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長編時代小説コーナ

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Apr 24, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 部屋にもどると豪勢な膳部が目をひいた。

「こいつは美味そうだ」  猪の吉が先刻の感傷を忘れたような笑みを浮かべ

た。山国の所為か、いつも鮎の塩焼きがでる。小鮎の甘露煮、山菜の漬物、

珍しく鹿肉の鍋物が美味しそうな匂いを漂わせていた。

 それに銘酒、七賢が供されていた。三人はゆったりとした気分で遅い夕餉を

楽しんだ。食後は林檎と葡萄である、お蘭が嬉しそうに食している。

 それを見ながら求馬と猪の吉が、七賢を飲みながら明日の策を練っていた。

「矢張り、六紋銭を倒し信濃に入るだけですな」

「明日はお蘭も一緒じゃ、白昼で不利な闘いとなろうな」

 求馬が猪の吉に決意を告げた。

「六紋銭の人数はどうですかね」  猪の吉の心配はそこにあった。

 求馬の相貌には変化がみられない、ここまで来れば人数を気にする事はな

い。当たって砕けるまでと覚悟していたのだ。

「明日は、なにが起こっても六紋銭を斃し、国界橋を渡る積りじゃ。そこからは

信濃の国になる」

「蔦木宿で一汗流せますな」  猪の吉が不敵な笑いを浮かべた。

「そうじゃな、そこに逗留し高島藩国家老の、磯辺頼寛(よりひろ)殿に到着の

知らせを出す。その返事を待って上諏訪に向かうことになろう」

 求馬が乾いた声で今後の方針を語り、七賢を飲干した。

「いよいよ信玄公の隠し金塊を探りだす訳ですな」

 猪の吉が興味深い顔をしている、今の猪の吉には気を紛らせる何かが必要

であった。それが、お駒の死を一時でも忘れる妙薬でもあった。

「旦那、あたしが足手まといとなったら、遠慮なす置いて行って下さいな」

 お蘭が覚悟を秘めた口調で告げた。

「心配は無用ですぜ、あっしが守りやす。明日は旦那と六紋銭の闘いとなりや

す、あっしらは旦那の背後を守ることです」

「判ったよ、猪さん」  お蘭が嫣然とした微笑を返した。

 覚悟を定めた女性は、普段よりも数段美しくなる。猪の吉が視線を外した、

またもや、お駒の面影が胸中をよぎったのだ。

 夜が白々と明け染めた時刻に三人は起床し、朝風呂を浴びて早い食事を

とった。  「矢張り、酒がねえと駄目ですな」

 猪の吉が朝酒を頼みに帳場に出向いた。

「お蘭、死に急ぎはならぬぞ」  求馬が真剣な声で話しかけた。

「はいな、六紋銭とて女には手をださないでしょう、万一の時は、あたしが

旦那の死に水をとります」 

 風呂あがりの所為か一段と艶やかな顔をしている。

「そちに死に水をとって貰えば本望じゃ、だが、わしは死ねぬ。そちを抱かねば

死にきれぬ」  「まあ、旦那」  求馬からこのような言葉を聞いた事がなかっ

た。抱いて欲しい思い募り躯が熱くなり、眸が濡れぬれと輝きをました。

「朝酒ですぜ」  猪の吉が盆をもってもどってきた。

「あれ師匠、悪い時に戻ったようで」  お蘭の様子を目ざとく感じ猪の吉が

揶揄いの言葉を吐いた。  「そんな事はありませんよ」

「そうですかえ、景気なおしに一杯いきやしょう」

 三人は無言で杯を交わしあった。

 飲み終わり、求馬と猪の吉が厳重に身形を調え、それぞれが長合羽、

道中合羽を羽織った。お蘭も江戸から持参した淡い水色の地に細い縞模様

の小粋な着物に着替え、道行き衣をまとった。

 玄関には七賢の番頭と女中が見送りに集まっていた。

 三人は厳重な足拵えで表通りへと向かった。  「道中、お気をつけて」

「お世話になりました」  お蘭が、それぞれに礼を述べている。

「番頭さん、この先に大きな奇岩があると聴いたが、どの辺りかね」

 猪の吉が、それとなく探りを入れている。

「下教来石宿から一里ほど西に向かいますと否応でも目につきます」

「そうかえ、色々と世話になったね」

 三人は早朝の台ケ原宿の旅籠町を通りぬけ、甲州道中へと足を踏み出した。

「旦那、見てごらんなさいな」

 お蘭が朝靄の立ち籠める街道に佇み、朝日を浴びて聳え立つ駒ケ岳と

八ケ岳の威容を指さした。

「天下の絶景ですな」  猪の吉までが、惚れ惚れと眺めている。

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Last updated  Apr 24, 2008 11:05:00 AM
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