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Mar 26, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 求馬が上空を仰ぎ見ている。 

「刻限は四つ半(午前十一時)頃じゃな。ここまで来れば上鳥沢まで行こうか」

「判りやした」  猪の吉が同意し、慎重に前方をみつめ竿を操る。

 両岸はますます険しくなり、奇岩、巨岩が眼につく。筏は流れにのって飛沫を

あげて上下左右と烈しく揺れながら流れる。

「やりやしたぜ、とうとう下鳥沢ですよ」 

 猪の吉が濁流に負けずと大声をあげた。 下鳥沢と上鳥沢は、ほとんど距離の

ないふたつの宿場宿である。猪の吉と求馬が懸命に竿を操り、桂川の右手に筏

を近づけている。岸辺の近くに浅瀬があり、所々に岩が邪魔をする。

 上鳥沢宿の集落が見えてきた、村人が数人、川岸に集まり筏を眺めている。

「おーい、おまえさん達は何処から来なすった」

 浪人と女と町人の取り合わせが珍しいのだ。

「怪しい者でわねえよ、本陣か脇本陣の主人はいねえかえ?」

 猪の吉が慎重に竿を操り大声で訊ねた。岸辺に筏が近寄り、猪の吉が川に

飛び込んだ。腰のあたりまで水に浸かり懸命に筏を岸に近づけている。

「師匠、上鳥沢宿ですぜ躯は大丈夫ですかえ」  「猪さん、大丈夫だよ」

「村の衆、手助けを頼まあ、怪我人がいるんだ」

 その声に応じ数人の村人が川に入り、筏を岸に導いてくれた。

「助かったぜ」  猪の吉が真っ先にあがり、懐中から礼金を村人に渡した。

「こがいに仰山はいらねえだ」  「遠慮はなしだ、旅籠の主人は居るかね」

 お蘭が蒼白な顔で岸にあがり、岩に腰をおろした。

「別嬪だなや」  村人が好奇な眼差しでお蘭を眺めている。

 求馬が筏の荷物を持って佇み、うっそりと周囲を眺めやった。

「わたしめが脇本陣の主人の九兵衛にございます」

 みるからに貧相な老人であるが、上等な着物を羽織っている。

「わしは伊庭求馬と申す、脇本陣を借り受けたい」  「お武家さまが?」

 求馬が高島藩家老の嘉納隼人正の書状を差し出した。

「これは知らぬこととてご無礼をいたしました」 読み下した主人が腰をおった。

「早速に部屋に案内を頼む。主人殿、村には医師は居るかの?」

「はい、居りまする」  主人が不思議そうな顔で答えた。

「怪我人がおる、部屋に手配を頼む」  「畏まりました」

 この宿場は脇本陣のみであった、小さな旅籠のなかでは目立つ旅籠である。

 まずまずの部屋に通された。  「お蘭、衣装替えは出来るか?」

「まだ不自由です、女衆をお願い」  三人ともびしょ濡れである、求馬と猪の吉

が行李から着物を取り出した。お蘭の替え衣装は、市松模様の小粋な小紋であ

った。猪の吉が帳場に行き一両の前金を払い、女中を頼んだ。

 大金をみた番頭が驚いて訊ねた。  「何時までご滞在にございますな」

「四、五日と思ってくんな」  「はい、お与りいたします」

 番頭の指示で女中が慌てて部屋に向かった。

 幸いにもお蘭の傷はたいした事ではなかった、求馬の手当てが良かったの

だ。隠密としての求馬の傷の手当は、そこらの医師よりも手慣れていたのだ。

「傷口は塞がっております」  「そうか、大事はないか?」

「初めの手当てが良かったのです」  医師は傷口に膏薬を塗り晒しを巻いた。

「三人とも川下りで濡れ鼠じゃ、風呂には入っても良いかの?」

「傷口を濡らさないでお入り下され」  そう云い終えて医師は帰った。

 早速、お蘭が女中を伴って風呂場に向かった。

「お江戸の方でございますか?」

 お蘭の濡れた着物を脱がせ、風呂に浸らせ背中をこすりながら女中が尋ね

た。 「はいな」  「どうりで綺麗な肌をなすっておられますね」

 お蘭は見事な裸身を女中に拭ってもらい、市松模様の着物を身につけた。

「まあ、良くお似合いで」  女中が感嘆の声をあげて見つめている。

 流石は江戸の小粋な鉄火女だけはある。  「お手数をかけましたね」

 入れ替わりに求馬と猪の吉が風呂に飛び込んだ。

「流石に堪えましたよ」  猪の吉が川の冷たさを思いだしぼやいた。

「飛礫の猪の吉も歳か」  求馬は平然としている、隠密としての鍛え方が

違うのだ。  「旦那には叶いませんよ」  

 ようやく三人は茶を喫み寛いだ。  「暫くこの旅籠に逗留いたす」

「そんなにのんびりしても良いのですか」  お蘭が心配顔をした。

「そちの躯が心配じゃ、これから難所中の難所、笹子峠が待っておる。万全な

躯で向かいたい、猪の吉、出立までに衣装や食料などの用意を頼みたい」

「任せておくんなせえ」  と猪の吉が胸を張って請負った。

「甲府には甲府勤番支配がある。堂々と罷り通りたい」

 求馬が不適な相貌を見せて云ってのけた。

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Last updated  Mar 26, 2008 11:06:31 AM
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