「ダレン・シャン」感想

　本作といい「トワイライト」といい、最近のハリウッドは美少年ヴァンパイアブームなのか？日本では特に珍しくもない設定だが、向こうには我が国で言う少女漫画に当たる文化がないため、新鮮に映るのかもしれない。 　さておき。小説・コミックスの売り上げが、日本だけで累計６４０万部を超える人気シリーズだけに、どの程度のモンかと多少構えて臨んでみたものの、てんで肩透かしを食らわされた気分。まるで日テレの土曜夜９時枠でジャニーズの新人がやるようなドラマの第１、２話、もしくは初回２時間スペシャルを、ただデカい画面で見せられただけという印象しか残らなかった。 　優等生で女の子にもモテモテの少年ダレンが、親友の命を助けるためにハーフヴァンパイアになるのはまあ良しとして、そこに至るまでなんと冗長な事。そのきっかけとなったサーカスにしても、なぜあのデブゴンはわざわざチラシを悪趣味な車の窓から投げ捨てるなどという、回りくどい事この上ない方法を取ったのか。「興味あるか、ボケ」と言って捨てられたらどうするつもりだったのか、まったく非効率的でナンセンス。 　また、ハーフヴァンパイアになったがために、家族や友人と永遠に別れなければならないという、それを軸にドラマツルギーが組み立てられるぐらいの、美味しい設定があったにも関わらず、まったく使いこなせていなかったばかりか、驚くほど簡単にサヨナラ。こうした方がスタイリッシュとでも思ったのだろうか。制作サイドのセンスを、強く疑う。 　その件に限らず、全体的に緊張感も高揚感も皆無で、浮き沈みナシの終始一定のテンポ。内容や撮影法に、これといった斬新なアイディアがあるわけでもなく、ヴァンパイアの能力も、特別なにが凄いのかいまいち分かりづらい。 　加えて、中途半端なＣＧと中途半端なワイヤーアクションの、白けた殴り合いを披露するばかりで、お世辞にもコピーにあった「止められない刺激」など、微塵も感じられなかった。正直、この程度でアクションムービーを自称するなら、「ゴセイジャー」や「仮面ライダーＷ」の方がまだ見応えがある。 　　 　もう少し付け加えるなら、フリークスサーカス団の存在が、まったく正体不明なのもいただけない。ヴァンパイアやヴァンパニーズとの関係は？どうして中立（ややヴァンパイア寄り）なのか。そもそも彼等は人間なのか。それとも魔物の一種なのか。 　大体、フリークスとは本来「奇形者・障害者」と表す言葉で、つまり本作を観る限り、作者はそういう人達を「＝魔物」と考えているとしか思えない。よくその手の団体からクレームが来なかったなと、妙に感心と同時に、その団長役に、よくもまあ日本アカデミー最優秀主演男優賞受賞者であり、今や日本を代表する俳優をキャスティング、しかもあんなふざけたメークまでさせたなと、軽くイラッと来てしまった。 　渡辺謙さんの話題が出たのでついでに書いておくが、サルマ・ハエック演じるヒゲ女の吹き替えを担当したLiLiCo、サルマの声にまったく合ってないばかりか、日本語も満足に喋れないとはコレ如何に。何度も言うが、せめて客寄せパンダに使うなら、もう少しまともな芝居の出来るタレントを呼ぶべきだ。 　とにもかくにも、世界観のディテールが設定の段階から穴だらけのうえ、シナリオも無理矢理すぎるわご都合＆不条理だわ、ついでにＥＤのエロカッコいい人の歌もさっぱり合ってないわで、なんともチープ感漂う映画だった。見るからにシリーズ化するつもりだろうが、ただミステリアスなイケメンの兄ちゃんが出てきて、いい話しっぽい事やってたらＯＫみたいな子供騙しにいつまでも金が払えるほど、ユーザーはそんなに甘くない。 　それでもまあ、漫画も出てるから、そこそこヒットしちゃうんだろうな、コレ。あーヤダヤダ…。だいたい、作家にせい漫画家にせい、エッセイか取材モノ以外で主人公に自分と同じ名前つけるヤツに、ロクなヤツいないっつーの。ブツブツ…。 　そんなわけで、小生の、この映画に対する評価は…、 　☆☆★★★－ 　褒めるところがないので、今回は若干厳し目です。星２つマイナス！！ ダレン・シャン（1） 【送料無料】　新品　小学館ファンタジー文庫／ダレン・シャン　全12巻セット 【送料無料】　少年サンデーコミックス　ダレン・シャン　全12巻セット 　ところで、想像するだに身の毛もよだつが、本作が何かの手違いでヒットしてしまったら、日本のアホなテレビマン達なら本気でドラマ化を計画してしまうんじゃないだろうか。初回ゲストにダレンの吹き替えをした山本裕典君が、あのヘビ男役あたりで出演する姿が目に浮かぶ。 　まあ彼の場合は、ヘビじゃなくてサソリなんだけどね（笑）。 30%引きS.H.フィギュアーツ 仮面ライダーサソード