フライブルク日記

2009/11/24(火)21:57

もしも、お酒が飲めたなら

料理・パン焼き・菓子・食材(214)

ラム酒漬けフルーツとカシスの手抜きデザート posted by (C)solar08 お酒が飲める方がうらやましいです。酩酊という気分に一度はひたってみたい。 アルコールに弱いのは、祖母→父→私への遺伝。 祖母は「奈良漬を食べても酔っちゃうから、わたしゃ食べられないよ」と言っていました。 母はアルコールに強いのですが、父親が酒飲みだったので、酔っ払いが嫌いになったとかで、父が酒に弱かったことも結婚を決心する要因の一つになったそうです。 それで、私は小さい頃から晩酌の習慣は知らず、だから、おかずを肴にアルコール類を飲んで、最後にご飯類を食べる、という食事習慣にもなじまないまま、今にいたっています。 ドイツじゃあ、ワインやビールを飲みながらの食事でも、パンとかライスとかジャガイモのつけ合わせを食べますしね。 生まれて初めてしっかりアルコールを飲んだのは、大学一年のときに友だちの家で開かれたクラスのコンパ。 「まあ、まあ、飲めないなんて言わないで、グッといきましょうよ」とほざいた学友にそそのかされて、ついビールをどんどん飲んでしまいました。 っていっても、たぶんグラス一杯か二杯。真夏はともかく、今でもビールをおいしいと感じることができませんが、その時はいきおいに乗ってしまいました。 その罰は翌日に降りました。 全身に真っ赤な蕁麻疹が出たのです。体じゅうが火照り、かゆいこと、かゆいこと。 あわてて、赤ん坊の頃からお世話になっている、本郷通りの高島道薬局(すばらしい漢方薬局)にかけこみました。 様々な植物をミックスして漢方薬を作って下さる浅野先生から、「ビールは体を冷やすから、あまり飲まない方がいいですよ」とやさしく諭されました。 蕁麻疹が消えるのに、一週間ぐらいかかり、その間はお風呂に入るのも辛かったです。 それなのに、喉元すぎればなんとやら。 グリークラブの合宿で、那須のトラピスト修道院に泊まったときのこと。修道院のシスターたちと、合同のミサをしたのです。グレオリア聖歌を歌ったりして。 修道院にはゲストハウスがあって、そこで、修道院シスター自家製の野菜や豆腐たっぷりの、ものすごくおいしいご馳走をいただき、ました。 ゲストハウスの宿泊所に戻ると、クラブの面々とコーラスを指導してくださっていたヴァリトン歌手は、持参したアルコールや飲み物を出して、宴会が始まりました。 私は目を白黒。 最初は躊躇していたのに、「これなら飲みやすいよ」とコーラにウイスキーを混ぜたのを出されて、つい甘さに乗って、どんどん飲んでしまったらしい。 悲しいことに、酔っ払うという我を忘れるような状態になる前に、心臓が激しく鼓動し、気分が悪くなってしまうんです。 この時はものすごく気分が悪くなって、ついに、修道院のすばらしいお庭で、闇に隠れて、先ほどのすばらしいお食事はすべて土に戻す結果になりました。 翌日はすがすがしいお天気。朝のミサで、またも尼さんたちといっしょに歌わせていただいたのですが、私は頭がガンガンして、生きた心地もしませんでした。 これが「二日酔い」というものであることを、身をもって知りました。 二度とアルコールは飲まない、と決心したわけではないのですが、心臓が高鳴りはじめたら、ストップがかかるようになりました。 あるとき、娘に授乳中なのに、夏の暑さに負けてちょっとビールを飲みました。 そうしたら、生まれて二ヶ月の娘が、真っ赤になったのです。 私にはアルコール分解酵素が欠けているのでしょうね、母乳にアルコールが入ってしまったとしか考えられません。 乳幼児を急性アルコール中毒で死なせていたかもしれないことを考えると、今でもぞっとします。娘はいまだにアルコールには弱いです。 皮肉なことに、ここ、フライブルクはワインの地方です。 フライブルクを囲む一帯、バーデン地方のワインは、バーデンワイン(バーディッシュワイン)として売られ、日本にも輸出されています。 十年くらい前、東大前の小さなレストランで650円のランチを食べていたら、目の前にバーデンワインのボトルが並んでいたので、びっくりしたことがあります。日本にいるのに、フライブルクに引き戻されたような、おかしな気分でした。 フライブルクの西、前回のアップの写真で、フランスのボージュ山脈の手前にうっすらと見える山並みをカイザーシュテュール(皇帝の椅子)といいます。この山は元々火山なので、火山灰を含んだ土がブドウ栽培に適していて、おいしいワインができるのだそうです。 ドイツというと、モーゼルとかの白ワインが有名ですが、バーデンワインはシュペートブルグンダーというブドウの赤ワインがとくに好まれています。 っていうか、私は白ワインは好きじゃなくて、どうせちょっと飲むなら、味にコクがある赤ワインの方が好きというだけかも。 というわけで、フライブルクに住み始めてからは、どうしてもワインを口にする機会が増えました。 初めは、飲むたびに腕に蕁麻疹が出て、医者の友だちからは、アレルギーは突然怖い結果を生むことがあるから、気をつけろといわれました。 少しずつ飲んでいるうちに、蕁麻疹は出なくなりましたが、今でもグラス一杯を飲むのに、二、三時間かけないと、苦しくなります。 だから、いまだに、酩酊状態という楽しいらしい状態にはなれないのです。 ワインのおいしさだけは分かるんですけどね。 スペイン、アルゼンチン、チリのコクがあるワインが好きです。 でも、金を出してまで飲みたいほどにはワインもビールも好きにはなれません。 考えて見れば、残念なことです。 楽しみが一つ少ないわけですから。ま、アルコールに金がかからなくて、調度よかったとも言えますが。 先日、アルコールをたっぷり使った手抜きデザートをつくりました。 型の下にフィンガービスケットを敷き、ラム酒に漬けて一年以上たった杏、サクランボ、プルーンを細かく切ってならべ、さらにカシスのジャムも塗ってから、ラム酒をたっぷりそそぎ、最後に泡立てた生クリームを塗ってできあがり。 かっこつけるために、チョコレートを削って散らしました。 なんと名づけたらいいかわからないデザート。 トライフルとかティラミスのアイディアをいただいて、これらを簡素化したようなもの。 フィンガービスケットが果実の汁とラム酒をたっぷり吸って、スポンジケーキのようになり、全体としては、シュヴァルツヴェルダーキルシュトルテ(フォレ・ノアール、黒い森のサクランボケーキ)を食べているような気分で、とてもおいしかったです。 そこまでは良かったんです。 でも、しばらくしたら、顔が火照ってきました。 デザートに含まれていたラム酒に酔ってしまったらしい。 これじゃあ、奈良漬の祖母と同じじゃない。 アルコール、少しはトレーニングしなくては。

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