《 幸せのひろいかた 》  フェルトアート・カントリー木工 by WOODYPAPA

2006/12/30(土)10:50

第87回「大統領の陰謀」

青春時代「アメリカンシネマ」(102)

ベトナム戦争を終結(米軍撤退)させたのは、ニクソン大統領でした。 この大統領、当時はかなりの存在感でした。 “ニクソンショック(アメリカが金本位をやめ固定相場から変動相場に転換するってこと)”なる用語が残るほどの、歴史的に重要な時期の大統領でありました。 僕の幼少期は、「三丁目の夕日」のような、のどかなほのぼのとした時代でした。 それが“東京オリンピック”で大きくうねりはじめ、“ニクソンショック”“オイルショック”と危機訪れ、世界の中の日本を思い知らされました。 世の中の経済情勢の転換期をめまぐるしく体験し、いや体験はしてませんでした、ぼおっと眺め、“バブル景気”につきすすみ、はじけて消えました。 まるで、“開国”“日露戦争”“日米開戦”のごとき、経済的に転換する大事件のひとつでした。 また、ベトナム戦争を終わらせたのはニクソンでしたが、北爆開始拡大したのもニクソンでした。 “反戦少年”の僕は悪い大統領の印象を持っていました。 反戦歌の矛先は、ニクソンに向けられていました。 その後、僕も大人になり、いい悪いの基準が広がり、解って来た事もあるので、それほどひどい人物ではなかったような気もします。 でも、歴史的にみっともなかったのは、“ウォーターゲート事件”で失脚してしまったということです。 “ウォーターゲート事件”というのは、ウォーターゲートビルにあった民主党本部に盗聴器をつけようとした何者かが捕まったことから、いもづるでニクソン大統領まで犯罪を問われる羽目になったという事件です。 歴史の中には、何でこんなことで、と思うようなこともありますが、(バスチーユ牢獄で、投獄されていたカサノバが自分の糞尿を通行人に投げつけたことから、フランス革命が起きてしまったということのように)、事件の発覚当時はまさかこんなことになるとはと思ってました。 アメリカ人の誰もがそう思ってました。 事件発生が’72年6月、ニクソン辞任が’74年8月。 この間にまずい対応が重なり、紆余曲折があり、世情の変節があり、本人もまさかの辞任に追い込まれました。 「大統領の陰謀」は、取っ掛かりの“盗聴器取り付け事件”をしつこく追い続け、巨悪をあぶりだしたワシントンポストの記者二人の執念の話です。 巨悪? 盗聴なんて、普通にやっていることじゃん。 今のアメリカなら、“テロ対策法案”で合法でやってます。 当時もこの事件の顛末に戸惑いを覚えました。 事件そのものではなく、大統領が嘘をついたのがいけないと、なんかの解説が説明してましたが、嘘なんかみんなつきますよ。 『桜の木を切ったのは僕です』のジョージ・ワシントンの正直話も作り話だっていうじゃありませんか。 そもそも何でも正直にしゃべっちゃう大統領の方が危険だと思うんですけど。 そこは大人で、ってことにして通り過ぎないとうまくいかないこともありますよね。 性善説の日本教と、性悪説のキリスト教の違いでしょうか。 彼らはうまれながらの“罪人”ですから。 結果的に、この事件以来“大統領”の地位は、“仮王様(選挙で決める王様)”から、ただの“看板”に成り下がります。 “ウォーターゲート事件”の後、日本でも“ロッキード事件”が発覚します。 みんな知ってたくせに何をいまさら、という感触でしたが、落ちた犬をよってたかって叩いてましたっけ。 アメリカ感覚だったんだと思います。 好きだったんですね、みんなアメリカが。 日米開戦前も日本人はアメリカが好きだったと、小室直樹の本で読みましたが、そう思うと解ることがいくつかあります。 好きだからこそ解ってもらいたい。 歴史的“片恋慕”体質ですね。 さて、「大統領の陰謀」ですが、僕の大好きなロバート・レッドフォードとダステイン・ホフマンの主演です。 本来このコラムでもっと早く乗せてもいい作品ですが、語りようが無かったんですね。 事件がまだまだ熱が取れてない時期に、原作者のカール・バーンスタインがこの記者自身であるために、事実を追うのに忙しく、それがため創作性に乏しく、映画的にまずくなってしまったこともあります。 まったくのドキュメンタリー風味で、無名の役者でやれば作品的にはもっと良くなったかもしれない。 でも、この二人だから、面白くしなくちゃって工夫をします。 それが空回りに感じました。 だいたい好きなものだからって、刺身と焼肉一緒にしても変でしょ。 この二人の組み合わせ他にありません。 主役がいて、脇役がいてっていう組み合わせですね、基本的に。 追記 前回「チャイナシンドローム」を書き上げ、つぎはこれにしようと思っていたら、ニクソン辞任を受け、大統領に昇格したジェラルド・R・フォードが26日に亡くなりました。 彼の後に続く、カーター、レーガン、パパブッシュなどに比べると陰の薄い、凡庸な大統領でした。 それが、93歳165日の大統領最長寿の記録を残しました。 そういえば、ニクソン・フォード時代の影の大統領ヘンリー・キッシンジャーはまだ存命なんですね。 昔のような、昔で無いような話です。

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