信頼関係とは その2
臨床現場で必要な信頼関係について少し考えています。臨床心理学の授業で、「信頼関係の形成」について話題がありました。教科書の文章で、納得したり、新たな発見がありましたので、引用したいと思います。(長過ぎですが)『信頼関係を形成する(前略)クライエントが「この人に自分の大切な話をしても、きちんと大切に扱ってくれるだろうし、自分の弱いところや嫌なところをされけ出しても、そのことで卑下されたり拒否されることはないだろう」という感覚を治療者にもつことが基本となる。(中略)少なくともクライエントに主体性を持たせるための努力は必要である。そのためには、クライエントに対する謙虚な態度と積極的な関心をもつことが肝要となる。』『共感すること(前略)つまり、共感とはことばのうえや知識のみで成り立つものではなく、「なるほど」と感じられるような心的活動である。言い換えると、クライエントの話す内容を理解するだけではなく、話すクライエント自身のあり様を体験することである。(中略)クライエント自身をそっくり体験することは不可能である。おのずからそこにはズレガ生じることになる。実はこのズレが重要なのである。まったくズレがないとすると、治療者=クライエント自身となり、クライエントと同じ問題を抱えてしまうことになる。むしろ、ズレの意味や背景をお互いに考えていく過程から、問題の所在が明らかになるのが心理療法の重要なプロセスと言えるのかもしれない。しかし、一生懸命共感しようとする努力がなければズレは明らかになってこないであろう。その意味で共感的態度は信頼関係を支えるだけでなく、心理療法にとって重要な態度となるのである。(後略)』『受容すること(前略)クライエントが示すさまざまな感情や行動に対して、社会通念上の価値づけや道徳的な評価をするのではなく、まず、クライエントがそういう状態であるということを事実として認めることが、クライエントがその場(治療の場)にいることを保証することにつながるのである。(後略)』『心理療法家に求められるもの(前略)クライエントの内面を知ろうとするとき、直接的にとらえることは困難で、クライエントと交流して起こる治療者自身の内面の動きを手がかりにして間接的に知ることしかできないと言える。したがって治療者自らが、どのような感情をクライエントに向けているかを把握していることが重要となってくる。そのためには、治療者はできうる限り自信の感情に敏感で正直であることが大切と言えよう。(中略)クライエントに共感するかたわら、自己とクライエントの間にきちんとした境界が引けることが重要となる。(後略)』 引用文献『 心とかかわる臨床心理 基礎・実際・方法』川瀬正裕、松本真理子、松本英夫/著 、ナカニシヤ出版 、2006年4月発行 P.144、145赤字、青字は、私が入れました。この教科書では、「クライエント」、「治療者」となっていますが、それぞれ、「対象者様、そのご家族」、「ST」として考えました。『ズレガ生じることになる。実はこのズレが重要なのである。(中略)ズレの意味や背景をお互いに考えていく過程から、問題の所在が明らかになるのが心理療法の重要なプロセスと言えるのかもしれない。』私は、今まで考えたことがない内容でした。「相手の立場に立つ」ということにも関連しているように思います。(また、続きます。。)