2022/08/27(土)21:11
斛珠夫人~真珠の涙~ #18 あらすじ
斛珠夫人 Novoland:Pearl Eclipse
第18話「紅薬帝姫の令牌」
その夜、蘇鳴(ソメイ)の刺客・呉奇(ゴキ)は蘭茲(ランシ)から護送された間者を始末しようとしていた。
しかし牢の中はもぬけの殻、罠だと気づいた呉奇は撤退したが、待ち伏せしていた陳哨子(チンショウシ)たちに囲まれてしまう。
「待っていたぞ、清海(セイカイ)公の読み通りだ」
すると追い詰められた呉奇は自分の主が鞠七七(キクシツシツ)だと言い残し、配下を道連れに自害した。
「…まずい!」
陳哨子は慌てて綾錦司(リョウキンシ)に向かった。
するとすでに息絶えた鞠七七と繍女たちを発見する。
報告を受けた旭(キョク)帝・褚仲旭(チョチュウキョク)は激怒、まさか間者が自分の膝元にまで手を伸ばして来るとは予想外だった。
「刺客の頭領の名は呉奇、大勢の刺客を束ねており、綾錦司に盛られた毒と同じ毒で自害しました
しかし女官の1人は毒の量が少なく、一命を取り留めています
回復すれば証言を得られるでしょう」
褚仲旭はともかく呉奇以外の刺客がいないか探し出すよう命じ、陳哨子を下げた。
「鑑明(カンメイ)よ…やはりあの時、始末すべきだったな」
一方、方海市(ホウハイシー)は迦満(カマン)皇族の聖薬と方鑑明の献身的な介抱でついに目を覚ました。
するとそばに師匠の姿がある。
「目が覚めたか?!」
「師父…後悔していません」
「何の話だ?」
「眠っている時に師父の声が聞こえました…″出会ったことを後悔するか″と…
師父との出会いは私の人生の中で奇跡に近い出来事、後悔などするはずありません
今までもこれからも…出会えて良かった」
鑑明は海市への想いを悟られまいと平静を装いながら、自然と口角が上がってしまう。
その頃、方卓英(ホウタクエイ)は蘇鳴(ソメイ)が道中で部隊と別れ、腹心だけを連れて殤(ショウ)州へ向かったと突き止めていた。
太監たちは穆徳慶(ボクトクケイ)に命じられ、額装した凧を金城宮(キンジョウキュウ)に運んでいた。
すると北小苑(ホクショウエン)で碧紅(ヘキコウ)が立ちはだかり、これは愈安(ユアン)宮のものだと訴える。
そこへ侍女がもめていると知らせを聞いた淑容(シュクヨウ)妃・緹蘭(テイラン)が駆けつけた。
緹蘭は騒ぎを避けるため自分の凧ではないと嘘をついたが、運悪く皇帝が通りかかる。
「何を騒いでおる?…皆こちらへ」
褚仲旭は例の凧が実は緹蘭の物だと知り、偶然、拾ったと言い訳した。
「これはもらっておく…久しぶりに会ったな、後日、金城宮で詩でも教えてもらおう」
方鑑明は常服に着替えて市場へ出かけた。
ちょうど露店で貴重な赤砂糖を見つけて買うことにしたが、そこへ海市がやって来る。
海市は苦い薬を飲まされる自分のために師匠が砂糖を買いに行きたと分かっていた。
そこで海市は砂糖を横取りして自分で銭を払うと、鑑明の手を握りしめて引っ張って行く。
「いつまで手を握っている?…そんな薄着では風邪を引くぞ?ほら見ろ、手が冷たい」
すると今度は鑑明が海市の手を引いた。
方鑑明は海市に露店で見つけた紅薬原(コウヤクゲン)産の雪狐の毛皮を買って着せた。
「似合いますか?」
「暖かそうだ」
海市は思わず失笑し、師匠の一言で簡単に嬉しくなってしまう自分がおかしいという。
「今日も付き添ってくれますか?…実は贈り物が」
「何だ?」
「秘密です」
その夜、海市は城主府に残っていた婚礼用の美しいロウソクを灯した。
そこへちょうど師匠がやって来る。
「ロウソクが贈り物か?」
「毎日、暗い部屋でお努めされているので、目が悪くなると思って…」
「…赤いロウソクの意味を知らぬのか?」
「意味ですか?…お気に召さなければ消します」
「ふっ…もう休みなさい」
すると鑑明は小さなロウソクと赤い大きなロウソクを並べ、読み物を始めた。
翌朝、張承謙(チョウショウケン)がようやく報告に戻って来た。
「蘇鳴は瀚州の北に逃げました、阻止できず申し訳ありません」
やはり奇襲の知らせが滞ったのも蘇鳴の仕業、どうやら以前から鵠庫(コクコ)左部と通じていたらしい。
張承謙は大公子1人では危険だと心配し、実は蘇鳴の刺客が鞠七七の名を残して自害し、鞠七七も毒殺されたと報告した。
「何だと?!」
衝撃を受けた方鑑明は古傷の痛みに顔を歪めたが、海市の耳には入れないよう釘を刺す。
すると黄泉営の符義(フギ)が皇帝からの勅命を届けにやって来た。
…至急、戻れ…
方鑑明は帰京を伝えるため海市の部屋に戻った。
