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宮城谷さんの作品で次に選んだのは「介子推」。実在の人物とされながら、どんな人物だったのかほとんど伝わっていない介子推。そのくせ中国では敬愛されているという、謎の多い人物である。
結論から言うと、今ひとつのめりこむことが出来なかった。期待をしすぎたんだろうか。山の精の祝福を受けているようなニュアンスで始まったが、時により生臭く、時により高潔すぎ、一人のまとまった人格として捉えにくいのだ。 特に、政界に絶望して去るところ、ここに介子推が全中国的に敬愛される理由があると思うのだが、書ききれていない。 結局他者が栄達していくのを見て、派手に自分の功を喧伝しなかった自分を引き立ててくれないのを恨んで去ったようにしか受け取れないのである。 ずっと従ってきた相手が、周囲の思惑で穢れていくのが見えるのなら、それを正すのが真に君主を敬愛するものの務めであるだろう。繰言を並べて身を隠すのは、どうも潔くない。そんな人間がずっと敬愛され続けるだろうか。どうにも納得できず、引っかかるのである。 魅力的なキャラクターは多勢出てくるし、話自体は面白いのだが、作者も介子推自身をつかみきれなかったのではないだろうか。 あとがきを読むと、他の作品ではなかったくらい、筆が難渋したということである。しっかりとキャラクターが掴めていれば、話は自然につむぎ出されてくるものだから、やはり介子推というキャラクターを掴みきる前に、話を編み始めてしまったのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
February 6, 2005 06:07:34 PM
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