《 幸せのひろいかた 》  フェルトアート・カントリー木工 by WOODYPAPA

2013/07/21(日)08:46

ナターシャ・グジー 『いつも何度でも』

原発(31)

   宮崎駿監督アニメ映画『千と千尋の神隠し』の主題歌。オリジナルは木村弓のライヤーの音に耳を奪われ、歌詞のほうは印象がなかった。観念的な言葉の羅列のように思っていた。それが、ナターシャ・グジーの透き通った声で歌われると、俄然その深い意味が浮上してくる。彼女の背負った運命の重さが、歌詞の輪郭を鮮やかに蘇らせた。ナターシャの生い立ちを、彼女自身がこう語る。 「いまから、22年前にチェルノブイリ原発が爆発しました。当時わたしは6歳でしたが、お父さんが原発で働いていたので、家族全員で原発からわずか3.5キロのところに住んでいました。事故が起きたのは、夜中だったので、ほとんどの人たちは、そんなに大きな事故が起きたとは知りませんでした。そのため次の日は、普通に生活していました。子どもたちが学校に行き、お母さんたちが小さな子どもを連れて一日中外で遊んでいました。そして、一日中、目に見えない放射能を浴びていました。事故のことを知らされたのは、その次の日でした。たいした事が起きていません。でも、念のために避難してください。三日間だけ避難してください。三日後に必ず帰ってきますので、荷物は持たずに避難してください。そういわれて、わたしたちはみんな、荷物を持たずに、町を出てしまいました。でも、三日たっても、一ヶ月たっても、そして二十年たっても、その町にもどることはありませんでした。子どものころ、毎日遊んでいた美しい森も、たくさんの思い出がつまった家も、放射能のせいで、壊されて、土の中に埋められました。いまそこには、なんにも残っていません。かつて、命が輝いていた町は、死の町になってしまいました。あの恐ろしい事故で、わたしたちが失ったのはふるさとだけではありません。とってもたくさんの人が亡くなっています。わたしの友達も、なんにんも亡くなっています。そして当時、わたしと同じように子どもだった人たちが、もう大人になり、結婚したり、子どもを産んだりしています。そして新しく生まれてくる赤ちゃんたちの健康にも、異常があります。人間は、忘れることによって、同じ過ちを繰り返してしまいます。悲劇を忘れないでください。同じ過ちを繰り返さないでください。そう願ってわたしは歌を歌っています」 2008年8月6日、NHK教育『視点・論点』という番組である。ヒロシマ原爆の日のメッセージであったが、あたかも今年のことを予言しているかのようである。過ちを繰り返さないでくださいというナターシャの願いは、日本人に届かなかった。原発に反対するメッセージは、NHK以外の民放では抹殺された。総額1000億円にも及ぶ電力会社の広告費が、メディア各社に流れていた。広告費一位トヨタ(1054億円)2位松下電器(831億円)3位ホンダ(816億円)......これらは、競合他社と競争のための広告である。然るに、独占企業の電力会社がなぜこれだけの広告費を使わなくてはならないのか。すべて"口封じ"のためである。原発マフィアの魔手は各界に及び、財界、政界、官僚をがんじがらめにしていた。北海道の泊原発が再稼動する(実際は試験運転ということで、震災直前から稼動していたのだが)。このニュースに世界中が驚いた。世界中が、過ちを繰り返すまいと、原発から脱却しようと努力する中、当事国が、事故のことを忘れてしまった。事故は現在進行中であるにもかかわらず。230億円の補助金欲しさに、地元が賛成したとのこと。福島原発周辺で、現在避難生活をしている住民は、「貧しくても、昔の生活が良かった」と後悔しているのに。泊原発から札幌まで50キロである。事故が起きれば、地元だけの問題でなくなる。経産省出身の、高橋はるみ北海道知事は政治献金と引き換えに、悪魔と取引をした。民主党代表選に手を上げた面々も、“脱原発”をかかげる候補者はひとりもいない。どこまでがんじがらめにされているのだ。   

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