テーマ:政治について(20423)
カテゴリ:opinion
![]() フライブルク、ドライザーム川の岸の紅葉 posted by (C)solar08 今朝、悪友が電話で「ヘルマン・シェーアが亡くなったよ。ニュースの最初のテーマになってる」と知らせてくれました。 びっくりしました。一週間前にシェーアさんが重病だという夢を見たばかりだからです。 ニュースによると、周囲の人も予想していなかった急死だそうです。原因は明らかにされていません。 シェーアさんは社会民主党の代議士ですが、一方で二十年以上前から再生可能エネルギー(自然エネルギー)利用のたいせつさを訴え、ユーロ・ソーラーという再生可能エネルギー利用を推進するNGOを設立した人。 「ソーラーの父」とも呼ばれるほど、太陽エネルギーや風力・バイオガス発電に貢献してきました。 シェーアさんは、自分の党内にもある強い反対勢力を克服して、二十年前に「再生可能エネルギー法」を成立させました。 これはドイツ内のすべての電力供給企業に、それぞれの地域でできた太陽光や風力その他の再生可能エネルギー源による電力の買取を義務付け、最低買い取り価格を定めた法律です。 現在では50カ国ぐらいに、同様の法律があります。 この法律のおかげで、ドイツの再生可能エネルギー発電が急激に発展し(発電量全体の15%、日本は1から2%だとか?)、ドイツは風力発電装置や太陽光発電装置の産業部門で強くなり、輸出国にもなりました。 この部門で雇用は30万人分以上を提供しています。 ところが、現在のドイツ政府は「原発からの脱却からの脱却」を決め、古い原発、飛行機の墜落に対する安全対策もない原発の稼動の大幅な延長を決めました。 もともとシェーアさんは経済学者で、経済の立場から、「石油・石炭・原発などの限りある資源に頼っていたら、将来の経済は成り立たない。石油をめぐる戦争もますます多くなる。 京都議定書などのコンセンサスをめぐって議論するよりも、いち早くエネルギー供給や資源供給を自然資源に切り替える国が、長期的には有利に立つのだ」と説いてきました。 彼の功績はたたえられ、「オルタナティヴなノーベル賞」と呼ばれるライトライブリフッド賞も1998年に受賞しています。 カリフォルニアを訪問したときは、シュヴァルツネッガー知事に招待されて、再生可能エネルギー利用をめぐって会談したことがあります。 シェーアさんがお書きになった を翻訳させていただいたことがきっかけで、私はシェーアさんと知り合いました。 十年前のことです。 シェーアさんは日本語版の読者のために、メッセージも書いてくださいました。 訳者あとがきを書くために、ちょうどフライブルクにいらしたシェーアさんをつかまえて、インタビューさせてもらいました。 ワインと生クリームてんこ盛りのアイスクリームを同時に食べ・飲むというすごさに圧倒されたことを覚えています。 坂本龍一さんが「現代人必読の書」とこの本を推奨してくださったと聞きましたが、内容が堅めで、しかも値段も高いので、あまり売れなかったのは残念です。 その後、ベルリンのオフィスにもお邪魔してシェーアさんにインタビューしたことがあります。ユーモアをまじえた語り口にいつも感心しました。でも、ヘビースモーカーなのが気になりました。 シェーアさんはインタビューで、「日本はテクノロジーで先端を行っているのだから、日本こそが再生エネルギー利用の先頭に立つことができるし、持続可能な経済発展のチャンスをつかむことができる」と語ってくださいました。 シェーアさんは環境だけでなく、平和・反戦運動、兵器縮小にも力を入れていた政治家です。 このような貴重な政治家を失ったことは、ドイツにとっても、世界にとってもたいへん残念なことです。 ショックから覚めないまま、街中に出たついでに、久しぶりでフライブルクの寿司レストラン「芭蕉庵」に寄りました。 寿司親方が握るおいしいお寿司をいただいて、シェーアさんの霊を弔いつつ、口とお腹をなぐさめました。 人間て(私って)、エゴイスティックなものですね。 たいせつな方が亡くなったことを悲しみながらも、一方ではお寿司をぞんぶんに楽しんでしまうんですから。 ランチのお寿司ながら、おおとろまでサービスしてもらい、幸せな気分になってしまいましたよ。 ![]() フライブルク、街路樹のカエデ posted by (C)solar08 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[opinion] カテゴリの最新記事
|
|