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2005.07.17
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カテゴリ:小説
 

Your good point

 

 

 

───仲間に迷惑かけて、一人で暴走して・・・そして一人で落ち込んでれば、世話はないな!!

 

ああ、そうだ。

あの時、ドロシーのいう事をちゃんと俺が聞けてれば。

みんなを信じていれば。

みんなに迷惑をかけることなんてなかったのに。

どうして俺はみんなに迷惑をかけてばかりなんだろう───

 

 

 

 

 

ポチャン、と小さく水がはねる音が響いた。
その音に、ギンタはハッと我に返る。
その瞳に、川の淵に座りこんでいるナナシの背中が映った。

「・・・ナナシ?」

ギンタはそう呼びかけ、彼に近寄る。

「何してんだ?」

「釣りや、釣り。なんやみょ~に焼き魚が食いとうなってな。ギンタもやるか?」

その問いかけに、ナナシはそう笑って返した。

「いや・・・俺はいいよ」

その言葉にギンタは首を振る。
そうして、チョコン、とナナシの隣に座り込む。
その様子に、ナナシはキョトン、とし、ギンタへと尋ねる。

「ギンタ、どないしたん? 何か妙に暗いで?」

その言葉に、ギンタは沈黙する。
そうして、小さくこういった。

「・・・ごめん」

「・・・なんで謝るん?」

急に謝られ、ナナシは目をパチクリとさせ、ギンタをジッと見つめた。
ギンタは、小さく言葉を続ける。

「だって・・・俺、みんなに迷惑ばっかかけてる・・・この前だってそうだ。
一人で勝手に突っ走って、結局みんなに迷惑かけて・・・」

「でもあれはもう終わったやろ。ちゃんと責任とって、ギンタが終わらせたやん」

「でも、ドロシーに酷いこと、たくさんいった・・・」

「せやったら、自分やなくてドロシーちゃんに謝らんと」

「そうだよな・・・ごめん」

ギンタの言葉に、ナナシがそう返すとギンタはもう一度小さく謝った。
そうして、沈黙が辺りを包んだ。
水面のウキは僅かに浮き沈みを繰り返し、水面に小さな波紋を作る。
それが何度か繰り返されたとき、

「のぉ、ギンタ」

ナナシが口を開いた。
その声に、ギンタはナナシを振り返る。

「みんな、別に気にしとらんと思うよ。つか、ギンタがそんなに気にする出来事でもないと思うんやけど」

「・・・だって、俺───」

「迷惑かけたってええやろ。いちいちそんなコト気にしとったら、みんな、仲間なんてやっとらんわ」

言いかけるギンタの言葉を遮って、ナナシは言った。
その言葉に、ギンタは言葉を飲み込む。
ナナシは続ける。

「自分、思うんやけどな。ギンタのええトコって、人を純粋に、無防備に信じたり、その人のために行動できるとこやと思う。
せやから、ドロシーちゃんも、アルちゃんも、自分も───『メル』っていうここの場にいられるんやと思うで。
そのええトコ利用されて、迷惑かけられたんならみんな納得しとるよ」

「そう、かな・・・?」

その言葉に、ギンタはそう呟く。
ナナシは大きく頷いた。

「絶対そうやって。そうやなかったら、誰もここにはおらんよ。
大体、そんなんでいちいち落ちこんどるほうがおかしいわ。
そんなん言うたら、自分は我侭でどれだけみんなに迷惑かけてると思うんや」

酒はガンガン飲むし、しょっちゅうウォーゲームはさぼったり負けたりしとるし。

そう続けるナナシに、ギンタは思わずクス、と笑った。
その笑顔に、ナナシも笑う。

「やっと笑顔になったな、ギンタ。ギンタは笑っとったほうがええよ。みんな明るうなるからな───っと」

その時、どうやら当たりがきたらしく、ナナシは慌てて竿を引く。

「ギンタ! こいつはでかいで! 網、用意せい、網!!」

「あ、網ぃ!? どこにあんだよ、そんなもん!!」

「自分の横にあるやろ!?」

「え、あ、あった! よし、こっちは準備───」

OKだぜ! と続けようとしたギンタの言葉は、突如上がったザパァッ、という音にかき消された。
そうやって上がった魚を見て、二人は目を丸くする。
優に体長は3メートルほどあるだろうか。
それほどでかい魚が、自分達の前ではねた。
そうして、その魚が沈むとき、プチッ、と釣り糸が切れた。
僅かな沈黙の後、彼らは顔を見合わせる。

「・・・は、はは・・・」

「はは・・・あはははははっ」

そうして、二人は笑い出した。

「今のはさすがに焼き魚にはできんのぉ」

「でっけぇ魚だった! 俺、あんなの見たことない!!」

「ここの主かものぉ。しゃーない。も一度釣り糸垂らすしかないな」

「ナナシ、やっぱ俺もやっていいか? 釣り!」

「おー、ええで。今用意するから待っとれ」

そう、泉の周りには笑い声が響いていたという。

 

 

 

 

 






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Last updated  2005.07.17 21:30:51
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