054783 ランダム
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昔話その1・ 海に行きたい!

あれは小学校六年の春のことだった。
日曜の朝。まだ肌寒い。
起きたら、ムショーに釣りがしたくなった。
しかしこの時まだ一人で海に行った事が無かった。地図を広げてみる。
よし、行ける!
と思ったので急いでリュックに釣竿や仕掛けやエサを入れて出発した。
かなり朝早く、親はまだ寝ていたので、そーっと家を出た。

近所の人にもらったマウンテンバイクにまたがり、こぐ!こぐ!
一人旅は不安があるが、初めての土地に一人で行くのは楽しい。
リュックから長い釣竿が飛びぬけている。それがチャリをこぐうちにずり落ちてきて、ぐぐぐっと元の位置にもどし、またずり落ちてきて・・・の繰り返しだった。
犀川沿いのサイクリングロードを下流に向かえば海がある。
何度か止まって地図を見て進んだ。
朝は寒かったががんばってチャリをこぐので暑くなり半袖になった。
朝日がまぶしい。風がきもちいい。犀川がキラキラ光っている。

大きな橋の下をくぐった。
日陰になってるので、少し休んだ。
川まで降りて行って、たそがれていると、足元に誰かの使いかけのせっけんがある。
ん?なんでこんなとこに石鹸が・・?
ふと後ろを振り向くと、浮浪者がダンボールやビニルシートで立派な家を構えている。あまり見たことが無かったので、びっくりして怖くなってすぐに出発した。

途中で近道をしようとして、古い家がいっぱいある集落に突入した。
そこは古くからある港町みたいな感じで、軒先にはカレイの干したものが吊り下げられている家が多くある。
港町で迷っていたら、おばあちゃんに「おはよう~」といわれた。
僕は「おはようございます!」と返した。
なんか嬉しくなり、道行く人に「おはようゴザイマス!」と言ってみた。
みんな笑顔で返してくれるから嬉しかった。
年期の入ったおばぁちゃんに
「すいません~海ってどっちですか?」
と聞いた。
「あぁ~あっちやよ。一人で行くんか?」
みたいな事言われた。
そんでようやく海に着いた。

早速釣りをした。
確かサビキの仕掛けだったのでアジとかを狙ったんやと思う。
しかしイキナリでっかいのがかかって、ヤベ!やった!!と思った。
すごく引きが強いので、ドキドキした。
やっと上がってきて、取り込もうとしたら、最後の最後でバレてしまった。海に帰っていく魚を見て、あ~あ・・・とがっかりした。

多分僕が今まで釣った魚で一番くらいにでかかった。
と、釣り人はよくこのような発言をする。僕もその一人なのかと思うと恥ずかしくなったので、赤面した僕の顔を見るのはヤメテクダサイ。

エサが無くなったので、またチャリにまたがって帰った。

帰り道、今度は小さめの橋の下を通ろうとしたら、中学生か高校生の男女がいる。
だんだん近づいていくと、女の人が少し高くなっている段差に乗っていて、男の人は女の人に向かって密着して立っている。
僕の存在に気づくと、男はズボンのチャックを「ヤベ!」みたいに急いで閉め、ベルトをカチャカチャ閉めていた。何をしていたんだろう・・・。何も知らない僕はその後もずっと彼らの行動が頭から離れなかった。


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