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Apr 1, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 傷口から流れ落ちる血が橋の上を濡らしている。求馬が村正を握り痩身を

ゆっくりと三太夫の間合いの中に入れて来た。

 それを見た三太夫の垂れ下がった目蓋の奥に恐怖の色が浮かんだ。

 正眼に構えた大刀の切っ先を求馬に向け、じりっと三太夫が後退した。

「この勝負はあずける、いずれ借りは返すぜ」

 濁った声をかけるや、踵(きびす)を廻し脱兎の勢いで駆けだした。

 猪の吉の手から、再び飛礫が飛んだ、躱す間もなく右の太腿を直撃され

転等したが、素早く起き上がり足をひきずって逃走に移った。

「やい、飛礫野郎、今度会ったら命をもらう、おいらを甘くみるなよ」

 捨て台詞を残し街道の旅人を驚かしながら逃げ去った。

「旦那っ、大丈夫ですか」  お蘭が金切り声で駆けよった。

「騒ぐな、大事はない」  求馬が乾いた双眸で街道の彼方に消えてゆく

村松三太夫の姿を見つめていた。

「旦那、一筋縄ではゆかねえ男ですな」  「猪の吉、助かった」

「いらぬお節介をいたしやした」 猪の吉が興奮した声で照れている。

「うるさい男が一人増えたな」  ようやく求馬が抜き身を鞘に納めた。

 緊張していたお蘭に、谷底の桂川の清流の音がもどってきた、緊張のあまり

猿橋の景観を忘れ去っていたのだ。

「さて大月宿に向かうか」  求馬が柳行李を担いだ。

 大月宿は小盆地のなかにある。ここから郡内往還道が桂川に沿って分れ、

この往還道を利用し富士講の人々は、富士登山口の吉田へと向かうのである。

 またこの一帯は戦国時代、小山田氏の所領として続いた地域で甲府西部の

国中に対し郡内と呼ばれていた。ここには武田家を裏切りで滅亡させた、

小山田信茂の居城、岩殿城の跡があった。

 お蘭の身を気遣い、求馬はここの旅籠に早めの宿泊をした。

 この地は温泉の宝庫でこの旅籠も温泉宿であった。さっそく三人は温泉に

浸かり、一日の疲れを癒した。

 ここら辺りは男女混浴で、お蘭も肩の傷口を油紙で押さえて入浴した。

 上鳥沢宿から大月宿は、猿橋宿と駒橋宿の二宿を越えたばかりの近場で

あった。刻限はまだ八つ半(午後三時)を少し過ぎた頃で宿泊客は誰も居ない。

「お蘭、疲れはないか?」  「はいな」  求馬の問いにお蘭が湯の中から

答えている。 「鳥沢からはきつい道中でしたから、ゆっくり浸かって下せえ」

 猪の吉が一足はやく部屋に戻っていった、こうも間近でみるお蘭の裸体は、

猪の吉には目の毒であった。  「猪さん、気をつかいましたね」

「馬鹿め」  求馬が苦笑した。  「旦那っ、・・」

 お蘭が上気した顔を見せてもじもじしている。求馬の目の前に豊かな乳房が

湯のなかで透けて見える。

「お蘭、まだ真昼間じゃ」 ざぶっと湯の音をあげも求馬が浴槽から出ていった。

「なにさー、つまんない」  お蘭が恨めしげに後姿を見つめていた。

 座敷では猪の吉が寛いでいた。

「旦那、村松三太夫は素通りで先に進んだようです」

 猪の吉は風呂からあがり、帳場で三太夫の動きを探ってきたのだ。

「奴は足を引きずっていたそうですぜ」

「この先には笹子峠の難所がある」 求馬が塗れ手拭を干しながら答えた。

「奴はあの傷です、甲府までは大丈夫ですよ」

「お主もそう思うか」  「へい」  「まずは六紋銭の動静じゃな」

 二人が今後の相談をしている。  「ああー、良い湯加減でした」

 お蘭が汗を拭いながら現れた、ゆっくりと疲れをとった所為か顔色がいい。

「明日は強行軍じゃ、七宿目の黒野田宿まで足を伸ばす。そこで一泊し翌日は

笹子峠を越える」  「はいな」  お蘭が上気した顔で肯いた。

「さて、今夜はゆっくりと飲むか」  「そうですな、師匠の全快祝いですな」

  猪の吉の言葉に、「嬉しいねえ」と、お蘭が妖艶な笑顔をみせた。

「それじゃあ、夕餉前の一杯といきやすか、帳場に頼んできます」

 猪の吉が座を立つた。  「ここは盆地ですね、周囲の景色の綺麗なこと」

 お蘭がうっとりと連綿とつづく山並の風景を眺めている。

 ここに来て紅葉が目立ってきた、本格的に秋の訪れがきたようだ。

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Last updated  Apr 1, 2008 11:08:22 AM
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