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Mar 26, 2007
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カテゴリ:小説 上杉景勝
  景勝は挨拶の言葉をはっしたのみで、あとは、一言も口を利かずに大杯を

あおっている。髭跡が濃く粛然(しゅくぜん)とした態度を保っている。

 何を考えておられるか、左近をしても理解できない武将であった。

「松籟(しょうらい)の音が心地よく聞こえますな」

  取りつく間を持て余し、寂びた声をあげた。

「この大広間は常にそうでござる」  直江山城守が答えた。

「風流の極みにござるな」  答えつつ左近は内心、舌をまいていた。

  景勝公は故謙信公の化身であらせられる、人伝で聞いた話が脳裡を過ぎ

った。日頃から無口で家来たちは、敵よりも景勝公を恐れているという。

  大将とは、ただ床几に腰を据え、戦況に関係なく前方を見据えているのみ、

これが景勝の武将としての生き様と聞いた。ゆえに景勝の本陣の将兵は前方

を見据えて折り伏し、咳払いをたてることもなく静まり、無言の軍団として敵に

恐れられているという。大将が本陣で泰然自若としておれば、全軍は動揺せず、

兵士等は合戦に勝てると信ずるものである、これが景勝の考えと聞いた。

  島左近は景勝を前にして、その思いを募らせていた。


  景勝には謙信を崇拝し、己を高めようとする気概があった。

  そうするように山城守が導いてきたことも承知している、景勝はすでに己の

出生の秘密を知っていた。己の体内に流れる血潮には、謙信の血と謙信の姉

である母親の血が、濃く交わっていることを。ならば及ばずとも不識院公のよう

な、果敢な戦いをやろうと思っていた。事実、景勝は戦機を見逃さず一騎駆け

で敵中深く駆け込み、勇猛果敢な武者働きを何度となくしてきた。

  島左近は己の主人の石田三成と比較していた、主人に目前の景勝の資質の

ひとつでもあれば、孤立せずに家康と対等の力量を発揮できた筈である。が、

三成にはそれが欠けていた。だが三成には壮大な構想力がある。

  左近が杯をもって暫し思いに耽った。

「左近、わしは下がる。あとは山城と天下のことを計れ」

  景勝は一声かけ、前田慶次と上泉泰綱をともなって退出していった。

「山城守殿、上方の戦略をお話申す」  左近が威儀をただした。

「お聞きいたす」  山城守が白皙の顔を引き締めた。

  島左近が三成からの言付けを淡々として語った。

「大阪城に毛利輝元さまが、西軍の総帥として入城なされるか?」

「左様、吉川(きっかわ)広家殿、安国寺恵瓊殿、毛利秀元殿もご一緒される。

総兵力は三万五千名にござる」  「それは重畳」  左近はなおも語る。

「長曾我部盛親殿が六千名、いささか危ういが小早川秀秋さまの一万六千名、

さらに九州勢としては島津殿、立花宗茂殿の参陣がござる」

「野戦軍の総帥は、宇喜多秀家さまか?」

「一万七千名が主力でござる。そこに小西行長殿の六千名と我家の八千名、

大谷刑部殿と与力大名の四千名が、西軍の総兵力となります」

「よくぞ成し遂げられた、西軍の総兵力は九万五千から十万ほどの大兵力と

なりますな」  山城守の顔面が紅潮している。

「左様、まずは家康が御家討伐の軍を発し、会津領に近づく頃を見計らい挙兵

いたす」  「畿内は、いかが為される」

「伏見城の攻略をいたす。さらに大阪におる家康側の大名家の者を大阪城に

移し人質といたす」

「それは火に油をそそぎませぬか」  山城守が端正な顔をしかめた。

「これも戦略にござる」  左近がかまわずに話を進めた。

「合戦の帰趨は美濃にござる。我が軍勢は大垣城を攻略いたす」

  山城守が大きく合点の肯きをみせ、突然、話題をかえた。

「左近殿、信州に面白い人物がおられる」

「上田城主の真田昌幸殿にござろう」  「承知にござるか?」

「すでにお味方にござる」  左近が当然といった顔をしている。

  この真田昌幸という武将は禄高、五、六万の小名であるが、奇妙人として

天下に知られている。戦術家として局地戦では彼の右にでる者はいない。

その昌幸は稀に見る家康嫌いであった。故秀吉に心酔することが滑稽なほど

で、日夜、秀吉の画像に香を焚き礼拝を欠かすことがなかった。三成は昌幸に

書状を送り、勝利の暁には甲斐、信濃の二ケ国を与えると書き送った。

  昌幸にとっては生涯二度とない機会である、まして次男の幸村の室は三成の

盟友である、大谷刑部の娘である。ふたつ返事で同意した。

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Last updated  Mar 26, 2007 11:15:11 AM
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