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ベルギー(四歳)の雑記部屋

ベルギー(四歳)の雑記部屋

ある昼休みの滝川君



ガンパレード・マーチSS

 ~ある昼休みの滝川君~


昼休みの教室。

ある者は昼飯を、またある者は談笑を楽しむそんな平和な空間。


「へ・・へ・・」


その平和なひと時を揺るがすかのように・・・


「へっくしょん!!」


彼の災難は始まった。





ガンパレード・マーチSS

 ~ある昼休みの滝川君~







「へっくしょん!」


続けて二回。

今時、少年漫画の主人公でも、しなさそうなくしゃみだ。


「大丈夫かい?滝川」


一緒に、昼飯を食べていた親友・速水厚志が心配そうに滝川の顔をかがむよう

にしてのぞきこんできた。

この親友はその、ぽや~んとした雰囲気とは裏腹に結構背が高い…否、単に自

分の背が低いだけだった。


「な~に、これくらいドーッテことねーって。」


ずるずる。

鼻をすすりながら、なにげにへこむ。

幼いころから根っからのヒーロー崇拝者である彼にとって、それは何気にコン

プレックスになっていた。毎日のように飲んでいる牛乳も実はそのあたりから

来ていたりする。


「この漢、タキガワスキー。カゼなどをひくような、なんじゃく者じゃあ・・

へ・へプしょン…。」


せいだいにまた一つ。


「何だ?・・滝川、風邪か?」


くしゃみの音に驚いたのか、教室で一人くつろいでいた瀬戸口が心配そう

に・・と言うわけでもなく、むしろ嬉そうに尋ねてきた。

女性には年齢を問わず無条件で味方する彼もさすがに野郎の味方をするきはな

いようだ。異性をトキメカセル端正な顔に洗練された悪意が垣間見える。


「へんっ、どうせ、バカは風をひかない・・とかなんとか言って、俺をバカに

する気なんだろう?その手はくわね―ぜっ」


「た、滝川、風邪の字がちがうよ…。」


慌てて速水がフォロウをいれる。


「な、なにいっ。し、しまったあ?」


この二人なかなかのコンビである。

ひとしきり苦笑した後、瀬戸口は手を振った。


「勘違いするなよ。風邪は直接パイロットの判断力を奪うからな…用心するの

に越した事はない、と言おうとしただけだ。」


「せ、瀬戸口。おまえ・・ほんとはいいや…」


「それで、クラス・メートの安否を心配するおれとしてはだ、…おおい」


滝川をさえぎった瀬戸口の顔に悪魔が宿った。


「っ?そ、そうかっ。い、いけない。滝川、今すぐ教室を出るんだ。」


いち早く瀬戸口の意図に気づいた速水が言う。


「なに言ってんだよ?速水。やつはオレの事を心配して・・」


そこで滝川の口が止まった。


「なんだ、呼んだか?」


無意味に大きく、野太い声。ニヤリ、瀬戸口が会心の笑みを。


「おそかったか…」


速水が悔恨の声をもらした。

瀬戸口が召喚した人物。


「俺になにか用か?」


先ほどまで教室の後ろのほうでバーベルを上げ下げしていた筋肉…もとい、スカウトの若宮だ


「実は、滝川が風邪らしいんだ」

「お,おいッ?」

「なにっ、風?それはいかん。俺が、気合で直してやろう。さあっ、いくぞ滝

川」


「あ、あの、行くって何処に?」


ぽん・・ではなく『がしり』。
あとずさる滝川の肩をつかみニコリと笑う。
瀬戸口も笑った。


「ま、病院じゃないことだけはたしかだな」


「ノ,ノオオオオオォゥッ」


「はっはっは、そんなに悦ぶなよ。滝川」


無責任な瀬戸口の言葉を後に、滝川は帰らぬ人となった。

ゴッドスピード


「いいか?滝川。そもそもかぜをひくというのはだなぁ・・」


廊下からそんな若宮の嬉しそうなこえが聞こえてくる。


「せ、瀬戸口君これはちょっとやりすぎなんじゃ…?」


顔をしかめて、残された速見。

瀬戸口は世間話でも始めるような口調で言った。


「そう言えば速水、今日はなんで滝川は弁当を持ってきてたんだろうな?いつ

もは味の連か、売店だろう?」


「?・・」


「ああ、そう、そう。そう言えば、東原のやつ今日は弁当じゃないみたいだ

な・・」


速水は瀬戸口の視線を追いかけ、ののみの姿を視界に入れた。ポケットから、

危険なサンドイッチがはみ出ている。


「かわいそうに、東原のお人好しをいい事に交換をを持ちかけた、バカがいる

らしい」


瀬戸口は一つため息をついた。


「一体誰がそんなひどい事を・・?・・あっ。」


なにかに思い当たり速水、さっきまで滝川が食べていた弁当を見やる。

みおぼえのある、かわいい、ちいさな弁当箱。

絶句する速水。


「ま、まさか…。」


「ったく・・、あのサルやっていい事と悪い事の区別もつかないらしい」


「で、でも本人に悪気は・・」


「解かってるさ。だが自覚症状がないだけ、なおタチが悪い。ああみえて東原

は人の悪意に敏感だからな…。」


言って速水に別れを告げ、ののみの方へ自分の弁当を持ってゆく


「何だかんだいって、ののみちゃんの事だけは真剣な目をするね?」


「まあ・・。なんとなくほうって置けないとゆうか、な。」


「プレイボーイも廃業だね。」


「かもしれん。」


言って自分で苦笑いする。速水はそんな風に照れる瀬戸口を見て微笑んだ。

が、一変して表情が変わる。


「それにしても・・。」


もう少し懲らしめてやった方がいいかもしれない・・。

しかし何処か憎めない親友の事を思うとついついため息をついてしまうぽやや

ん少年であった。





;;;;;



おまけ


この日、若宮の訓練に無理やり付き合わされた滝川は風邪も手伝ってかこの

後、四日程寝込むことになった。ちなみに、その間、誰1人として御見舞いに

くるものがいなかったのは速水が真実をみんなに公表したからである。










じ・えんど




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