パン屋・その4
パン屋の続き先日行ったベルリンで面白い絵の展示を目にした、私と同様、ゲリラ展示オクサンの買い物の付き合いで行った、ある比較的大きな靴屋さんこれだけ大きくて、チェーン店じゃないのに驚いたチェーン店は大抵個人の絵の展示なんかやってくれない大きな店舗のいたるところに絵があったが、なかなか探すのが大変靴の派手さに絵が負けている、まるで隠し絵みたいに上手く同化しているものももしかしてそれがコンセプトだったのかな、私は時間つぶしに結構楽しめたさてパン屋名刺代わりの連絡先チラシは、持って行くたびになくなっていたパンを買う人々はやはり気持ちにも時間にもけっこう余裕があるのだろうかそれとも店員が少ないため順番待ちの暇つぶしか、まあいずれにしてもよい感触絵にはあえて値段はつけなかった店員の女性は「お客さんで、値段を知りたいって人が時々いるよ」と言うが、何ともかんともあまり気が進まない小さい絵とはいえ、パン一個(30円より)の1000倍以上の値段は誰も見たくない朝のよい気分、焼きたてパンのよい香りをぶちこわす実際、数人はきちんと電話で問い合わせてきた、それが正しい2ヶ月近く掛けさせてもらって、結局1枚も売れなかった、まあそんなもんだマイスターは申し訳なさそうに、やっぱりパン屋じゃダメだろう、と肩をすくめるそんなことはない、手ごたえには満足、大感謝パン屋展が終わってしばらく、またどこかの展示のため、絵を持って歩いていると「あなた、パン屋で展示してた人だね!」と、突然、近所の紳士が声をかけるそしてその人は次の展示会に来てくれて、買ってくれて、、、次の展示会にも、次の展示会にも、、、今でも展示会のたびに来てくれる毎回買いはしないにしても、毎回来てくれて、友達も誘ってきてくれる他の常連さんにも、初めてアキラの絵を見たのはパン屋だった、という人が多くいる私の常連のお客さんの多くは今でも近所の人々ベルリンでは半径約1キロ以内に15人近く思い当たるそれはアウグスブルクでも同じ、コツコツ一人づつ増えてゆくお客さんほぼみんな魚屋の近所の人々、半径500m以内にすでに10人はいるチェーン店が世界中を埋め尽くす今の世の中グローバル化というのか、世界中どこへ行っても同じ店、同じブランド同じレストランに同じホテル、同じスーパーに同じ家具、同じライフスタイル食べているもの、身につけているものがみな同じだからこそ「私だけのお気に入り」を探す人も増えてくるだからといって、ネットで遠くのもの、外国のものをわざわざ探す必要はないもし近所にそういったものがあれば、それを手にすればよい、それをまず支援すべきだまた、作る側も、近所、地元でまずそれを提供するのがよいインターネットで自分の作品を世界中どこでも見せられるとはいえそれで商売になるのはごくまれな話、騙されてはいけない、踊らされてはいけないどこか条件のよい場所に「自分の地元」を築けたら理想的、まずはそこから始めようまずは地元から、まずは足元から、まずはパン屋から初心を忘れずコツコツじっくりやっていこう、と改めて思った15年目の夏パン屋の話、終わり写真【地元の空】