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Mar 31, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 翌朝の五つ(午前八時)三人は、旅籠の者に見送られ甲州道中を西に

向かった。  「今日もいい天気だね」  猪の吉がご機嫌である。

 手甲、脚絆も新しく草鞋の感触も心地よい。お蘭も新しい道行き衣を

羽織り、紅紐の草鞋に菅笠をかむり新しい杖を手に勇んでいた。

 求馬のみ黒羽二重の着流し姿で、柳行李を振り分けに肩に担ぎうっそりと

歩んでいる。街道は桂川を離れ山道となっていた。かなりの急坂が続いている。

「師匠、大丈夫かね」  猪の吉がお蘭の身を案じさかんに声をかける。

「大丈夫ですよ」  お蘭の体調も完全にもどったようだ。

 山並が重なりあって緑一色であった景観が変化を見せはじめてた。

 所々に紅葉がはじまり、薄い紅色や黄色が交じっている。

「もう、秋なんですね」  お蘭が菅笠を上向け景色に見蕩れている。

「上鳥沢宿から二十六町で天下の三奇橋に数えられる猿橋がある。渓谷の

水音が聞こえるだろう」

「はいな」  求馬に教えられ、お蘭が嬉しそうに肯いた。

 橋のたもとは苔の生えた石垣が積まれ、蔦が縦横に這っている。それに

鬱蒼とした大木が橋を覆い隠すように枝を伸ばしていた。

 手摺につかまり、お蘭が下を覗いている。

「目が眩みそう、落ちたら命はありませんよね」

 三人は橋の中央に足を止め奇景に見入った、眼下は深い渓谷で桂川が白い

泡立ちをみせ流れ下っている。この猿橋は橋脚がない、ハネ木造りという工法

で作られていた。浮世絵師の安藤広重が天保十二年に訪れ、この猿橋の絶景

に驚嘆し、「絶景言語に堪えたり拙筆に写し難し」と絶賛したと云われる。

「凄い眺めだねえー」  猪の吉が感に堪えない声をあげている。

「お蘭っ、猪の吉、この場を離れよ」  声と同時に求馬が前方に疾走した。

「あれは」  猪の吉が驚きの声をあげた、向こう側から侍が駆けて来る。

「探したぜ。村松三太夫だ、忘れたとは言わせねえ」

 赤鞘の大刀を腰にぶちこみ、求馬の目前に足を止めた。

「鳥沢の旅籠から眺めていたな、おいらの眼は節穴ではねえ」

「わしが斬れるか?」  黒羽二重の着流しで求馬がうっそりと佇んだ。

 渓谷から吹き上がる風で裾が煽られている。

 三太夫の垂れ下がった目蓋の奥の眼が瞬いた。ゆっくりと自慢の赤鞘から

大刀を抜き正眼に構えをとった。風の音が響く静寂の世界に殺気が漲り、

お蘭と猪の吉が息をつめて見守っている。

 三太夫が徐々に突きの体勢に構えを移している、求馬が鯉口を緩め左の指で

軽く鍔を押した。

「きえっー」  凄まじい懸け声と共に猛烈な突きが、求馬の胸元に伸びた。

 同時に求馬の痩身が、ふわっと宙に舞い橋の欄干に飛び乗っていた。 

「あっ」  お蘭が蒼白となった。足を滑らせれば千尋の谷底に落下する体勢を

求馬がとったのだ。三太夫の攻撃が頓挫(とんざ)した。

 鵜飼流は猛烈な突きの攻撃で相手の体勢をくずし、真っ向唐竹割りとする

一撃必殺の剣であったが、求馬は躯を欄干の上に置く事で三太夫に攻撃を

許さぬ体勢を作ったのだ。

「おのれ」  三太夫が正眼に構えを移し喚いた。完全に業を封じられたのだ。

 斬り込めば求馬は、三太夫の頭蓋を割る一撃必殺の攻撃をする、それを

躱す業は三太夫にはない。 「村松三太夫、ここで命を落すか」

 冴えた求馬の声が皮肉をおびて聞こえる。

「畜生」  三太夫が呻いた、相手は橋の欄干上に居る。長引けばこちらが

有利、三太夫が後方に身をうつし持久の策をとった。

「あの野郎、旦那の疲れを待つ積りだな」  猪の吉の眼が鋭くなった。

 お蘭が瞬きを忘れ、食い入るように求馬の姿を見つめている。二人には長い

時間であったが、それは瞬時の出来事であった。

 いかに忍びの術にたけていようと、求馬の体力にも限界がある。

 猪の吉が飛礫を握りしめ啖呵をきった。

「やい化け物、ここに飛礫の猪の吉さまが控えているぜ」

 村松三太夫の相貌が歪んだ。  「大川での飛礫はおめえかえ?」

「そうだ、今度は仕留めるぜ」  「糞っ」  三太夫が思いだした。

 猪の吉の手から飛礫が、三太夫の眉間を狙って放たれた。

 素早く大刀を顔面の前で上段に移し、大刀の柄で飛礫を払い落とした。

 体勢に隙ができ、見逃さず求馬の躯が宙に躍り、村正が三太夫の頭上に

襲いかかった。三太夫は本能的に大刀を水平とし両手で受けた。

 凄まじい衝撃で三太夫の躯が後方に弾き飛ばされた、すかさず村正が白い

光芒の帯を引き三太夫の肩先に襲いかかってきた。

 肩袖が千切れ左肩から血潮が迸った。  「ちえっ」と舌打ちの声がし、

辛うじて三太夫が構えを立て直した。

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Last updated  Mar 31, 2008 11:19:03 AM
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