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華麗の空~本を楽しく読むブログ

山際淳司さん。



―不思議な航路―「1998年夏、山際淳司とループ」




@プロローグ@
全ては、沖縄旅行から始まる。

いや、昨年(1997年)秋から読書に力を入れるようになったことが、出発点か。
読書をするキッカケをくれた、親友の存在か。
あるいは高校の頃、「サンデースポーツ」で山際淳司を知ったことが、原点なのか。

「江夏の21球」(故・山際淳司/角川文庫)の存在を知ったのは随分と前だ。
書店で何度か見かけたし、実際に手に取って見もした。しかし、買わなかった。
本に「高さ」を感じていたのだ。価値を見出していなかったのだ。


@山際淳司さんと出会う@
1998年7月28日、親友Sの誘いで沖縄へ行った。

そう、沖縄――

Sの住むマンションの位置が良かった。
嘉手納図書館の前。国道58号線を挟んだ向かい側。


1998年、7月29日、朝――曇り時々雨

この日、Sの誘いで図書館へ行った。誘われなければ、行かなかった。
この夏はゴミ問題をテーマに論文を書くと決めていたので、
館内ではゴミ関係の本を中心に見て回った。

そして、出会った。

「山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成」(文藝春秋)――

「江夏の21球」が、そこにあった。
ゴミ関係の本と一緒に、この分厚い傑作集成も借りて帰ることにした。
ウキウキしながらの帰宅であった。


@「江夏の21球」とは?@
さて、「江夏の21球」について、大変な勘違いをしていた。

本編について、江夏豊がオールスターで成し遂げた9連続奪三振の模様を描いたものと
ばかり思っていたのだ。正しくは、1979年の日本シリーズ・広島vs近鉄第7戦9回裏の話なのだ。
9回裏の江夏豊の全投球数。それが、21。一方、9連続奪三振を達成するには
少なくとも9×3=27球必要である。少し考えればすぐに気づくことなのに、ね。。。

それはともかく、「江夏の21球」をはじめとして、この分厚い傑作集成を熱心に読んだ。

野球をとても面白く、魅力的に描く山際淳司。すっかりファンになった。

滞在中に山際淳司の本を一冊買った。
沖縄での山際淳司との関係は、その一冊で終わった。


@小さな幕開け「怖いのは、嫌ッス」@
Sとの会話の中で、ある日「リング」(鈴木光司/角川文庫)の話題が出た。
鈴木光司の「リング」と「らせん」。Sは強力に薦める。メチャ怖いよ、と。
リスク回避に敏感な自分が、なぜ怖いと分かっている本など読むだろう。
その場では、読まないッス、と断っておいた。結局のところ読むのだけれど…

沖縄で「リング」の話をしたことを、押さえておこう。


@論文、〆切ギリギリで完成@
二週間と少しの旅から戻り、論文執筆に集中する。
沖縄の海は美しかった。しかし、どんなに美しくても、ゴミは捨てられる。
何故か。結局、ゴミ問題とて「心の問題」なのだ。そんな流れ。

さて、論文は完成した。「リング」でも読んでみようか。。。


@なんで売ってないのよ@
「リング」は面白かった。恐怖の連続という程ではなかったけれど、
ミステリとして大変良かった。

ダッシュで本屋へ――

続いて「らせん」。。。
終わり方に少し納得がいかなかったけれど、全体的に〇。

そして、「ループ」。

以前、店頭で相当数見かけた「ループ」。
平積み、平積み、平積み。
ところが今はどうだ。一冊もない。
5、6件探したが、ない。おそらくヒットが落ち着いた時期だったのだろう。
新たに追加注文されることもない。そんな時期。あるいは増刷準備中だったのか。

「本は気に入った時に買っておく」――


さて、まだ夏休みである。
一つ足を伸ばして、都市部の大型書店へ。ココならあるだろう。

そしてまさしく、出会いは起こる。

「ループ」はどこ?
ミステリコーナーを隈なく探す。
「リング」、「らせん」は見つけた。しかし「ループ」がない。
平積みコーナーを確かめるが、ない。
文庫コーナーで、
・「麻雀放浪記(2)~(4)」(阿佐田哲也/角川文庫)
・「軍閥興亡史(2)」(伊藤正徳/光人社NF文庫)
をゲットした。

再度、メインを求め平積みコーナーへ。

やはりないモノはない。
…いや、あったのだ。

素晴らしい出会いが、そこにあった。
山際淳司の顔が、そこにあった。

「急ぎすぎた旅人―山際淳司」―著者・山際澪(講談社)

やまぎわ・れい?たぶん奥さんかな。ウン当たってた。但し、レイではなくミオさん。
ページを捲ると、冒頭に数枚の写真が載っている。

発行日を見る。
8月29日初版。
おいおいメチャ新刊じゃん!


@偶然と必然@
この夏、旅先で淳司さんと、そして「ループ」を求めた先で澪さんと出会った。
それは素敵な感動であった。

本書の感想と、この偶然さを澪さんに伝えたい、と思った。
澪さんにしてみれば迷惑な話かもしれない。
でも、手紙を出そうと決めた。
・本書発売一ヶ月ほど前に旅先で淳司さんに出会ったコト
・そして全くの偶然で本書を手にしたコト
ただそれだけを言いたかった。

そして、手紙を書き出す。


連鎖は、そこで終わらなかった。


内容確認のため、「急ぎすぎた旅人―山際淳司」をパラパラと捲る。

ふと、あとがきを読む。
その終わり方。幕の閉じ方。

「ハッピーバースデー山際淳司さん。
          1998年7月29日 山際澪」

7月29日。

1998年7月29日。

何をしていた?

沖縄で――
図書館に行って――
そして、、、山際淳司と出会った。


彼の誕生日に!
彼の妻が原稿を書き終えたその日に!
僕は、山際淳司と出会った。


偶然の三重奏――


人生の、ループ体験。


読書って良いな、と実感した夏。


(完)


□ 参考 □
【山際淳司】スローカーブを、もう一球/角川文庫/「江夏の21球」収録
【山際淳司】山際淳司スポーツ・ノンフィクション傑作集成/文藝春秋
【山際淳司】男たちのゲームセット―巨人・阪神激闘記/角川文庫
【佐野正幸】1979年日本シリーズ、近鉄vs広島 もうひとつの「江夏の21球」/新風舎

【山際澪】急ぎすぎた旅人ー山際淳司/講談社

★【鈴木光司】「リング」/「らせん」/「ループ」/「バースデイ」(角川文庫)



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