2007/06/20(水)21:43
「極短小説」(55 fictions)浅倉久志選訳
とっても短い短編小説集です。
カリフォルニア州サン・ルイス・オビスポの週間新聞「ニュータイムズ」の編集者スティーブ・モスが紙上で行った「55語の小説」コンテストの中から浅倉さんが157編選んで訳した文章ひとつひとつに和田誠さんが挿絵をつけています。たった55文字(英単語で)で書かれてるけどこれがめちゃくちゃおもしろい!短いから読みやすいのだけどしっかりそこにストーリーとオチがあるんですよ!その中からいくつか紹介しますね~
臨終のメッセージ
血まみれの包帯におおわれ、何本ものチューブを体にくっつけられたまま、交通事故の被害者は、ベッドの上からかたわらの司祭に狂おしく身ぶりした。患者はもう口もきけないので、必死にメモを走り書きした。書きおわり、ひとつあえぎをもらしたかと思うと、そのまま息を引きとった。
死者のために最後の祈りを唱えおわってから、司祭は瀕死の男が書きのこしたメッセージを読んだ。「あんた、チューブふんでる」
一般の読者だけでなく作家にも書いてもらっています。スヌーピーの作者、チャールズ・M・シュルツ
暗い嵐の夜だった・・・・
「一度だってどこかへ連れていってくれたことがないじゃないの」と女はぐちをこぼした。
「こんな暗い嵐の夜に、どこへ連れていけるというんだ?」と男は答えた。
車のローンも、家賃も、滞ったままなのだ。
飼い犬のレックスは、自分がひと肌ぬぐしかないと考えた。彼はタイプライターの前にすわり、ベストセラーを書こうとキーをたたきはじめた。
「暗い嵐の夜だった・・・・」
Oヘンリーの「賢者の贈り物」に対して・・・
愚者の贈り物
あのとき、ふたりは大きな歓喜を味わいながらクリスマス・プレゼントを交換したのだった。すべてがとても正しいことに思えてならなかった。最近の自分たち夫婦の経済状態を考えると、たいへん理にかなっているような気もした。つらい時世だが、愛は咲きほこる、と。
だが、いま夫はふとこんな思いにかられた。「妻の髪の毛はまた生えてくるが、わたしの懐中時計はもうもどってこない!」
外はきびしい十二月で雪が降っていた。
ワタシが一番、大笑いした一編
登る
三人の男がビルの九十階まで登りはじめた。エレベーターは月曜まで動かないというのに、サムはこの週末に整理しなければならない書類をとりに行く必要があったからだ。三人の男は際限なくつづく階段を登るうちに、いつとはなく悲痛な物語を交代で話しはじめた。九十階にたどりついたとき、サムの物語はこの上なく悲痛なものだった。
「鍵を忘れてきた」サムはあえぎながらそういうと、ばったり倒れて息をひきとったのだ。
原文が55単語以下という制約が厳格にあるので訳された浅倉さんも自分に制約を課し、200字以内におさめたそうです。今こうして写しているとひらがなの使い方も字数制限のための工夫かしらん?と思った次第です。なんだかとても楽しそうに訳されています(^^)
55文字、日本語で200字、原稿用紙半分。ワタシも何か書いてみようかなあと思っているところ。やっぱり文鳥を主役にすべきか?カンタンそうですが、なかなかむずかしいもんですよね。作れたあかつきにはブログにて公開したいと思っています。(いつのことやら・・・)