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カテゴリ:冬のソナタ
メインタイトルにつづくのは、雪遊びのシーンである。 この一連のショットの特徴は、モノクロームの映像だ。 モノクロームといっても、単純なB&Wではない。 メインタイトルカットと色調を合わせたような、青紫の色味を感じる。 否、冒頭の2カットではあまり感じなかったが、オープニングは最初からモノトーンだった。モノトーンの色味が微妙な彩りがあったから、ここまで気がつかなかったのだ。 モノクロームというと、私は、「ペイトンプレイス物語」(1977)を思い出す。ミア・ファーローとライアン・オニールの主演で、TBSテレビで11時過ぎに、長らくオンエアされたのを覚えているだろうか。ロドニーを愛し続けたアリスン…。あの作品は、セピアトーン(赤茶)だった。 ペイトンプレイス物語は、ソープオペラの金字塔であり、その存在をユン・ソクホ監督が知らないとは考えられない。 観客を日常生活から恋愛ドラマへの世界へ導く境界領域ともいえるオープニングを、モノトーンとしたことは、この作品を考える上で、重要なことかもしれぬ。きっと、監督は全編をモノトーンにしたかったに違いない。 ☆ 作品をモノトーンにすることによって、何が起こるかといえば、現実の生々しさが抑制され、ソフトな表現になるということだ。 それは、ビデオとフィルムを比べる場合も同様である。 たとえば、人気時代劇に水戸黄門がある。この番組は、ずっとフィルムで収録されていたが、ある頃からビデオになった。すると、なんとも拭いようのない違和感を感じる。 その原因は何かといえば、ビデオがありのままを映してしまうので、時代劇という嘘を許容しないのである。 ビデオの時代劇を見ていると、どこか劇場中継を見ているようで、作品の中にはいっていくことができぬ。 NHKの大河ドラマであれば、大掛かりなセットに圧倒されて、そのようなことをあまり感じないが、チープな設定では、その嘘が気になるのである。 ☆ 思えば、「ペイトンプレイス物語」は基本的に白黒作品であり、それにセピア加工を施したにすぎない。 ユン監督は、ソフトな表現で全編を綴りたかったに違いないが、色彩表現に背を向けて全編を構成することは、いまのテレビ界ではなかなかできなかったに違いない。 そこで、彼が選んだ手法は、「とばす」ということ。 その一例を、私は、オープニングの雪遊びのシーンに見る。 ☆ いうまでもなく、映画はフィルムであり、テレビはビデオである。 その違いは、アナログ的なフィルムとデジタル的なビデオという考えもあるだろうが、実は、もっと大きな違いがある。 それは、センシトメトリー曲線の違いである。 つまり、一定の光量で撮影するとき、フィルムでは、露出の値を一定値以下に絞ると何も映らないが、ビデオの場合は、露出の値を一定値以上に解放すると何も映らない。というそれぞれ異なった特性を持っているということだ。 簡単にいえば、フィルムはつぶれやすく、ビデオをとびやすい。ということ。 だから、フィルムの映画のフェイドイン&フェイドアウトでは黒を使うが、ビデオでは白を使う。 このような特性を持った記録媒体を扱う現場がどのような規範で動いていくかといえば、映画の撮影助手はつぶれることを嫌い、露出を開け気味に撮影することであり、ビデオのエンジニアはとぶことを嫌い、露出を閉め気味で撮影することである。 実際、曇天の露出が定まらない撮影で、フィルムの撮影助手は、何も映っていないという最悪の場合を避けるために、露出を開け気味で撮影する。それがそのままラッシュとして焼かれると、スタッフから、「フランス映画じゃないんだから」などという不平を浴びる。 たまらず、撮影助手は、ラッシュの二度焼きやタイミング補正を願い出るが、それが果されることは少ない…。 同様に、ビデオの現場では、「とぶ」ことを避けながら撮影作業が行なわれる。アマチュア用のビデオカメラにも、とんでいる箇所がゼブラで示されるものもある。 ことほど左様に、ユン・ソクホ監督が選んだ「とばす」という手法は、ビデオエンジニアにとっては悪夢なのだ。 だが、このオープニングシーンでは、オリジナル映像にハイコントラスト処理をして、とばしている。 だが、このような象徴的なシーンばかりでなく、ソクホ監督が「とばす」手法を好んでいることは、今後も指摘することになるだろう。 ☆ スローモーションには、2種類あって、ナチュラルスローという、スローモーションを感じさせないやり方と、ここで採用されているような、明確にスローモーションを認識されるやり方。 メインカットでしんしんと降っていた雪が、その速度を変えている。 スローモーションがかかることによって、BYJとCJWの芝居がどのように変質しているのか。 そのあたりは、それぞれが鑑賞すればいいのだと思う。 ここではjust雪遊びだ。 目的追求型作業ではなく、手段追求型作業である。 ま、遊びとは、そういうことなんだけど、続くシーンを考えると、ここではそのように分析しておきたい。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2007年03月17日 19時32分12秒
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