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鶏が口だけでも飛び立ちます

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2008.12.17
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世界初!マグロ完全養殖
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書評/サイエンス


ずいぶん前でいつだったろうか、中日新聞の一面に「マグロ完全養殖、孵化に成功!」という記事が載ったことがあった。

もう20年以上前だったか。

その記事を読みながら、「へぇー、マグロって今まで養殖できなかったし、養殖が難しかったんだ。」と思った。

マグロといえば、寿司の赤身や、高級なトロぐらいしかイメージが湧かない。
でも、英語でTunaともいう。Tunaといえば、シーチキンだ。シーチキンは小さい時からマヨネーズにつけてよく食べた。そういえばなじみがあるなぁ。


この本は、マグロを孵化させて、数mmの幼生から徐々に大きくし、生簀(いけす)に放ち、だんだんと大きな生簀に移して、最後に卵を産ませる。そしてさらにマグロを孵化させるという循環、完全な養殖を実現したストーリーだ。

それを0から始めて32年かけて実現させた、創始者である故原田先生、それを引き継いだ熊井先生の人間ドラマでもある。熊井先生は研究をしながら、大学での授業を受け持ったり、近畿大学付属中高等学校の先生や校長をやったり、大学の理事を受け持ったり、控えめながら責任を背負う人望のある人なんだなぁと感激した。


マグロは太平洋や、インド洋、大西洋、地中海を巡回する回遊魚である。
そのため、どこでどのように産まれ、どこで育ち、どこを泳ぐのか、そして何を食べているのかということは最近になってわかりつつあるけれど、世界中を移動するためよくわかっていない魚である。


マグロの養殖を始めて、失敗を繰り返しながらいろいろわかってきたことがある。

・マグロは産まれたときから死ぬまで泳いでいる
 マグロはえらが動かないので、水流がないと息ができないのだ。寝ている間も泳いでいるということになる。

・幼魚は手で触るとうろこがはがれおち死んでしまう。

それ以外にも、なぜ生簀に放った幼魚が数日のうちに死んでしまうのだろうか?

なぜ11年もマグロは卵を産まなかったのだろうか?


研究は疑問が生まれ、その仮説を立て実証する。また疑問が生まれ、また仮説を立て実証する。少しずつでもわからないことを明らかにしていく。全貌がわかるのはとても大変なことで、ほのかに光る松明の光をもとに一歩ずつ歩んでいくしかない。

熊井先生が、11年も卵を産ませることができなくて、もう研究の続行は無理じゃないかと近畿大学の総長である世耕氏に相談しにいったときに、「研究は不可能なことを実現させるから、研究だろ」と言われ、続けることを決意した。その後、マグロに卵を産ませることに成功している。


熊井先生はいう、こんなマグロの養殖というプロジェクトは、私立大学でしか実現できないことだ。当初マグロの孵化のようなプロジェクトは、農林水産省のプロジェクトで3年や5年が期限だ。それでうまくいかなければ解散して、プロジェクトそのものがなくなってしまう。

近畿大学のプロジェクトは、研究費は自分たちで稼ぐという自助の精神でやってきた。マグロだけの研究ではないが、タイやハタなどいろいろな魚の養殖研究をして、その成果を市場で売り、それをマグロ研究につぎ込んだ。

最近では国公立大学もベンチャーを始めているが、近畿大学のマグロプロジェクトはベンチャーそのものだった。

しかし当時はその市場で売るということが、学会では学問とみなされず認められるのに苦労した。



学問的な研究ということで興味を持ってこの本を読んだが、結局ベンチャー精神にぶち当たってしまったなぁ。そして、前に読んだ本「不可能を可能にする(make the impossible possible)」と同じメッセージを見てしまった。

どの分野でも同じ方向を目指しているのかもしれない。






Last updated  2008.12.18 08:15:14
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