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2026年04月05日
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カテゴリ:釣り



日本水産学会誌 78(1), 43-53(2012); 杉浦,田口 滋賀県立大大学院環境科学研究科

今回の論文も諸兄にはかなり興味深いはずだ。それは琵琶湖のバスを解剖して胃の中に何が入っているかを詳細に分析した論文だ。Match the bait 釣りの基本であるこの言葉を実践するならば、まず敵を知ることが重要だ。フライマンのようにその場で魚の胃から内容物をポンプアップするのも手だが(なんでバスではやらないのかな)、ここは研究者の手を借りるとしよう。(なんでやらないかって?たぶんグロいからだと思うよ。)
まずは本研究の目的を理解しておこう。バサーには耳の痛いところもある。

 「琵琶湖の年間漁獲量は外来魚が増加する以前(1970年代前半)の6500トンから漸減し、近年(2005~2009年)は1500~2000トンで推移している。中でもフナ類とモロコ類は1/6および1/25の漁獲量となっており、滋賀県はこれら在来種の種苗生産、放流事業に努めてきたが、資源回復の兆候は見られない。その原因のひとつに放流したフナ、モロコが外来魚に捕食されている可能性が考えられる。
 そこで外来魚の植生を把握するため、外来魚を捕集し、その胃内容物を調査するとともに、糞中のDNA分析により明らかとする。」

 外来魚が在来魚を捕食していることはまぎれもない事実だ。一方で在来魚の極端な減少が全てバスのせいかと言うと、そんなことはないという研究結果も出ている(そのうち公開するつもり)。ではどの程度、餌にされているかは科学的調査により明らかとなる。

「調査水域は琵琶湖内湖の野田沼および江面川。面積0.8haで外来魚が多く生息し、ルアー釣りのスポットとなっている。2010年6月17日から9月10日まで、時間は10:00~17:00に投げ網で採捕した。オオクチバス、ブルーギル共に1日5~10匹を採捕し、合計オオクチバス152匹、ブルーギル74匹について胃内容物の調査を行った。
 内容物のうち、外形の残っている魚体については体長等を記録し、判別困難な内容物については耳石形状により種別判定を行った。特にフナについては、放流されたフナには耳石ALC標識を施しており、天然個体か放流体かの判別が可能である。
 さらに外来魚体を解剖し、肛門から採取した糞から餌生物由来のDNAを抽出し分析した。分析法にはqPCR-SSP法、クローンライブラリー法を用いた。
 このように検出した外来魚の摂餌生物種の内訳を、調査水域の魚類相と比較し、外来魚の各餌生物に対する摂餌選択制を求めた。」

 さあ耳慣れない言葉がたくさん出てきたよ。DNA分析法については置いといて(説明が大変だし、第一よく知らないし)、ここでは耳石標識なるものを説明しよう。耳石とは魚の頭部にある1対の骨で、成長に従い大きくなる時に年輪のような輪を作っていく。魚種によって形が違い、年齢や環境によって大きさや日輪(成長リング)も違う。耳石ALC標識とはこの性質を利用して、養殖魚に育成温度パターンや餌等により独特のリングを作ることを指す。もちろん魚を解剖しないと分からないが、いつどこの養魚場から放流された魚なのか識別できる。今放流されている魚はサケマスでもフナでも、ほとんどの魚に耳石標識が付いており、そのコードも公開されているらしい。そのうちのALC標識とは蛍光物質により特有のリングを作って、放流する魚を特定できるようにしたものだ。たいした世の中だねぇ。
研究に戻ろう。

「Table.2に調査水域において四手網と投網で採捕された魚類の数を示す。このうち在来魚は、ヨシノボリ、タモロコ、カネヒラ、ドジョウ、フナの稚魚等が多くみられた。魚類以外ではスジエビ、ヌマエビ、アメリカザリガニ、カエルの幼生、タニシが多く見られた。
 投げ網で採集したオオクチバス全152尾、体長9.2~41.9cm 体重20.0~2025g。ブルーギル全74尾、8.2~13.0cm 体重26.3~120.7gであった。このオオクチバス152尾とブルーギル74尾について、胃の内容物を分析した。 
四手網ではオオクチバスの稚魚が214尾、ブルーギルの稚魚が243尾以上採集された。」



