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カテゴリ:ブックス
なかなか痛快な作品でした。
どうせ、町工場のありえないようなサクセスストリーを書いた本かと思えば、そこはさすがに「池井戸」作品。 なかなかリアリティーを持ってはらはらドキドキできる作品です。 研究者の道をあきらめ、家業の町工場を継いだ主人公。製品開発で業績を上げながらも、水素エンジンの開発と特許取得など研究開発に大きな資金をつぎ込む。 堅実に業績をのばしながらも、直接商売につながるとは思えない技術に夢をつなぐ社長と、一方で、安定した業績ひいては安定した生活を手にしたい従業員には、すれ違いがある。 そんななか、特許侵害で訴えられるなど、資金繰りに窮する大ピンチが訪れる。その一方で、今度は大手国産ロケットメーカーが、水素エンジン特許を買いたいと申し出てくる。 特許を売れば、ピンチを脱出できるが、夢を持ってやってきた社長としては、単純に売ってしまいたくはない。この一件が、従業員との溝を深める結果となるが・・・ 直木賞をとったこの作品。 個人的には、半沢直樹(オレたちバブル入行組)よりも好きです。 やはり、銀行という組織内での葛藤を描くものよりも、失敗しながらも夢を持って立ち向かっていく社長と従業員の葛藤、そしてそれが共通の夢になるプロセスを応援するほうが、すがすがしいものです。 中小企業、ベンチャーが夢を持って独自の技術を追求していけるようにならないと、日本の将来は明るいものにはならないでしょうし。 クラウドによるITの導入、クラウドファイナンス、三次元プリンター、シェアオフィス、クラウドソーシングなど、起業に関するコストは飛躍的に下がってきました。 にもかかわらず、起業件数が増えないのは、日本では、結局最後は大企業に負けてしまうという固定観念と過去の実績があるからでしょう。 でもこれからは変わってくるのではないでしょうか? もはや、大企業も、社内で新規事業を育てるだけでは、グローバル競争に勝てないことは明白です。 日本の大企業の経営には、不確かな技術に思い切った決断をするような意思決定プロセスはなかったのでしょうが、これからはこれではだめだと気が付き始めていると思います。 グーグルでさえ、自社内部でゼロから育てた事業は少なく、あのアンドロイドも、技術を見込んで小さなベンチャーをとりこんだ事業です。 アメリカでも、ベンチャーが生き残って、大きく成長していくのは限られているでしょうが、ベンチャーの技術と人が、勝ち残る企業に集約され、脈々と受け継がれていくというサイクルがあります。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2014.07.19 17:58:33
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