読書百遍
元実家に滞在中の夜は長い。食事も簡素だから片付け物も少なくすぐ終わる。テレビ等の娯楽もないので、風呂に入ればあとは歯を磨いて寝るしかない。なかなか寝付けないので薬を飲んで寝るのだけれど、やっぱり夜中に何度も起きてしまう。仕方がないので、処分するためにまとめておいた本の中から一冊選んで寝床まで持ってきた。シャーロック・ホームズの冒険。子供の頃の方が海外の本をよく読んだ気がする。赤毛のアンに始まり、若草物語や大草原の小さな家、ハックルベリー・フィンや海底2万マイル。わくわくしながら読んだ。袖の膨らんだドレスにキラキラした魅力的な手作りのお菓子。クリスマスのごちそう。普段の食事。何から何まで憧れた。葡萄酒がワインのことだと知ったときの何故かがっかりした感覚をよく覚えている。もっと甘くって色も巨峰のように紫がかっているようなイメージの飲み物だった。何度も読み返した本なら読めるかもしれない。病気のせいかは分からないが、長編小説が読めなくなって久しい。何十年かぶりにシャーロック・ホームズの冒険を開いてみる。目次のサブタイトルは覚えがあったけど、内容がさっぱり思い出せない。読み始めると文章に違和感がある。翻訳された本は説明的と言うか何というか、とにかくまわりくどい。慣れればすぐ本の世界に入ることも可能だけど、久しぶりに読むとその感覚をすっかり忘れてしまっていることに気が付く。読み始めてみたが、ただ文字を読んだだけで内容がほとんど頭に入ってこない。これはいい。直に眠くなりそう。理解しようと同じ所を繰り返し読んでいる内に段々瞼が重くなってくる。一つ目の話を読み終わる前に電気を消した。薬との相乗効果。今夜もいい夢を見よう。【中古】 シャーロック・ホウムズの冒険 改版 / コナン・ドイル, 岩淵 慶造, 林 克己 / 岩波書店 [単行本]【宅配便出荷】