「Table.3に解剖したオオクチバスの胃の内容物をまとめた。オオクチバスの胃内容物は14%が空胃、77%が魚類を捕食。ヨシノボリが22%、アユが17%、フナが13%。エビ類が49%であった。」



「同様に解剖したブルーギルからは74%で植物性餌料、昆虫、貝、エビ、ヒル等多様な生物が確認されたが、魚類は2匹のみで、ヨシノボリであった。」




オオクチバスの摂餌選択性指数を計算したところ、アユ、ワカサギ、ハゼに対する選択制が高く、フナやドジョウは低い。さらに四手網でオオクチバスやブルーギルの稚魚が多く採集されたにも関わらず、解剖したバスの胃内容物からはそれらは検出されていない。

 昼間の透明度の高い水中では、オオクチバスが鮎を捕食することは難しい。アユは遊泳力、視力ともオオクチバスに勝っており、朝夕の薄明り状態の下か、濁った水中でなら捕食できるだろう。また冷水病に罹患する等で弱った鮎なら捕食される可能性がある。

 オオクチバスのエビ類に対する摂餌選択性は、スジエビに対して高く、ヌマエビはほとんど捕食していない。逆にブルーギルでは、ヌマエビのDNAが多く検出され、スジエビとテナガエビは全く検出されない。これはオオクチバスの視力は昼間弱いが、夜間でも大きく悪くならないため、夜行性のスジエビ・テナガエビを見つけやすい。一方ブルーギルは昼間の視力はよいが、夜間は大幅に低下する。またブルーギルは植物性餌料を多く取るため、水草に住むヌマエビに対する選択制が高くなると考えられる。」

 どうですか。めっちゃ参考になるでしょ。バスを狙うならアユ、ワカサギ、ハゼカラーだよ。更にクリーンウォーターの真昼間にアユルアーを投げるのは考え物ということも示唆されている。やるのなら傷ついたアユをイミテートするのが得策だ。
 そしてエビ。真昼間にはエビも薄い線みたいだよ。まあワームは何をイミテートしているのかよく分からないものも多いので、あまり意識しなくてもいいのかも知れないけどね。ギルや子バスも食べていないようだ。

「Fig.1にはオオクチバスの体長(x軸)と被食魚の体調の関係を示す。両者の間には正の相関が表れており、大型のオオクチバスは小型の魚類を捕食しない傾向にあることが示された平均すると、体長150mmのバスは30mmの魚を食べ、300mmのバスは80mmの魚を食べている。大型魚は小型の餌生物を捕食しない
 また餌魚のサイズと追いかけ距離との間にも正の相関がある。すなわち小さい餌は近くないと捕食しないが、大きな餌ならば離れた距離からでも追いかけて捕食する。濁度が高くなると小さな餌を捕食しなくなる。小さなヨシノボリが多く捕食されていたのは、捕えやすさや捕食者の好みが関係していると思われる。」


 Big Bait, Big Bass! なぜか知らんが喜んでいるご仁もいるのではないか? 大丈夫。あってますよ。正解ですよ!求められた近似式は、
Y=0.355x - 20.353
なので、400mmのバスなら120mmのルアー、500mmのバスなら157mmのルアーとなる。
さて杉浦らの結論を示そう。

「結論として、1年魚以上のオオクチバスは比較的大型の魚類、ヨシノボリ、スジエビなとを捕食しており、在来魚稚魚への食害は低い。しかし0年魚のオオクチバスは孵化後34日で体長25~30mmとなりプランクトン食から魚食性に転換、30~40mmとなる7月以降には盛んに多種の稚魚を捕食するようになる。体長40~50mmのオオクチバスは、14mm以下のコイの稚魚を1日に10~18匹捕食する。よって繁殖期に在来魚の小型稚魚を放流することで1年魚以上のオオクチバスの捕食を避け、7月以降では0年魚に捕食されない程度まで放流魚が成長していることが必要となる。」

 なるほどね。バスの0年魚が小型のフナを捕食しているかについては推論の域を出ないのだが、成長期のバスが大量の小魚を捕食していることは確かなので、リスクを減らす方法としてはリーズナブルと言えよう。
 バスと在来魚の関係については、近いうちに十分考察してみたい。論文は山ほど出ている。



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最終更新日  2026年04月05日 00時00分04秒
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