タクシーは怖い!!
ウルグアイのモンテビデオでのこと。私は臆病だからあまりタクシーには乗らないようにしている。おもにバスを利用している。とはいってもどうしてもタクシーを利用しなければならないときがある。この時がそうだった。飛行機の時間が極端に早くバスの運行時間前なのだ。仕方無しに泊まっているホテルのフロントに信用の置けるタクシーを頼んでおいた。迎えにきたタクシーは、朝早くにもかかわらず愛想のよい運転手だった。これなら大丈夫と安心してタクシーに乗り込んだ。まだ開けきらない早朝の町を走り抜けるタクシー。町をはずれ海岸沿いを走ったかと思うと急にスピードダウン誰もいない港にタクシーは止まった。運転手は私に振り返って言った。「ここで降りるか、空港に行きたいかおまえ次第だ」私は愕然とした。男の強い口調が冗談でないことを物語っている。私は「どうか空港まで行ってくれ」と頼んだ。運転手は「それなら金を払え」となおも強い口調で言いいながら、いやならこの港に置き去りだという風に私の目を見ながら外に首を振った。「わかったから早く車を出してくれ」私の答えに運転手は手を出した。運転手に私を傷つけてまで金を奪う気持の無いことを感じたので、「空港に着いたら払う」と少し強めの口調で言った。運転手は少し起こったような顔をしたが、前を向きなおして運転し始めた。車が動き出した瞬間に、私の全身に汗が押し寄せ震えが来た。少し冷静になった頭にタクシー代ぐらいしか現地の通過を持ち合わせていない事実にまた震えが来た。タクシー代の金額を投げつけて空港に逃げ込もうか、それとも両替するからと一緒に両替所まで来てもらうか、窓をあけて助けを求めるか。様々な思いが交錯する。運転手は機嫌が直って私に色々と話し掛けてくる。上の空で答える私の頭は空港に着いてからのことだけだった。やがてタクシーは空港に着いた。予想に反して運転手は笑顔で私の行動を見つめる。私は財布の中からありったけ(といってもホテルから空港までのタクシー代ぐらいの額)と日本円の5000円札一枚を差し出した。(本当は1000円札があったらそれにしようと心に決めていたのだが、今もっている札で最小が5000円札だった)運転手はこれじゃあだめだというようなことを私にわめきだした。私はすぐに降りて運転手にそれはとても高額だ、すぐに両替してみろと言い残して足早に空港に入ってしまった。運転手は私の言葉を信じたのかあきらめたのか、追ってはこなかった。悪徳運転手の中でも立ちの好い運転手でよかったと今では思っている。中には殺され身ぐるみはがれるケースも数多くあるという。海外でのタクシーの利用は気をつけたいものだ。