テーマ:最近観た映画。(40370)
カテゴリ:人物
フランス映画「Gainsbourg vie heroique」(ドイツ語タイトルは「ゲンスブール、たくさんの女性を愛した男」となっています)を見ました。
シャンソンの作詞・作曲家であり、歌手、映画監督、画家など幅広い活動をしたアーティスト、セルジュ・ゲンスブールの伝記映画(のようなもの)です。 映画やシャンソンに疎い私は、ゲンスブールのことはほとんど知らず、彼の三度目だかの妻、イギリスの女優、ジェーン・バーキンとのデュエット、「je t'aime moi non plus」(曲といっしょに、あの当時のゲンスブールとジェーンバーキンが見られます)でなじんでいただけです。 この歌は今でもフランスの懐メロ専門ラジオなどからよく流れてきます。 エロチックな内容でセンセーションを呼んだ歌ですが、メロディーがやさしくて、ゲンスブールのおとな男っぽい声と、当時はまだ若かったジェーン・バーキンの高くてささやくようなかすれ声のマッチが独特の色っぽさを出しています。 ただね、最後のあたりの「あえぎ声」は逆に色っぽさの邪魔になるような感じがしますけどね。 ちなみに、この歌は元々は、不倫相手だったブリジット・バルドーのために作ったようですが、バルドーの夫の怒りを買ったかでリリースされず、バーキンとのデュエットで発表にいたったそう。 映画はゲンスブールの子ども時代を彼の心の原点にしているような描き方をしています(私の独断ですが)。 ユダヤ人であることの意識とか、ピアノを無理やり習わされたこととか、絵への興味とか。 映画にはバーキンだけでなく、ジュリエット・グレコとかブリジット・バルドーなどなど、彼が愛した?女性やかかわりがあった女性がたくさん登場します(といっても、もちろん別の女優によって演じられている、もうお歳か亡くなっているかですもんね)。 ゲンスブールを演じたエリック・エルモスニクという俳優は、実物の写真から見るゲンスブルールとそっくり。 ただ、ゲンスブールのヴィデオ(↑の歌の)などを見ると、実物はどこか沢田研二に似ていると思うのは私だけでしょうか・・・。 ジェーン・バーキンは本物の方がずっときれい。あのあっと驚く美しさはなかなか他の女優では出せないんでしょうね。 フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」(おお、なつかしい)もゲンスブールが贈った曲だそうで、知らなかった。 ただし、この映画からは、彼の生き方や作品がどのような背景や心理から出てきたのかは印象のいく形では伝わってきませんでした。 だから、伝記映画としては「レイチャールズ」など他の伝記映画にくらべて、不満が残りました。彼の一面だけを大きく取り上げて描こうとした映画というべきでしょうか。 それにしても、この一見ルンペン風のヘビースモーカー・酒飲み、なげやりな中年男が、なぜこうも多くの魅力的な女性たちに愛されたのか。 これを見た男性は「なんでこのだらしない奴がもてるんだ」と思いたくもなるみたいです。 でも、女性から見ると、なんとなくわかるのよね。 いわゆる「芸術家肌」はどことなく影があるようで、なぞめいていて。 いっしょに暮らせばカタストロフになるとわかっていても、のめりこんでしまうような・・・(いえ、私はそういう経験は残念ながらありませんが、想像するに)。 実際に、ジェーン・バーキンも彼との間に娘(シャーロッテ・ゲンスブール)をもうけながらも、結局彼の仕打ちに耐えられなくて(?)離婚しましたから、最初は炎のような恋も、実生活が進めば、燃え尽きてしまうというのが現実でしょうか。 でも、こういう「非理性的」な恋があるから、人生はおもしろいし、↑の「ジュ・テーム」みたいな歌もつくれるのでしょうね。 どうしようもない男といえば、フライブルクの友人の一人にかつてはアル中だった男性がいます。 アルコールが入ると「一人語り」がウジウジ・ジメジメと始まり、人にからみ、時には交通事故も起こしたり、窓から落ちたりと問題だらけの男性でした。 でも、頭はよいし、憎めないところがあって、彼がものにした女性は数え切れないくらい(たぶん)。 それで、パートナーたちは、誰もが結局はあきれて去っていきました。 それでも歳と理性に克服されたのか、あるいはやっと結婚した現在の保守的な奥さんの功績なのか、アルコールをすっぱりやめ、この数年クリーンです。 女性との浮名もおしまい。奥さんがものすごく厳しいし、寄る年波には勝てないのか。 こういうクリーンは良いんだけれど、今の彼はなんか面白くないのよね。 人生にたいくつしているみたいで。奥さんは喜んでいるけれど。 映画はこういう人生の現実・日常生活的な面は描かなくてもすむから、「ゲンスブール」のおかげで私もいっとき、非日常のアーティストの世界にひたることができました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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