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カテゴリ:読書記録

日無坂

 江戸市井の人情豊かな物語です。実は安住さんとは個人的にお話したことがあります。とはいっても直接ではなく、あるネット文学サイトで拙作に感想をお寄せくださったことがあったというだけですが。安住さんはその後『しずり雪』という作品でデビューして、新聞にも絶賛された期待の新人でした。

 薬種問屋鳳仙堂の跡取りになるはずだった伊佐次は、父親に反発して堅気の道から外れ、今は賭場を預かっています。ある日十年以上会っていなかった父親にすれ違いますが、その直後父親は川に落ちて亡くなってしまいます。父親の死の謎を追う伊佐次に、父への思いが募ります。

 あらすじを書いてみて、ミステリー調にしてもよかったなと思いました。博打でとんずらした夫の尻拭いで妾になった女性のことも、もう少し詳しくしてみたら、艶も出たかなとか。でも、伊佐次の魅力は十分伝わってきます。できすぎの父親をもつ息子の苦労、現代にも通じるものがありますね。

 江戸物を読むとなんだか落ち着くのはそこにきちんとした道徳があるからでしょうか。ほんとは現代でも行いたい優しい振る舞いが素直に表現されていて、懐かしく読むことができます。安住さんはますます江戸に沁みこんでいきましたね。

 また続編も書いてほしいなあ。いつでもそっとそばに置いて読みたくなる、そんな作品でした。





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最終更新日  2008年09月27日 10時28分06秒
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