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長編時代小説コーナ

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Aug 26, 2006
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「じゃが斎藤、そちもなかなかの策士じゃな」 忠直の顔が真顔である。

「はっ?・・」 「そちは立会いで宍戸梅雪を倒すと一言も洩らさなんだの」

「それは拙者が赤津監物殿に勝つことが条件にございました。万一、後れをと

るようでは話になりません」 新弥が懸命に弁解した。

「磯辺、斎藤とはこのような男か?」

「いや、寡黙で朴訥。それが取り柄でございましたが、最近は時々策を弄しま

すな」 磯辺伝三郎までが真顔で答えている。

「それはないでしょう。拙者は常に精一杯お勤めに励んできた積もりです」

「ははは、磯辺は冗談を申しておる。余ははじめて聞いたぞ、蝋燭持参で登城

したそうじゃな」 忠直が可笑しそうに笑っているが、瞼が潤んでいた。

「余はこたびの事件の処置を磯辺に命じた」 新弥が不審そうに仰ぎみた。

「次席家老の石垣忠左衛門、ならびに倅の一之進には切腹を申しつける。斎藤

に意見があれば聞くがの」 忠直が厳しい顔で告げた。

「藩政を司るお勤めを蔑ろにし、私服を肥やすために藩士の妻女を町人に売り

渡すとはもっての沙汰。切腹は止むをえぬ仕儀と勘考つかまつります」

「良くぞ申した。磯辺、追って沙汰があるまで閉門蟄居(へいもんちっきょ)を申し

渡せ。切腹の儀は後日沙汰いたす」 「はつ」 磯辺伝三郎が平伏した。

 新弥はまだ忠直を見つめている。 「頭が高い」 磯辺が小声で叱責した。

「磯辺、気遣うな、斎藤新弥とはこのような男じゃ。だから大事が任される」

 新弥は殿のお言葉で胸が一杯となっていた。つい先日までは殿のご尊顔を拝

することなど考えも及ばなかった。それが直にお話ができる、夢のようであった。

 忠直は傍らの茶を飲み干し、磯辺伝三郎と新弥をみつめ口をひらいた。

「磯辺、そちが持参いたした粟野五郎兵衛の書状の件じゃが、余は許可をいた

すことにした」 新弥は他ごとを考えていた。

「拙者は粟野先生が何をお願いしたのか存じません。いったい何のお話にござい

ます」 磯辺伝三郎が剽悍な眼差しをみせ尋ねた。

「粟野の一人の考えか、ならば余の口から聞かせてとらす。この度の藩の騒動も

目出度く終った。これを機にお勤めを辞し隠居したい、そう申し送って参った」

「粟野先生が隠居にございますか?」 新弥が驚きを隠し訊ねた。

 忠直が無言で首肯した。

「そこで剣文館主を斎藤新弥に託す積もりじゃ。両人とも異存はあるまいな」

「お待ち下さい。まだ拙者には荷が重うございます」 新弥が慌てている。

「斎藤、余は伊奈藩邸において、既に皆に披露したと思っておる。帰国の暁に

は、斎藤新弥を我が藩の剣術師範ならびに剣文館主に任ずる。磯辺伝三郎、

そちが検分役として余の考えを、飯岡大膳に伝えてくれ」

「はっ、確とお伝え申しあげます」 磯辺伝三郎が嬉しそうに復命した。

「さて最後に申しおく。宮本陣内じゃが、粟野五郎兵衛の娘、梅と夫婦となり

粟野家の名跡を継ぐものといたす」

 新弥が仰天した、次々と驚くことを仰せになられる。

「斎藤、宮本家には次男が居るの、そちの妻女の実家じゃ。宮本家の名跡は

次男の成人をもって継ぐものとする。斎藤、これは余の願いじゃ。そちに相談

せずに決めたが許せよ」

「はっ」 新弥は身内から震いがわいていた。これも全て大膳さまと左京さま、

それに傍らの磯辺さまのお取り計らいと感じていた。

 わしのような不器用な男に眼をかけて頂き、有り難いことじゃ。しみじみと

人の情けを感じた。

「さて両人に申しつける。この度の騒動を素早く治めた功により、加増を申し

わたす。磯辺伝三郎」 「はっ」 「百石を加増いたし、これより九百石といた

す。なお目付方より大目付を命ずるものなり」

「有り難き仰せ、謹んでお受けつかまつります」 磯辺伝三郎が低く礼を述べた。

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Last updated  Aug 26, 2006 09:41:26 AM
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