文献「左半側空間無視患者に対する全般性注意訓練の有用性についての検討」を読んで
菅原光晴、鎌倉矩子、前田眞治 「左半側空間無視患者に対する全般性注意訓練の有用性についての検討」認知リハビリテーションVol.15, No.1, 2010を読みました。左USNの患者7 例に全般性注意訓練を施行し、抹消課題および車椅子操作時のUSN発生頻度を測定した報告。ベースライン期、介入期(全般性注意訓練実施)、フォローアップ期で評価を実施。それぞれ、改善した症例と改善しなかった症例あり。長期効果が得られた症例では、全般性注意訓練において、課題遂行時間が開始当初の35%以下になっていた。(詳細は文献を参照して下さい)◆全般性注意訓練Modified attention process training(MAPT)(豊倉ら 1992)を使用。1、持続性注意訓練2、選択性注意訓練3、変換性注意訓練4、分配性注意訓練から、構成されており、正答率が85%以上になれば、訓練課題を変更する。<この文献内で記載されていた左USNの訓練に対してのコメント>◆左USNのリハビリは多彩で、訓練した課題の成績が訓練後に向上することは知られている。しかし,訓練後にその課題以外のADLなどに汎化し、良好な改善が長期的に得られたという報告は少なく、決定的な治療法は模索状態である。◆机上課題で改善が認められてもADLへは汎化しにくい。理由は、机上課題は意識的に行われる課題であるのに対し、ADLは無意識的に行われる課題であることが挙げられる。また、机上課題は狭い空間で行う課題であるため1 つのことに集中しやすいのに対し、ADLは環境を取り巻くさまざまなものに注意を分配したり、切り替えながら行動する必要があり、それぞれの課題遂行において必要とされる注意機能の相違が関連しているものと推察された。◆全般性注意訓練が左半側空間無視の改善に影響する非空間的な注意機能に作用し、すくなくとも机上課題の左半側空間無視を改善させること、日常生活場面での左半側空間無視症状を改善させる場合があること、長期効果においては課題遂行における情報処理能力が大きく関与するものと考えられた。 <感想など>◆やはり、左USNに対しては、注意障害への訓練も重要である。◆MAPT(豊倉ら 1992)は一部が文献上で公開されているが、原本を入手する方法は?(少しずつ、自作も試みています)◆左USN患者への抹消課題への訓練では、まず、「ゆっくりでいいですから、見落としが無いように」と促す場合が多い。抹消課題の難易度を下げて、遂行速度を上げる課題の検討も必要。