491385 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

おもいつくまま きのむくまま(経済指標グラフからみえるもの)

おもいつくまま きのむくまま(経済指標グラフからみえるもの)

大脳の進化について

【命題】

人間の脳は、なぜ、こんなにも大きいのか?

【方針】

基本的なコンセプトを次のように設定してみる。
環境は時間と共に変化し続ける。
獲得形質に質的な優劣は存在しない。
優劣は環境により決定する。





【推論】


ここで、命題の逆を考えてみる。 人間以外の動物の脳がなぜ、人間のように大きくならないのか?

脳容量が大きくて、不都合なこととして、すぐに考え付くのは、脳が大きければ大きいほど、処理が遅くなることである。 脳をLSIと比較すれば分かりやすい。 素子を変えずに面積を大きくしたならば、面積の小さなものより多くの機能を組み込めるが、その分、結線距離と分岐処理が増加し、処理速度が遅くなることは避けられない。

脳の巨大化により、処理速度が低下することは、即ち、運動に伴う身体動作の速度低下を意味する。つまり、運動に伴う身体動作より脳の処理速度が遅ければ、必ず、致命的な事故を起こし、命を失うことになる。この為、生存に必要な動作速度が脳の処理速度の下限を決定し、脳の大きさを制限してしまう。

よって、俊敏な運動が要求される生活環境は動物の脳を肥大化させない制約条件となっている。人間以外の動物の脳が大きくならないかは、脳を肥大化すると、生存に必要な俊敏な運動ができなくなるからである。

ちなみに、一番人間に近いチンパンジーと人の比較では、合図で振り替えるという簡単な動作において、チンパンジーは人間の半分の時間しかかからない。動作にかかる時間はチンパンジーと人間に差異がないので、この時間差は、そのまま、人とチンパンジーの脳の処理速度の差異と考えてよい。 人間の脳の処理速度は、陸生動物でも、かなり遅い方に分類される。

ならば、脳を巨大化する為には、俊敏な運動が要求されない環境を想定しなければならない。 俊敏な運動が不利に働く環境は、地質学上の資料を調べても想定できない。 これにより、俊敏な運動と対立の関係にある運動を強く要求される環境と考えられる。

俊敏な運動と対立の関係にある運動について考えてみると、俊敏な運動を行う能力とは、短時間に大量のエネルギー発生させる瞬発力であり、これに対立する関係にあるのは、少量のエネルキーを長時間発生する持久力、持久運動となる。両者は2律背反の関係で、持久力を高めることは瞬発力を下げることになり、両立はできない。

持久運動が生存に有利な環境とは、利用可能な資源密度が極端に低い環境にほかならない。 食糧の存在密度が低くければ、食糧を得るために広い範囲を探し廻らなければならないからである。

これより、脳を巨大化させるのに必要な環境は、利用可能な資源の密度が低い環境である。 但し、これは、脳の大きさの制限が無くなる条件で、肥大化させる十分な条件ではない。

では、現生人類の持久力はどうかというと、掛け値なしで陸生動物中トップである。 一日中走り続けられる動物など、現生人類以外は存在しない。いかなる陸生動物も現生人類に追いかけられたら、逃げきることができない。必ず、途中で動けなくなってしまう。

現生人類の持久運動は、大きくは2つの機能によって支えられている。 1つ目は、省エネ機構であり、筆頭は、直立2足歩行である。 FR車が4WD車より燃費がいいのと同じで、2足歩行は、4足歩行よりエネルギー消費量が少ない。FR車は、きびきびした走りで4WDにかなわないが、長距離走行の燃費なら圧倒的に有利である

ここで気を付けなければいけないのは、人類の祖先は、樹上の移動手段に、枝から枝へぶら下がりながら手渡りする方法を採用していたことである。この為、前肢は手に変化していて、前足としての機能は既になく、地上での移動手段が2足歩行に制限されていたことである。 人間の祖先は、初めから2足歩行であり、地上へ生活の場を移しても4足歩行進化せず、より原始的特徴を残した種である。

ちなみに、樹上生活者であるテナガザルやオランウータンは、地上を2足歩行し、半地上生活者であるチンパンジーやゴリラは4足歩行(ナックルウォーク)を行う。 但し、チンパンジーとゴリラは、解剖学的な特徴から、個別に4足歩行の形質を獲得したと考えられている。即ち、ゴリラもチンパンジーも元々は、2足歩行であったものが、生活の場を地上に広げると共に、4足歩行に進化したと言うことである。

2つ目は、放熱機構であり、体毛がないこである。 放熱機構が脆弱だと、運動によって発生する熱を体外への放出できず、体温が上昇しすぎて、運動を続けることができない。

実際、人間以外の陸生動物が長時間、走り続けることができないのは、体温が上昇して、脳が機能しなくなるからである。各器官毎に熱耐性は異なり、特に脳は熱に対して脆弱な為、最初に機能しなくなる。

現生人類は、体毛を産毛にし、体表全体に汗腺を配置し、汗を産毛に沿って流すことにより、その気化熱で体表より体を冷やす方法を採用している。体毛を薄くすることで、空気の流れを確保し、汗の気化を促進し、その気化熱で体温を下げるのである。 また、脳に熱が溜まること避ける為、脳の運動制御部分以外(前頭葉)の体積を増量し、脳の表面積を広げヒートシンクとして使用している。 前頭葉前面の頭蓋骨を地面に垂直に立て、太陽からの直射を避け、頭髪をなくして額を設け、運動に共う空気の流れを確保し、冷却効率を高めている。 日常の経験でわかるとおり、額を冷却すると脳内温度が急低下するようにできているのである。

これより、人の脳は、高い持久力を持たないと生存が脅かされる環境に置かれた為、脳が肥大化したと考えられる。

【結論】

人間の進化の道筋を想定してみると、まず、人類誕生地アフリカで、地殻変動が発生し、気候が乾燥化した。これが原因で、森林が減少し、人類の祖先は森から森へと地上を移動しなければならなくなった。この段階で、人類は直立2足歩行を獲得したと考えられる。但し、主な生活の場は、樹上であった為、脳の大きさは制限されていた。この段階が、猿人であると考えられる。

さらに、乾燥化が進むと森が消滅し、主たる生活の場を地上に切り替えざるをえなくなった。 人類は、樹上生活を放棄し、俊敏な運動ができない直立2足歩行で地上生活を営んだため、脳容積の制限が外れ、バラつきが発生し始める。この段階が、原人であると考える。 原人段階では、徐々に持久力が向上する進化が進み、脳容積の肥大化が進む。

ここで、氷河期の到来により、極度に資源密度が極度に低下し、持久力の極端に優れた現生人類が出現し、現在に至っていると考えられる。人間の脳は、強力な持久力を得る為に、巨大化したと考えられる

現在、繁栄の原動力になっている形質は、過去のある時点で、現在の使われ方と別の使われ方用に獲得された形質であり、時間経過とともに環境が変化し、本来の目的外の機能で生存に有利なった形質であることが多い。

これは、現在の成功しいている事柄をまねても、将来は現在と必ず異なる環境になるのだから、将来の成功には結びつかないことを意味している。 現在の制約条件の中で、問題を1つ1つ解決することの方が。将来の成功に結びつきやすいのである。

 





© Rakuten Group, Inc.