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真珠養殖事業創業者の栗林徳一氏は1953年より28隻からなる船団を推してアラフラ海の真珠貝を採取していたがこの事業の有望性を信じてこの事業を提唱した。 岩城博氏はわずか5トンのボートに身をあずけ西豪州のインド洋沿岸、オーガスタス島に真珠養殖の適地を発見。 以後1956年五月に大球丸の小船に人も設備も積み込んで四日市を出港させたが、出航を見送った誰の目にも非常な冒険と云う感は拭いきれなかった。しかし前末この真珠養殖事業は順調の経路をたどり、大いなる成果を挙げた。(栗林徳一、ケーエフデュロー、岩城博記念像建設会) タスマニア来の友人のヨッシーがここに長期滞在していた。 彼は真珠養殖の仕事を探しにタスマニアからブルームへやってきた。ここでは多くの外国人が真珠養殖の仕事をしている。10日間海の上で仕事をする船もあり、僕の知り合いの女の子も沖へ出ている。 彼は僕が今まで会った中でももっとも自然、特にサカナを愛する人だ。 つまりサカナくんである。顔も見れば見えてこないこともない。 大学ではアクアカルチャーを学び、釣りも僕よりずっとうまい。サカナについての知識も相当なもの。 僕の専門分野を挙げるとすれば一位がサカナ、二位がバイク、三位がキャンプという順位になるが、彼はそのぼくの中の一位をゆうに超えているという僕のめんぼくまるつぶれ、面汚し甚だしいヤロウなのだ。ヤロウはしかし24歳、サカナハカセ、僕がどう足掻いても尊敬すべくセンパイなのであった。 そんな彼とブルームで会えたのはサカナ大好き海大好きな僕としてはとても嬉しいことだった。 そしてもう一人、カナナラでほんの2、3日だけ一緒だったやーちゃんとの再会も果たした。 彼女は海外が好きでお金を貯めては飛び出してくる人で、そのキャラクターは素晴らしい。 鈴木サリナをカジュアル化した外見とは対極に、マチャミのようなドスッポヌケリアクションをぶっかます。 それでいて聞き上手で空気の読める人。 頼れるし愛想がよくて人付き合いがウマイ。おもしろナイスな女性No1に推挙したい。 そんな二人の人物とここブルームでよく遊んでいる。 ある晴れの日、三人でタクシーでジェティー(真珠養殖船や漁船が着く巨大桟橋)に釣りに出かけた。 そらはあくまで澄み渡り、海は今日も南国風マングローブ林の水色。そう、丁度ガリガリくんの色に近かった気がする。(日本のアイス早く食べたい!こっちの甘すぎる!) サカナくんヨッシーがその鋭く大きな眼でサカナはいねぇがー!と穴が開くほど水面下を睨む。 釣りを開始してしばらくすると、やはりこの三人となるとハッピースタッフが取り出される。 うーん、ボン釣り最高。 よっしーは大好きな釣りを止めて座り込む。 やーちゃんはというと「あたしゃバッコンバッコンきてるわー!」とか言って釣りに飽きて座ってポッカーンとしている。 ぼくもガッツーンと効いてアホな顔してヨッシーも「あー今改めてわかった。俺キマってるわー!」などとおもしろい発言の後皆大爆笑で釣りをほとんど放棄して、陽が沈むと同時に明るく大きな月が出た。 アーヨイヨイ、夜になり、ジェティーの付け根にあるビアガーデンでお酒を飲めば楽しい楽しいエッチャラコイのドンガラピーな夜は更けていった。そしてぼくのお気に入りの一張羅用のシャツは犬に噛まれてデカい穴が二つも開いたが、今夜は気分がいいのでどーでもいーもんねー! 次の日から三日間は一ヶ月に一回の「月への階段」が見れる日だった。 二日目はやーちゃんと一緒に行った。 ディジュリジュのブォーブォーという演奏が始まり、ホテルの電気が消される。 遠くの方から一点が不気味に明るくなり、ゆっくり、しかし確認できる速度でオレンジ色の月が顔を出す。 次第にまんまるお月様は現れ、その月光が干潮の干潟に反射し、その様子はちょうど月へと向かう階段のように綺麗な帯状になった。 演奏はアコースティックギターのアルペジオ奏法になり、またもやキマった二人はスピーカーの近くへ行きお月さまを拝んだ。ハハァー。 ケーブルビーチの夕日についても書かなければならない。 僕は1リットルの牛乳をのんでいて、捨てると環境破壊になるかな、とヨッシーに尋ねたら全部飲んでくれた。 ヨッシーは仕事があるからといって行ってしまったので一人でケーブルビーチで開高健を読んで夕日を待った。 このビーチはすごく平べったくて広く長い。 大きく分けて二つのゾーンに分かれていて、家族、友人、恋人同士がパチャパチャやるゾーン、小規模な磯に隔たれて反対側は車が進入できてプチヌーディストビーチゾーンである。 オージーのオヤジのチンコポロリを2、3回見てしまい、ぐったり疲れてしまった僕はキャメルライドの控えラクダを見に行った。 キチンと一列になって座って客に座られるのを待っているのかと思いきや「ダリィ」と大あくびをしているものがほとんどで、まったくやる気の見えないやつらだった。 陽はどんどん落ちていった。 親指くらいの巻貝がズリズリと道跡を残して波打ち際を進んでいく。 陽は色を変えてインド洋へ沈もうとしていた。 水面ぎりぎりを二羽のカモメが滑っていく。 ヨットは白い帆を山吹色に染めた。 陽は半分沈んだ。 水面はまぶしく金色に、辺りは赤く染まった。 マヌケなラクダ達も客を乗せてしっかり行進していた。 海で遊ぶ子供達も、フルチンオヤジ達も、この瞬間だけは全員一致で美しいと思ったに違いない。 陽は完全に落ち、観光客は足早に帰っていく。 オレンジ色の空の焼け跡は予想できなかったほどヨコに広がり、水面と空とをくっきり分けていた。 振り向くと深い紺色の夜空が大陸の方で待機していた。 僕は暗くなるまで海をずっと眺る事にした。 ここは真珠と月と夕日の町、ブルームである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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