘榴は驚いて腕輪を手探りで確認、思い切って目隠しを外したが、すでに″風神様″の姿はない。 朝廷に復帰した鑑明は左衛にこもりきりだった。 暇を持て余した褚仲旭は堤防決壊の件で諫言してきた大臣を呼んだが、結局、ただの受け売りで浅慮だと分かる。 仕方なく宮中を散策しながら穆徳慶(ボクトクケイ)に愚痴をこぼしていると、やがて侘しい南宮が見えた。 褚仲旭が南宮に入ってみると、前庭は綺麗に掃除され、どこからともなく琵琶の音が聞こえていた。 「穆徳慶?…自省のための幽閉のはずが、お前はのどかな別邸を用意してやったのか?」 すると簡素な殿内で緹蘭が琵琶を弾いていた。 「古い琵琶だ、今では滅多に見ない、宮中でも弾ける者はごくわずかだ」 「(はっ)お越しと知らず無礼を…すぐ衣を整えて参ります」 しかし褚仲旭は今さら礼について考えても遅いと嫌味をいう。 その時、机の上に彫りかけの龍尾神(リュウビシン)を見つけた。 褚仲旭は大方、黄泉営の湯乾自(トウカンジ)か方海市の平穏無事を祈って彫っているのだろうと難癖をつけたが、緹蘭は自分のためだと否定する。 「身分が低かった生母に言い聞かされてきました… 自分自身を見つめ、身の程をわきまえ、人の助けを当てにせず、自分の身は自分で守れと…」 「…朕も庶出だ、亡き生母はひたすら耐え忍べと言った、だが耐えるだけでは駄目だとのちに悟った」 褚仲旭は緹蘭と思わぬ共通点があることを知り、皇子だった頃の屈辱を思い出した。 「陛下?」 「(はっ)…紫簪(シサン)は出征する兵たちのために形代(カタシロ)を彫り、兵らの無事を祈った 紫簪にならい、3万の新兵一人一人に龍尾神を彫ってやれ」 驚いた侍女たちは無茶だと訴えたが、緹蘭は拝命した。 「…朕を喜ばせるためなら紫簪を演じると申したな?よく覚えておけ 紫簪亡き今、朕が喜ぶことは未来永劫、起こりえぬ」 鑑明は政務を理由に遅くまで霽風館に戻らなかったが、本当は海市と顔を合わせづらかった。 いよいよ明日は海市が皇帝に拝謁し、殿中郎として挨拶する。 海市は今夜も師匠の帰りを待ちわびていたが、結局、参内用の衣装が届いただけだった。 翌朝、海市は参内までの時間、街に買い物に出た。 そこで如意坊で玉飾りを選ぶ。 「これと…あとこれを」 「お目が高い!この白玉は天啓に1つしかありません」 するとどこかの令嬢が店に入って来た。 ヒソヒソ(*´・д・)(・д・`*)<あの方、長兄と一緒に武挙に出ていた方海市よ! (」゚ロ゚)」<みなさ~ん!方公子よ~! キィャア~!>ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ )))))┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨・・・! 今や有名人となった海市はあっという間に娘たちに囲まれ、2つ目の佩玉を受け取る間もなく逃げ出してしまう。 周幼度(シュウヨウド)は友人の裁縫鋪にやって来た。 するとちょうど店から飛び出して来た美しい海市に目を奪われてしまう。 「おう幼度!…ああ~残念だがあれは男だぞ?買ったばかりの女の衣に着替えてさっさと出て行った」 「男だと?…全くお前ときたら、見る目がないな」 海市は面倒から解放され、山査子(サンザシ)を食べながら歩いていた。 すると突然、卓英が現れる。 「哥の言葉通りになって散々な目に遭ったよ」 「参内の時間を間違えて伝えていたそうだ、お前は巳の時1刻に参内せねばならぬ」 「え?!でも衣が…」 結局、海市は紫宸殿に現れなかった。 鑑明は仕方なく毒の後遺症なのか急に具合が悪くなったと取り繕う。 こうして海市は不在のまま、卓一凡(タクイツハン)と共に北府軍の殿中郎に封じられた。 海市は参内の時間に間に合わないと分かり、諦めて卓英と酒楼にいた。 「遅れたから行かぬとは…無礼も甚だしいな」 「最近、私はついていない、万事そつない霽風館の使用人が重要な刻限を誤るなんて… この姿も私の過ちに数えられるな…叱られたくないから師父が眠った頃に帰る」 しかしその時、店に師匠が入って来た。 卓英はすぐ気づいたが、背を向けている海市はうっかり口を滑らせてしまう。 「師父の瞳はまるで黒曜石のようだ、冷え冷えとした光を放ち、一瞬で光を奪う 師父に近づきたくても遠くから敬慕するしかない、こたびの大失態でますます遠ざけられるな…」 (Ŏ艸Ŏ).oO(ハイシー…後ろ後ろ! 「あ~分かってる、師父に叱られたんだろう?…昭明宮のことはもう口にするな」 (  ̄꒳ ̄)<誰が叱っただと? ヒイィィィ!!(゚ロ゚ノ)ノ<師父!…面壁します! 「…すぐ荷物をまとめなさい」 あれ?(´・д・)(・д・`)え? 「お前を独りにするわけにいかぬ…昭明宮に越せ」 「ほえ~(はっ!)謝謝、師父!」 外は雨になった。 3人は軒下で雨宿りしていたが、海市の荷物を持っていた卓英がうっかり化粧箱を落としてしまう。 「あ、それは哥に贈る玉だ」 「私に?!」 卓英は早速、玉を出して喜んだが、鑑明は面白くない。 「私がいては気詰まりだろう」 はっ?(´・д・)(・д・`)まさか?!師父 海市は確かに掟を持ち出されると窮屈だが当然のこと、師匠の教えをいつも胸に刻んでいると言った。 「ところで海市、師父の分は?」 「あ?…買わなかった、師父にふさわしい品は街では見つからない」 「何だって?!…誕生日までには準備しておけよ!」 鑑明は居たたまれなくなり、自分はいらないと言って歩き出してしまう。 無神経な卓英に怒り心頭の海市、しかし卓英は何が悪いのか分からなかった。 雨はすぐに止んだ。 卓英は微妙な雰囲気を察し、前を歩く師匠に聞こえるよう海市に大きな声で話しかける。 「越してからしばらく別々に過ごそう、だが様子を見てまた3人で一緒に住めばいいさ!」 つづく (  ̄꒳ ̄)師父ったら… まあ~卓英は悪くないんだけど、いるよね、こういう間の悪いタイプw お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.07.30 22:53:25
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