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2005.06.30
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カテゴリ:小説
 

「…ッふざけんな!!!!」
 
 誰もいない教室に響いた声は、おれの怒声と。
 おれが豪を平手打ちした音。
 
 「………ッ待てや、巧ッ!!!!!」
 
 そして、豪がおれを呼び止める声。

 







 『ゆらりゆらり』




 









 豪が、浮気をした。
 とは言っても、おれは吉こと吉貞に聞いたことで。
 

 今朝の事だった。
 勢いよく教室に入ってきたかと思うと、吉がこういった。
 信じられなかった。
 冗談だと思った。




 “豪に彼女ができた”なんて………。





 もともとおれ達はただの“バッテリー”で。
 でも、おれは豪が好きで。
 告白したのはおれから。
 Hしようっていったのもおれから。
 でも豪も『お前が好きじゃ』って。
 『俺は一生お前だけじゃ』って。
 裏切られた。
 所詮、男同士なんだ。
 わかってた。
 いつか豪には可愛い彼女ができるって。

 

 



 気がつくと、家についていた。
 「ただいま」
 そういっていつも通り、家に入る。
 気取られたくなかった。
 特に青波……。
 あいつは、カンだけは異様にいいから。
 
 ドタドタと青波が走ってくる。
 
 「兄ちゃん、おかえり!!!」

 いつも通り、明るい声。
 けど、急に止まっておれの顔をじっと見る。

 「……なんだよ?」
 
 つい、不機嫌をあらわにしてしまった。

 「兄ちゃん、豪ちゃんと喧嘩したん?」

 するどい。
 でも、誰にも気取られるわけにはいかないんだ。
 誰にも…。




 




 ふと、浮かんだ歌。
 

 
明日の事は昨日のせいで

 
昨日のことはあいつのせいで

 
あいつのことはあいつのせいで

 
あぁこの想いを投げ出したい









 ホントにな。
 何もかも投げ出してぇよ。
 豪のことも、……………野球のことも?

 「なんでもねぇよ。」

 歌詞…続き何だっけ?
 思い出せない。
 サビは?

 
 
 思い出せない。
 何も考えたくない。


 「あら、巧。ご飯は?」


 母さんの声。
 うるさいな。
 すげぇ、うるさい。

 「………いらない。」

 そのまま自分の部屋に入る。
 後ろから、母さんの怒鳴り声が聞こえたけど関係ない。
 おれには、関係ない。
 ベットに潜りこむと、精神的にも疲れてたのかすぐに寝てしまった。

 






 




 

 カツンッ
 

 

 カツンッ





 次に目が覚めたのは…いや、起こされたのは小石が窓の縁に当たる音。
 おれを呼び出すためにこんなロミジュリ的なことをするのは、一人しかいない。
 おれが一番会いたくなくて。



 そして、一番好きなやつ。

 
 窓を開けると、予想通り豪がいた。
 「巧、降りてこいや。」
 「嫌だ。」
 反射的に、そう答えていた。
 「ええから降りてこい。」
 「…いやだ。」

 


 そうだ、思い出した。

 
夢を描いているのは雲の勝手で

 
空に届いているのかなぁ?

 
ゆらりゆらり揺れる僕の心を

 
アルバムにしまっとこう

 

 確か、そんな感じじゃなかったか?
 …どうでもいいか。
 「巧。」
 
 豪の声で我に返る。

 「何だよ?」

 豪は一息おいて、一気にまくしたてた。
 
 「俺はお前が一番好きじゃ。世界中の誰より好きじゃ。」
 
 しかも大声で。
 やめてくれ、マジで!!!!!
 いそいで玄関にいく。
 
 「やめろよ!!お前女の子と付き合ってるんだろ!?そんな戯言聞きたくないし。何?おれはお前にとって愛人なわけ?別れるのは惜しいって?」

 今度はおれがまくし立てる。
 こんなに怒りながら話したのは久しぶりだ。

 「そんなんじゃない。巧、お前勘違いしとるんじゃ。」
 
 「何が?おれは吉からちゃんと聞いたんだ。“豪が綺麗な女の子の写真を大事そうに生徒手帳に入れとる”ってな。」
 
 「じゃから、それが勘違いなんじゃ。俺は女の子と付きおうたことは無いし、そもそも、その“女の子”っちゅーのは巧なんじゃ。」

 







 「……は?」

 ヨクワカンナインデスケド。
 おれ?女の子が?

 

 「お前、前に一度女装した事あったろ?」
 「…ああ。」
 
 一度だけ、あったような気がする。

 


 「それを東が写真に撮ってたんじゃよ。」

 










 ああ、そういうこと。
 うん、よかった。




 
僕は言うこの言葉

 
君にだけ伝えよう

 


 
誰よりも大好きな君に





 「豪。」
 「何じゃ?」
 「好きだぜ。」



 END





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Last updated  2005.06.30 21:19:03
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