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フライブルク日記

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2010/12/09
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カテゴリ:人物
DさんがJ君に出会ったのは6年前。ちょうど以前の恋人に去られ、寂しい時でした。あるパーティーに呼ばれたものの楽しむ気分にはなれないし、パーティー客には知人がいなかったので、キッチンの椅子に一人ですわっていました。
たまたまキッチンに入ってきたのがJ君でした。大きな目だまをグリグリさせ、金髪がまばゆい若い男性。その大きな口からは、スラスラと軽い冗談が飛び出し、Dさんも寂しさを忘れて、思わず笑ってしまいました。
これが縁で、半年ぐらい、食事や映画に行くだけの軽い付き合いが続きました。
「僕たち、毎日のように電話し合っているし、デートもしてるのに、まだカップルじゃないなんて、不思議だな」
「そうね、あなたとは気軽な友だち関係で始まったから」
「じゃあ、ここらで友だち以上の付き合いになろうか」
こうして、当時はまだ同じ市で仕事をしていたJ君の住まいにDさんも移り住んで、同居が始まりました。

Dさんは黒髪で南国風の小麦色の肌、切れ長の目、美しい歯並びが魅惑的な36歳の女性です。彼女には1歳3ヶ月になる女の子がいます。女の子の父親、↑で書いた二歳下のそうそうたる高級取りのビジネスマンJ君は、現在はスイスの会社に勤めています(フライブルクには多いです、給料がドイツよりも破格に高いこともあって)。だから、平日は彼はスイスで暮らし、Dさんは娘と二人でフライブルクに住み、ときどき、彼女たちがスイスの彼の元で過ごすほかは、週末だけ家族そろっての時間がもてます。

彼女は彫金の資格ももっているのですが、ビジネススクールも出ていて、過去にいくつかの会社で企画やイベントマネージメントの仕事をしていました。
現在は娘を保育園に預けて、新たな資格取りのために通信教育を受けています。

ところが、この「週末家族」「週末カップル」にもひびが入ってきました。

スイスの彼の元でDさんとベビーMちゃんが過ごしたときの会話。
「仕事のあとにちょっとビール一杯飲んで、何がいけないんだ?」
「それが悪いなんて言ってないわよ。飲みに行くなら、私とMを呼んでくれればいいのに。そうすれば、あなたといっしょにすてきな晩を過ごせるわ」
「ばかを言うなよ。Mはまだ赤ん坊だぞ。そんな場所に連れていけるか。
それにな、僕が同僚や部下とビール飲むのは仕事の内なんだ。酒が入ってはじめて部下が会社でははかないような本音が聞けるんだ」
「そんな理屈、通じないわよ。仕事時間が終わったら、プライベート時間よ。少しだけでも、私たちと過ごしてよ。」
「週末は僕だって家にいるじゃないか。ゴルフに行くわけでもないし」
「家にいたって、ただゴロゴロしているだけじゃない。やっと家族いっしょに何かできる時間があるっていうのに」
「僕はね、こんなのんきそうな顔してるけど、会社でメチャメチャ働いているんだよ。週末ぐらい、ほっとさせてくれよ。わかってくれよ」
「わからないわよ、ちゃんと説明してくれなきゃ。家族生活はどうなるの」
「説明してるじゃないか。それにな、家族つくりたい、子どもつくりたいって言ったのは君だよ。僕じゃない」
「そんな、あなただって同意したじゃない」
「君がどうしても子どもが欲しいって言うから、そうしただけさ。僕はまだきっちり身を固める用意はできてないのに」

こんな状態では、将来がおぼつかない。というわけで、Dさんは職探しをしました。彼女の職歴に合った会社をネットで見つけ、昨日は面接に出かけました。
これまで会議などのイベントマネージャーをした経験がこの会社が探している応募者条件にぴったりで、希望がもてそうです。
けれども、この仕事では、時には仕事時間が午後6時以降にもおよび、Mちゃんの保育時間を超過してしまいます。それにDさんは、娘が小さい間だけでもいっしょに過ごす時間をたくさん持ちたいという思いから、フルタイムではなく、週に三日ぐらいだけ働きたいという願いをもっています。幼児は病気にもなりがち。けれども、会社はそういう社員を望みません。Dさんがこの職を得られるかは、まだまだ未定です。

