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長編時代小説コーナ

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Aug 25, 2006
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 磯辺さま自ら来られるとは訳ありじゃな、そんな感じがした。新弥が踵(きびす)

を廻すと、磯辺伝三朗の乗馬が馬止柵につながれ、全身水を浴びたように汗が

ひかり、息が荒々しくあがっていた。

(国許より駆け通しで参られたな) そんな思いで自室にもどった。

 廊下にせわしげな足音がした。 「斎藤殿」  梶原庄兵衛の声である。

「ご遠慮なく、お入り下さい」  梶原庄兵衛が顔を染め現れた。

「梶原さま拙者は斎藤で結構、殿づけはお止め下さい」

「そのような些事(さじ)は宜しい、今な国許から早馬が着き申した」

「存じております。目付の磯辺伝三郎さま自ら参られるとは合点が参りませぬ」

 新弥が腕組みをして考えこんだ。

「承知いたしておられたか、今は休息場で疲れを癒しておられるが、殿との面会

の席にご貴殿も一緒いたせとのことにござる」

「お受けつかまります。ところで梶原さま、何か不自然とは思われませんか」

「不自然?」 「左様、磯辺さまが使いとして参られた。ただ石垣一派の件のみとは

思われませぬ」 「うむ、そう言われると何やら臭う、じゃが直ぐに判ります。

刻限にはお峰が知らせに参ります」 梶原がそそくさと部屋を辞して行った。

 一人となった新弥が、あれこれと思案しているが一向に思いつかない。わしで

は無理じゃ、考えごとは左京さまや磯辺さまにお任せいたそう。

 そう思い新弥はお呼びだしを待ちくたびれる思いで待った。時が遅々として進ま

ない、苛立ちを押さえ部屋の外を覗いた。真っ青な空が広がりをみせ、二筋の細

い雲がたなびいていた。なんとなくほっとする光景である、新弥は飽かずに雲の

変形するさまを眺め無心となっていた。廊下より微かな足音が流れてきた。

 お峰殿じゃな。新弥は昨夜の己の行為を恥じた、顔をみたら謝ろうと思った。

「斎藤さま、殿のお呼びにございます」 襖越しより、しっとりとしたお峰の声が

した。 「かたじけのうござる」 新弥が襖を開けた、お峰が廊下に膝をつき、襟足

の白さが眼に入った。新弥が無言で通り過ぎようとした瞬間、

「わたくしを抱きたいと仰せられ、昨晩は嬉しくて眠れませんでした」

 お峰が小声で囁き、一瞬足が止まりそうになった。 (困った、誤解じゃ)

「ご案内を頼みます」 努めて冷静に声をかけ、お峰の案内で奥に進んだ。

 坪庭の前で歩みを止め、お峰がふり向いた。目が潤んだように輝いている。

「この先からは、お一人で参られませ」 頬を染め新弥をみつめている。

「ご足労をおかけ申した」 軽く目礼し奥にむかった、背中にお峰の視線が感じ

られる。面映い思いをこらえ、殿と磯辺伝三郎の待つ部屋に着いた。

「斎藤、罷りこしました」 襖が開き小姓が、 「奥にお待ちにございます」と、 

言い添い新弥は小腰を屈め、するすると近づいた。

「斎藤か、待ちかねた」 新弥が平伏した。忠直の前に磯辺が控えていた。

「斎藤、殿よりお聞きいたしたが、見事な立会いをいたしたそうじゃな」

「それは済みました。国許で何かございましたか?」

「今、殿に申し上げておったところじゃ」

「斎藤、そちの申した通り、巧く運んでおるそうじゃ」 忠直の声に満足感が

あった。 「目付の磯辺さまが自ら早馬で参られ、国許で不測の事態でも起こっ

たのかと、心配いたしておりました」

「斎藤、お主だけに辛いお役目を頼み、我等はみておるだけであったが、お主の

見込み通り、国許の騒動は治まりそうじゃ」

 磯辺伝三郎が国許の事情と労いの言葉をかけた。

「城代家老の飯岡大膳さまは、お元気と殿より聞かされましたが、次席家老に

代わり藩政に就かれておられますか?」

 磯辺伝三郎の鋭い眼差しが和んだ。

「拙者が国許より江戸表に参ったのが、その証じゃ」

「非道いお方です。拙者があれほど心配致しましたのに」

「拙者も知らなんだ、突然の登城で仰天いたした」 磯辺伝三郎が語ると、忠直

が吹きだした。 「余と大膳の策じゃ、敵を欺くならば味方からとな。これが兵法

じゃ」 忠直が真顔で語った。 「恐れ入りました」 新弥が感心している。

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Last updated  Aug 25, 2006 08:59:24 AM
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