カテゴリ:小説
「…ッふざけんな!!!!」 誰もいない教室に響いた声は、おれの怒声と。 おれが豪を平手打ちした音。 「………ッ待てや、巧ッ!!!!!」 そして、豪がおれを呼び止める声。 『ゆらりゆらり』 豪が、浮気をした。 とは言っても、おれは吉こと吉貞に聞いたことで。 今朝の事だった。 勢いよく教室に入ってきたかと思うと、吉がこういった。 信じられなかった。 冗談だと思った。 “豪に彼女ができた”なんて………。 もともとおれ達はただの“バッテリー”で。 でも、おれは豪が好きで。 告白したのはおれから。 Hしようっていったのもおれから。 でも豪も『お前が好きじゃ』って。 『俺は一生お前だけじゃ』って。 裏切られた。 所詮、男同士なんだ。 わかってた。 いつか豪には可愛い彼女ができるって。 気がつくと、家についていた。 「ただいま」 そういっていつも通り、家に入る。 気取られたくなかった。 特に青波……。 あいつは、カンだけは異様にいいから。 ドタドタと青波が走ってくる。 「兄ちゃん、おかえり!!!」 いつも通り、明るい声。 けど、急に止まっておれの顔をじっと見る。 「……なんだよ?」 つい、不機嫌をあらわにしてしまった。 「兄ちゃん、豪ちゃんと喧嘩したん?」 するどい。 でも、誰にも気取られるわけにはいかないんだ。 誰にも…。 ふと、浮かんだ歌。 ホントにな。 何もかも投げ出してぇよ。 豪のことも、……………野球のことも? 「なんでもねぇよ。」 歌詞…続き何だっけ? 思い出せない。 サビは? 思い出せない。 何も考えたくない。 「あら、巧。ご飯は?」 母さんの声。 うるさいな。 すげぇ、うるさい。 「………いらない。」 そのまま自分の部屋に入る。 後ろから、母さんの怒鳴り声が聞こえたけど関係ない。 おれには、関係ない。 ベットに潜りこむと、精神的にも疲れてたのかすぐに寝てしまった。 カツンッ カツンッ 次に目が覚めたのは…いや、起こされたのは小石が窓の縁に当たる音。 おれを呼び出すためにこんなロミジュリ的なことをするのは、一人しかいない。 おれが一番会いたくなくて。 そして、一番好きなやつ。 窓を開けると、予想通り豪がいた。 「巧、降りてこいや。」 「嫌だ。」 反射的に、そう答えていた。 「ええから降りてこい。」 「…いやだ。」 そうだ、思い出した。 確か、そんな感じじゃなかったか? …どうでもいいか。 「巧。」 豪の声で我に返る。 「何だよ?」 豪は一息おいて、一気にまくしたてた。 「俺はお前が一番好きじゃ。世界中の誰より好きじゃ。」 しかも大声で。 やめてくれ、マジで!!!!! いそいで玄関にいく。 「やめろよ!!お前女の子と付き合ってるんだろ!?そんな戯言聞きたくないし。何?おれはお前にとって愛人なわけ?別れるのは惜しいって?」 今度はおれがまくし立てる。 こんなに怒りながら話したのは久しぶりだ。 「そんなんじゃない。巧、お前勘違いしとるんじゃ。」 「何が?おれは吉からちゃんと聞いたんだ。“豪が綺麗な女の子の写真を大事そうに生徒手帳に入れとる”ってな。」 「じゃから、それが勘違いなんじゃ。俺は女の子と付きおうたことは無いし、そもそも、その“女の子”っちゅーのは巧なんじゃ。」 「……は?」 ヨクワカンナインデスケド。 おれ?女の子が? 「お前、前に一度女装した事あったろ?」 「…ああ。」 一度だけ、あったような気がする。 「それを東が写真に撮ってたんじゃよ。」 ああ、そういうこと。 うん、よかった。 「豪。」 「何じゃ?」 「好きだぜ。」 END お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005.06.30 21:19:03
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