しかし綾錦司の一件を聞いていた海市は師匠が皇宮へ戻ると気づいている。
「私の分も焼香を頼めますか?…元気を出してください」
海市は師匠を煩わせないよう大人しく静養すると約束した。
「またしばらくの間、会えなくなるだろう」
「…平気です、離れていても心の中ではすぐそばにいますから
今までは師父が怖かった、叱られて嫌われるのが怖くて近づく勇気がなかったんです
でも今は違います、どれだけ離れていても師父の元へ飛んで行きます!」
深い絆で結ばれた鑑明と海市、海市は城楼で師父を見送りながら、思い出の玉板指を握りしめた。
もはやここでゆっくり休んでいる時間はない。
海市は師匠が安心して努めを果たせるよう、一刻も早く軍営に戻って黄泉関を守ろうと決めた。
一方、蘇鳴は都の呉奇たちが全滅し、始末できたのが鞠七七だけだと知った。
鵠庫左部まではあと30里、左菩敦(サホトン)王が迎えを出してくれたという。
「あと半日もあれば休めるな…」
蘇鳴はようやく安心したが、その時、蘇鳴を追って来た方卓英が現れた。
「長い間、霽風(セイフウ)館を目の敵にし、我らを陥れることに必死だったようだが、
将軍にも落ちぶれる日が来ようとはな…
将軍、私と共に戻るか、それともここで殺されたいか?」
すると腹心たちは蘇鳴を逃がし、一斉に卓英に襲いかかった。
方卓英は次々と腹心たちを切り捨て、蘇鳴を追跡した。
しかしあと一歩のところで蘇鳴を迎えに来た左菩敦王の一行が現れる。
すると奪洛(ダツラク)は蘇鳴が追われていると気づき、2本の矢をつがえて敵に放った。
卓英は1本目の矢を剣で避けたが、続け様に飛んできた2本目の矢で仮面が吹き飛ばされてしまう。
方卓英の顔を見た奪洛は自分と瓜二つだと気づいて呆然となった。
左部と合流した蘇鳴も方卓英とそっくりな男が左菩敦王だと知って困惑する。
対峙する卓英と奪洛、すると奪洛は配下に殺せと命じた。
兵士たちは一斉に矢を構えたが、その時、卓英が懐から出した令牌を掲げる。
紅薬帝姫の令牌だ!>ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ<ザワザワ…
驚いた兵士たちは攻撃体制を解除、すると卓英はその間に引き返して行った。
「チッ…蘇鳴、あの男は何者だ?」
「霽風館・方鑑明の一番弟子・方卓英です」
蘇鳴が鵠庫左部に寝返った。
しかし頼みの綱である方鑑明はまだ帰途にいるという。
頭の痛い褚仲旭はその夜、緹蘭を寝宮へ呼んだ。
「凧はそこに飾ったぞ…そなたの声は心地よい、代わりに上奏文を読んでくれ」
緹蘭は政への干渉が死罪になると辞退したが、褚仲旭は今さら何を恐れるのかと挑発した。
「…分かりました、読みます」
上奏文を読んでも読まなくても結局は皇帝の気分次第で死罪になる。
緹蘭は明君なら自分を死罪にしないはずだと口を滑らせた。
「つまりお前を殺せば名君ではないと?…口は達者だな、では読んでくれ」
方卓英は都での一件を知り、昼夜を問わず馬を走らせ戻った。
すると定和門に陳哨子の姿を見つける。
「綾錦司で何があったのですか?!全員が死んだと?!」
陳哨子が何も答えられずにいると、卓英は急いで宮中へ向かった。
方卓英は宮道で偶然にも叔母の遺骨を抱いた鞠柘榴(キクシリュウ)の姿を見つけた。
想い人の無事を知って安堵する卓英、しかし柘榴の様子がおかしい。
「方大人(ダーレン)…」
すると付き添いの蘇姨(ソイ)が拝礼し、目が不自由なため柘榴の無礼を許して欲しいと言った。
卓英は柘榴の美しい瞳に自分が映っていないと知り呆然、ようやく声を絞り出す。
「…柘、柘榴姑娘、どうか元気を出して」
「ありがとうございます…方大人、姑姑の初七日を控えて喪中の身です
先を急ぎますので無礼をお許し下さい」
方卓英は鞠柘榴が心配で様子を見に行った。
誰もいなくなった綾錦司に独り、柘榴は叔母の遺骨に手巾をかけている。
「姑姑、陛下のお許しが出ましたよ、流觴(リュウショウ)へ帰りましょう
姑姑が大好きな木綿の花を刺繍してみました、寒くないようにこれで包んであげますからね…」
柘榴は気丈にも綾錦司を再興させて見せると誓ったが、ついにこらえられなくなって泣き崩れた。
「姑姑…私はもう孝行できません…どうかあの世で幸せに暮らしてください」
卓英は想い人に寄り添い抱きしめることも叶わず、嗚咽が漏れないよう口を押さえていた。
つづく
( ;∀;)ぁぁぁぁ___そんなぁぁぁぁ___ウマーが(ってそっち?w)
何だかもう皇帝と師匠はどうでもよくなってきたw