若い女性が子育てをしながら仕事をする、というのは今の時代でも簡単ではないのですね。彼女が緊急の際に赤ちゃんをあずけられる唯一の存在は、赤ちゃんの父親のお母さんです。それでも、テニスや音楽などの趣味で忙しい「おばあちゃん」にいつも頼むわけにはいきません。
Dさん自身のお母さんも、同じ町に住んでいるのですが、お母さんとはほとんど音信がない事情があります。

彼女の両親は、世界に数百万人の会員をもつ、キリスト教系の宗教団体の熱心な信者です。彼女も彼女の兄も、この宗教で育てられ、Dさんも十代のときに自ら洗礼を受けました。
けれども、成長するにつれて、厳格な戒律に疑問をもち、反抗し、脱退しました。この団体は脱退者に厳しく、脱退した者の家族は、脱退者との交流が許されず、Dさんの両親も兄もDとの交流を拒否しました。その後、父親が亡くなり、母親はやはり会員と再婚しました(この団体は団体内での結婚しか許していません)。

Dさんの母親は、どうしてもDさんの顔を見たくなったときには、ごくたまにですが、秘密で電話をしてきて、秘密で人の見ていないところでこっそりDさんとちらっとだけ会います。ですから、孫の世話を頼むなど考えられないのです。

Dさんの兄は40代半ばですが独身です。というのも、この団体は離婚も禁止しています。神に「死が二人を分かつまで」と誓ったからには、その誓いを破ってはならないのです。
現実には、結婚後に問題をもつカップルは多いのですが、この団体の戒律のために、憎みあいながらも婚姻関係を表面的には維持するという例が少なくありません。
そういう事情をみて、Dさんの兄は最初から結婚をしないそうです。一方で、この団体は婚前交渉や婚外交渉も禁止しているので、性的な動機から無理に結婚する例も少なくないそうです。いやあ、このヨーロッパにあって、まるで中世みたいですね。

というわけで、Dさんは脱退によって天涯孤独の身となり、それだけに家族願望が強いのです。本当はJ君がロマンチックに「結婚しようよ」とか「結婚してください」と言ってくれるのを夢見ているし、もう一人子どもが欲しいぐらいなのですが、J君はまだまだそんな段階にはきていないのです。
和気藹々の家族生活にも希望はもてません。いえ、もう別れる寸前なのです。

それだけに、Dさんが良い職につくことが緊急課題なのですが、幼子との二人暮しでは、本当にむずかしそう。まさに出口なしの状態です。
もちろん、Dさんは若くて魅力的だから、ほかの頼りになる男性がまた見つかれば別でしょうけれど・・・。男性に頼る生活をあてにしたくばないでしょうしね。

でもね、不思議なことに、J君は毎日、スイスからDさんに電話をかけてきます。やっぱり心配なのかな。
「相手からあれをしてくれ、こうして欲しい、と期待されると、逆に気がそがれてしまうんだ。僕だって、いっしょに過ごしたい、やさしくしたいとは思うんだけど、押し付けられたり、強制されるとその気になれないんだ」と、内心を明かすJ君です。


まるでちょっとしたテレビドラマを実体験したような昨日でした。
それにしてもね、J君の仕事やDさんが面接を受けた職場のように、企画とか管理とかいった「ソフトな仕事、第三次産業」の仕事の給料って、娘がしているデザインとかDさんのもう一つの仕事である彫金のような、何かを作り出す仕事よりも、給料が倍あるいはそれ以上も高いんですね。びっくりしました。

農業とか工業と手工業とか職人仕事など、具体的な物を生産する人がいなければ、人間は生きられないのに、そういう仕事が報いられないのは、いびつな世の中ですね。





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Last updated  2010/12/10 12:30:32 AM
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