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Mar 25, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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  こうして三人は、山中で三日間過ごすことになった。ようやく桂川がもとの

流れにもどり、渓谷の流れも緩やかになった。すぐさま求馬と猪の吉が河原の

様子を探りに行き、洞窟にもどった。三人が焚火の廻りに集まった。

 お蘭の傷もふさがり元気を取り戻している。

「猪の吉、お主に相談がある」  早速、求馬が口をひらいた。

「何でござんす?」  

「お蘭も聞くのじゃ、ここから抜けでる方策を考えた」

 猪の吉とお蘭が求馬の次ぎの言葉を待った。

「お蘭の傷口は一応固まったが、無理をすると開く事になる。この難路を

走破することは無理じゃ」  求馬がお蘭をみつめた。

「どうなさる積りです?」  猪の吉の眼光が鋭くなった。

「食料も尽きる、何としてもここを抜け出ねばならぬ」

「あたしを残し、お二人で野田尻宿に発って下さいな」

 お蘭が毅然とした態度で言ってのけた。

「それはならぬ、抜け出るときは一緒だ」

「あたしのような足手まといを連れては無理です」

「少し黙るのじゃ。猪の吉、河原の流木で筏(いかだ)を組み桂川を下る。

これが、わしの考えじゃ」  無言で猪の吉が眼を剥いた。

「お主はツタを捜してくれえ、わしは手頃な流木を伐り揃える。その間は

お蘭は何も考えず体力を養うのじゃ。筏が出来たら脱出する」

「旦那、ひとつ尋ねてもようござんすか?」  「なんじゃ」

「何処まで筏で下りやす」  その言葉に求馬が頬を崩し考えを述べた。

 求馬の考えは、上野原から鳥沢までは谷が険しく難路で知られている。

 それ故に山の峰の街道を通らねばならない、これではお蘭の体力が保たな

い、街道のはしる山を下り有名な猿橋にから大月宿へと出る考えであった。

 それを二人に語った。  「一気に大月宿まで下りやすか?」

「それは無理じゃ、我等の道具は鉈と脇差だけじゃ。それでは桂川の急流を

下るだけの頑丈な筏は作れぬ」

「そうしやすと下鳥沢か上鳥沢の、どちらかの宿場を目指す訳ですな」

「野田尻宿、犬目宿、このふたつの旅籠を筏で通り抜ける事が出来る」

「犬目宿の一里塚は、日本橋から二十一里と云われておりやす、一気に

甲州道中の半分ちかくを走破した事になりやすな」

 猪の吉が興奮を顕にしている。

 早速、二人は手分けをし筏の材料を揃えた。求馬が河原の平坦な場所に

伐り揃えた木材を筏の形に並べ、猪の吉が山から採ってきた蔦(つた)で厳重に

結びつけた。二日後日の夕刻には、幅六尺長さ十四尺ほどの筏が完成した。

「猪の吉、よく出来たの」  「さいで」

 二人にとり初めての経験であった。  「竿は竹竿にしょう」

 中央には、お蘭の為に四角の囲いをもうけ、長合羽と道行き衣を敷き水が

入らないような工夫をこらした。

 山並に夕日が沈み、最後の洞窟生活が終わった。

 求馬と猪の吉が厳重な身支度をととのえた。

「お蘭、そちの躯が心配じゃが我慢をするのじゃ」  「はいな」

 筏の中央に、荷物とお蘭が乗り込んだ、舳先は猪の吉で艫は求馬が受け持つ

ことになった。

 二人が慎重に筏を桂川に押して浮かべた。

「行くぞ」  「まかしておくんなせえ」

 筏が朝靄をついて桂川の真ん中に進み、一気に流れにのった、猪の吉が懸命

に前を塞ぐ岩を竿で突いている。呼吸を合わせ求馬も艫で竿を操っている。

 水飛沫が容赦なく三人の躯に掛かる、お蘭が懸命に囲いを握っている。

「旦那っ」  舳先から猪の吉が右手を差している、小さな集落が見える。

「鶴川宿じゃ」  筏は矢のように下ってゆく。

「これは早いや」  猪の吉がご機嫌で竿を操る、見るみる鶴川宿も過ぎ去った。

「お蘭、我慢せえ」  求馬が励ましの言葉をかけている。

「はい、大丈夫ですよ」  お蘭が必死で囲いの竹を掴んでいる。

 水飛沫が遠慮容赦もなく全身に降りかかる。ようやく流れが緩やかになった。

 水の色が青黒く変色し、両岸の崖が切り立ち前方に集落が現れた。

「とうとう犬目宿に着きやした」  猪の吉が嬉しそうな声を張り上げた。

 あと少し下れば上鳥沢宿が見えてくる筈である。

「旦那、鳥沢が近い筈です、上か下かどちらに着けやす」

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Last updated  Mar 25, 2008 11:57:11 AM
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