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フライブルク日記

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2008/08/01
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テーマ:海外生活(7785)
カテゴリ:人物
今日からデザインを一新、気持ちも新たに?勤勉に更新します。
ゲーリッツのヴェラ(3)の続きです。

実は、このお話の参考にした本、ヴェラとロバートが二人の出会いやヴェラの自分史を綴った本「Discovering Vera」では、自分たちの性生活の話がかなり赤裸に語られていて、読む方が気恥ずかしくなるほどです。ブログでそんなことを書くと、あやしいブログと思われそうなので、この点については簡単にとどめます。もっと知りたい方はご自分でお読みいただくほかありません。


ヴェラは美しい女性へと成長しました。けれども、姉妹たちが自由な性生活をエンジョイするのを横目に、自分だけは男性にも性にもあまり関心をもちません。小さいときに姉がレイプされる様子を見てしまったことも原因でした。彼女は言い寄ってくる男性を避け、近寄りがたい女性となりますが、そうなると男性の目にはますます魅力的に映ります。

21歳のときに愛してもいない男性クリストフと結婚します。ロマンチックな愛などもともと理解できなかったので、外見もよく、職もあり、ヴェラにぞっこん惚れているクリストフを前にして、「しない理由はない」という理由で結婚したのです。

ところが結婚して最初の晩に、もう後悔します。病院に行くほどのひどい思いをし、医者からも「お二人は肉体的に合わないから離婚した方がよい」と助言されます。ヴェラは「じゃ、すぐに離婚を」と言いますが、夫は離婚を拒みます。
二人はやがて別居しますが、子どもが欲しいヴェラは夫との関係をわずかながら保ち、そして息子を出産します。

夫が新しい地に職を得たことで、息子とともに夫の任地に住みはじめたヴェラは、そこでビジネスを始めます。高校を卒業しておらず、資格のないヴェラが考え出したのは託児所でした。住んでいる工業団地に若い家族が多い点に目をつけたのです。託児所は大成功、お金が儲かりました。

この金や姑から借りた金を資金に、ヴェラは次に団地の一階でシーツのアイロンかけサービス業を始めようとします。ところが団地の一階に住む住人は計画に反対しました。団地の住民の合意がないと店は開けません。
そこでヴェラは反対者の一人である女性を訪ね、「賛成してくれたらあなたを雇ってあげる」とオファーします。これはいかにもヴェラらしいところ。自分の意を通すためには、まず相手の利益になることをオファーするのです。この女性は同意し、ヴェラのために他の反対者の説得に協力します。ヴェラはそこで、一階の住人には「アイロンかけを無料にする」と提供して、ついにすべての住民の合意を得ます。

アイロンかけサービスも大繁盛。二ヶ月間に夫の稼ぎの25倍も稼ぎ、姑から借りた借金はすぐに返し、大枚の貯金もできます。税金を逃れて、ヴェラは貯金を靴箱に隠します!

でも、大成功の裏には落とし穴がありました。自分よりも稼ぐ妻を見て、夫が仕事をしなくなり、アルコール依存症になったのです。せっかく稼いでも税金を取られるのはむなしい、息子のための時間もほしい、もう疲れた、という理由からヴェラはこのビジネスもやめます。それでも夫はアルコールをやめず、暴力をふるうようになりました。

元々ビジネス好きのヴェラはまたしても仕事を探します。34歳、「私の美しさが頂点に達していたときでした」と彼女は書いています。町を歩いていて求人広告を見つけ、飛び込んだ先が地元の石炭会社の子会社であるスポーツクラブセンターでした。
秘書として雇われたヴェラはここで、この会社の新しいビジネスのアイディアを出し、子会社のボスだけでなく親会社の社長や副社長の合意も取り付けます。彼女に企業の才能があったのも理由ですが、彼女が美しく機知に富んだ女性で、周囲の上司たち、とくに親会社の社長が彼女に惚れてしまったことも大きな理由です。

ヴェラが提案したビジネスは大成功で、それで儲かった金の投資方法も彼女の案で実行されます。彼女はまた、石炭会社が催す会議やパーティーの運営、そしてホステス役をまかされるようになります。

この仕事を通してヴェラは、ふつうのポーランド人には想像できないような贅沢がVIPたちの間で享受されていることを知ります。「ポーランドには二つの社会があるのだ。自分のように大半の人たちは安月給で働かされ、物を買うにも列に並ばなければならない。
一方でパーティーに訪れる会社のボス、共産党の上部の人々、大学学長、医大のボス、裁判官などの権力者たちはお互いに利益をはかりあい、金を得ている。自分はこうした中で利口に立ち回らなければ」と思うのです。

石炭会社の社長はヴェラに愛人になってくれと懇願します。ヴェラはこれを拒絶しますが、相手に気をもたせる態度もとります。周囲の人はヴェラが社長の愛人だと思いこんでいて、ヴェラも人々にそう思いこませておきます。
そのおかげでヴェラはどこにもコネクションがきくようになり、息子に乗馬や英語教育を受けさせたり、大病院の名医にかかることもできます。すぐれた弁護士を紹介されて離婚もやっと成立します。

大病院の名医からは手術だけでなく、一年間の性生活の手ほどきまで受けて開眼するヴェラですが、相手の求愛を拒み、「御礼」だけを言います。

時代は進み、ソ連でゴルバチョフが台頭し、共産主義が崩壊しつつありました。ポーランドではワレサ率いる「連帯」がますます力を拡大し、これまで地位を利用して私服を肥やしていた人々は「連帯」の糾弾を恐れて、共産党を離れて「連帯」に加盟します。ヴェラの目には、VIPたちは「連帯」に名を変えただけで、相変わらず自分たちの利益を確保している、と映ります。

会社が民営化され、仕事も少なくなったのを機に、ヴェラは仕事を結局はやめます。けれども、激しいインフレが進み、すぐに貯金は底をつき、食べ物も十分に買えないような生活がまたしても始まりました。

それを見て、今では16才となった息子スワヴェクはさすがヴェラの血を引いているだけあって、自分で決心して、毎月ドイツのベルリンに出かけ、中古品を買い付けてはポーランドのフリーマーケットで売って、家計の足しにします。
それでも苦しい生活は続きます。そこで、スワヴェクは名案を思いつきました。これについてはこの次に書きます。

そう、ヴェラという女性はなかなかのものなのです。美貌に自信をもち、女ざかりの自分を巧みに、そして自らのプライドを傷つけることなく利用することを知っていました。ビジネスの才能と勇気はこれはもう天性なのかもしれません。ドイツ人の女友達にこの話をしたら、「東欧の女性は苦しさを身にしみて知っているから、甘っちょろい私たちとはちがって、想像もできない能力とガッツがあるのよ」といなされてしまいましたが。


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Last updated  2008/08/12 11:12:47 PM
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