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Mar 21, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 お蘭が岩陰から、求馬の後姿を蒼白な顔で窺がっている。そのお蘭の

耳朶に、空気を斬り裂くような音が聞こえた。

「旦那っ、危ない」  思わず叫び声をあげた。

 求馬の腰から村正が白い光芒となって迸った。「かっー」 鋭い金属音がして

足元に見慣れぬ飛び道具が落ちた。それは伊賀、甲賀の忍び者が使う手裏剣

の役目をする飛び道具で、飛苦無い(とびくない)であった。

「隠れずと姿を見せえー」  求馬が冴えた声をかけ、村正を脇備えとした。

 崖から綱が投げ落とされ、それを伝って宙に身を躍らせた忍び姿の男が、

数人河原に舞い降りてきた。

 いずれも錏頭巾と茶の忍び装束姿の六紋銭の忍び者である。彼等は

求馬の痩身を中心とし素早い動きで左右を廻りだした。

 その輪の中で求馬は動きを留めている。

「びゅつー」  求馬の背後に回った忍び者が飛苦無いを放った。

 求馬の大刀が一閃し、苦もなくそれを跳ね飛ばした。

「きえっー」  二人の六紋銭が跳躍し、求馬の痩身に襲いかかった。

 抜きはなった村正は、血に飢えていた。

 鋼の音が河原に響き、二人の大刀を弾きかえした。失敗した男が背後に

着地しようとした瞬間、その背後に村正が生き物のように鋭く伸びた。

ぱっと血飛沫が噴き上がり、痩身が風をまいて残りの一人に猛禽の如く襲い

かかった。六紋銭の忍び者と求馬の痩身が交差した。

 苦悶の声を洩らし胴を両断された男が、その身を河原にたたきつけた。

 ざざっと敵の輪が広まった。

「参る」  求馬が凛とした声を発した、それに誘われるように一人が前面を

塞いだ。じりっ間合いを詰め生死の間仕切りを二人が踏み込んだ。

「きえっー」  六紋銭が猛烈な攻撃を浴びせてきたが、求馬の動きは緩慢に

みえた。にもかかわらず、襲った白刃は求馬の脇を虚しく流れた。

 求馬の村正が左手から横殴りに、空間を裂いた。その線上に対手の首筋が

あり、悲鳴も洩らさず胴から離れ、血潮の帯をひいて河原に飛び去った。

 あまりの冴えた腕をみせられ、六紋銭の忍びに戦慄がはしった。

 見逃さず求馬の痩身が血をもとめ六紋銭の群に飛び込んだ。

 刃がきらきらと輝き、その度に苦痛の声と血潮が吹雪いている。それは

周囲の景色とあいまって不思議な光景を現出していた。

 あまりにも血腥い光景である。

「ぴっー」  鋭い指笛が響き六紋銭の生き残りが、一斉に潅木に身を躍らせ

退いていった。先刻の闘いが嘘のように桂川の川音が響き静寂につつまれた。

 河原の砂地に求馬が仁王立ちとなって大刀を構えている。

「旦那っ」  悲鳴をあげお蘭が岩陰から駆けよってきた。

「大事ない」 村正を素振り血潮を吹き飛ばした求馬が、ゆっくりと川辺に

近寄り、村正を流れに浸し血糊を洗い流し懐紙で拭った。

「お蘭、怪我はないか?}

「はいな」 と答えた顔から、見る間に血の気が失せ河原に倒れ込んだ。

「お蘭っ」  求馬がお蘭の躯を抱え起こした、左肩に飛苦無いの傷痕が

ある。かなりの出血のようである、今も流れつづけている。

 求馬は傷口に手拭いをあて血止めを施し、印籠から薬を指ですくい傷口に

塗布した。(わしの宿業はまだ続くのか) 求馬は長合羽を寝床代わりとして

お蘭を横たえ、己の宿業を呪った。己を慕う女子は皆、死出の旅に発つのか。

 お蘭は意識を失い横たわっている。

 求馬は崖下に荷物をまとめ、枯れ草を敷きつめ寝床を作りお蘭を移し、

濡れ手拭を額にのせた。 「熱が出なければ良いが」 と独り言を呟いた。

 急に空模様が変わり、生暖かい風が吹き始めた。


「猪の吉さん、わたしは仕事にでかけますが、温和しく待ってておくんなさいよ。

ご褒美に美味しい物を持って帰りますから」

 お駒が妖艶な流し目をみせきえた。  「畜生め、人をこけにして」

 猪の吉が、怒りをぶちまけるように独り言を呟き身をみんだ。

「こんな縄なんて目でもねえ」  さかんに首や肩を捻っている。

 そのたびに骨の鳴る音がして右肩の関節がはずれ、縄が緩んだ。

 にやりと猪の吉の顔が笑いで崩れた。ついでに左肩の関節も外れた。

 暫くして猪の吉が立ち上がった、この業も猪の吉が得意としていた、

 長年の泥棒稼業で身につけた業のひとつであった。

「あの女(あま)、どうしてくれようか」  この歳で縛られて女に嬲られる

とは、思いもしなかった。しかし、忘れられない女である。

「鶯のお駒、こんど会ったら覚悟するんだな」

 と捨て台詞を残し逃れ去った。多分、旦那はおいらを信じて先を急がれた

筈とは思うが、その確認の為にいろは屋へと急いだ。

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Last updated  Mar 21, 2008 11:15:14 AM
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